アルツハイマー病の危険因子の解明と予防に関する大規模ゲノム疫学研究

文献情報

文献番号
200821066A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の危険因子の解明と予防に関する大規模ゲノム疫学研究
課題番号
H20-長寿・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
清原 裕(九州大学大学院医学研究院 環境医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 神庭 重信(九州大学大学院医学研究院 精神病態医学分野)
  • 岩城 徹(九州大学大学院医学研究院 神経病理学)
  • 中別府 雄作(九州大学生体防御医学研究所 個体機能制御学部門 脳機能制御学分野)
  • 久保 充明(独立行政法人理化学研究所 横浜研究所 )
  • 城田 知子(中村学園大学)
  • 熊谷 秋三(九州大学健康科学センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
55,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
福岡県久山町で進行中の心血管病の疫学調査(久山町研究)において、認知症の有病率・発症率の時代的変化を検討し、ゲノム疫学研究の手法により遺伝的要因を含めアルツハイマー病(AD)の危険因子・防御因子を明らかにする。さらに、食事・運動の面から介入試験を行い、その予防手段の確立を図る。
研究方法
1) 久山町で1985年?2005年に行われた4回の認知症の高齢者有病率調査をもとに、認知症の病型別有病率の時代的変化を検証した。2)1985年の認知症調査の受診者を17年間追跡し、追跡期間中に発症した認知症例について、病型別認知症の発症率と生命予後を検討した。3)この調査の受診者のうちの連続剖検例を対象に、耐糖能異常とADの病理学的変化との関連について調べた。4)ADの強力な遺伝的危険因子と考えられるAPOE遺伝子上の2つのSNPについて判定法を検討した。5)久山町の剖検脳を用いたマイクロアレイ解析に適したRNAサンプルを得る方法を検討した。6) 認知機能のバイオマーカーとなる可能性がある脳由来神経栄養因子(BDNF)と身体活動との関連性を調べた。7)2002年と2007年の久山町の健診で行った栄養・食事調査の成績から、AD発症に関わる食事性因子を検討した。
結果と考察
1)ADの有病率は時代とともに有意に増加し、減少傾向にあった脳血管性認知症(VD)の有病率も2000年代に増加傾向に転じた。2)追跡調査の成績では、ADの発症率が最も高く、次いでVD、混合型認知症、レビー小体型認知症、その他の認知症の発症率の順であった。認知症例の生存率は非認知症対照例に比べ有意に低かった。3)久山町の連続剖検の病理学的検討では、耐糖能異常が老人斑の形成に関与している可能性が明らかとなった。4)APOE遺伝子多型を判定する上で有用な2つのSNPの判定法を開発した。過去の久山町剖検例に応用可能である。5)久山町の剖検脳からマイクロアレイ解析に適したRNAサンプルを調整する方法と保存法を確立した。6)労困憊および中等度の運動負荷で血中BDNF濃度は有意に増加したが、運動終了後は減少した。7)AD発症に関わる食事性因子を抽出し、今後の解析の基盤を作った。
結論
久山町では、ADおよびVDの有病率が近年増加傾向にある。認知症は病型にかかわらず生命予後が悪かった。耐糖能異常がADの成因に関わることが示唆された。ADの関連遺伝子の探索および食事・運動の面からの介入試験の準備を行った。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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