動作解析装置を用いた歩行障害・ADL障害の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200821073A
報告書区分
総括
研究課題名
動作解析装置を用いた歩行障害・ADL障害の解明に関する研究
課題番号
H20-長寿・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
松本 秀男(慶應義塾大学 医学部スポーツ医学総合センター)
研究分担者(所属機関)
  • 名倉 武雄(慶應義塾大学医学部整形外科)
  • 赤居 正美(国立身体障害者リハビリテーションセンター病院)
  • 中澤 公孝(国立身体障害者リハビリテーションセンター病院)
  • 大森 豪(新潟大学超越研究機構整形外科)
  • 菅野 伸彦(大阪大学大学院医学系研究科運動器医工学治療学)
  • 津村 弘(大分大学医学部整形外科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
変形性関節症は高齢者が要支援となる疾患の第1位を占め、高齢化社会を迎える日本の医療においてその適切な診断・治療に対するニーズは大きい。本研究では変形性膝関節症を対象に、動作計測を行い日常生活動作における力学的負荷と臨床症状の関連を検証し、疾患の病態を反映する新しい評価指標を提唱することを目的とした。
研究方法
本研究班の各組織においてすでに設置されている3次元動作解析装置を用いて、60歳以上の変形性関節症患者を対象に計測を行う。計測動作については、歩行、階段昇降、イスおよび床からの立ち上がり動作等とした。各動作時の下肢関節の屈曲角度変化・内外反角度変化、膝関節にかかる力学的負荷を算出した。変形性膝関節症の臨床評価は、日本整形外科学会・変形性関節症委員会による調査票を用いた。動作解析データの各パラメータと身体的特徴・臨床症状・X線による重症度の関連を多元的に統計解析した。
結果と考察
5施設合計274例についてデータ解析を行った。動作解析データと臨床データの相関を認めたものは、歩行時の膝内反モーメントと下肢荷重軸(FTA)、歩行時膝屈曲角度と臨床スコア(HSS)および関節可動域(ROM)、立ち上がり可能である膝屈曲角度が関節可動域(ROM)および臨床スコアであった。また、変形性膝関節症患者と症状を有さない健常者の歩行解析データの比較では患者で膝関節の内外反変形に伴う歩行中の膝内反モーメントの増減が観察された。膝関節微細運動の解析では、初期の変形性膝関節症患者の歩行において、立脚初期の生理的な回旋運動の阻害および急激な内外転(側方動揺性)の発生を認めた。1700名を対象とした地方膝健診では、FTAは変形性膝関節症が重症になるほど大きくなり、これに伴い膝の内反動揺性を現す内側スラストも高頻度で認められた。変形性膝関節症に対する介入研究では、患者を対象に12週間の股関節外転筋訓練とセッテイングを指導しその結果、疼痛の改善、筋発火量の増加、重心動揺の軽減を認めた。さらに、統一のプロトコールにより各施設において動作解析計測を継続しており、114例について計測が終了した。
結論
変形性膝関節症の歩行時内側スラストと膝内反モーメントはX線重症度および臨床症状と相関が高く、わが国の患者においても変形性膝関節症の病態を最も反映する臨床的指標となると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-22
更新日
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