霊長類胚性幹細胞をもちいた認知症、アルツハイマー病に対する新規治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200821050A
報告書区分
総括
研究課題名
霊長類胚性幹細胞をもちいた認知症、アルツハイマー病に対する新規治療法開発に関する研究
課題番号
H19-長寿・一般-021
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 登(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 松井 宏晃(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 長田 賢一(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 黒川 真奈絵(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 千葉 俊明(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急激な高齢化に伴い認知症が社会問題となっている。認知症に対する治療方法は対症
療法のみであり、画期的な治療法の開発が待たれている。
アルツハイマー病は認知症の中核的疾患で、その分子病態に着目しβアミロイド
とTau蛋白の病態形成における役割の解析と神経細胞死の誘導の直接的メカニズムを
解明して新規治療法の開発を目指す必要がある。我々は集学的な手法を用いて病態形
成の一つ一つのステップを改善して、さらに胚性幹(ES)細胞から分化誘導した神経細
胞移植を行うことで新機軸の集学的な治療法を検討する。
研究方法
ヒト異常Tauを発現するトランスジェニックマウスを用いた。
ES細胞からレチノイン酸やPA6細胞との共培養により分化誘導した神経幹細胞を認知
症モデルマウスに移植した。
移植部位は海馬に近い線状体内とした。
移植前後で免疫組織染色を行った。
結果と考察
ヒトTauトランスジェニックマウスでは海馬と大脳皮質にリン酸化Tauの沈着を認め、
カスペース3の活性化を介して神経細胞アポトーシスを認めた。神経幹細胞をTau ト
ランスジェニックマウスに移植した。移植後に神経幹細胞はマウス脳内に生着した。
今後の認知機能に及ぼす神経幹細胞移植の効果を長期に渡り観察する必要がある。
βアミロイドの産生抑制に働くαセクレターゼの活性を亢進させるセロトニン受容体
の活性化因子を同定した。Tauのリン酸化を抑制するAktのリン酸化を抗うつ薬がもた
らす事を見出した。
結論
ヒトTauトランスジェニックマウスでは海馬と大脳皮質にリン酸化Tauの沈着がカスパー
ゼ3の活性化を引き起こし神経細胞アポトーシスを認めた。線状体内にES細胞由来神
経幹細胞を移植すると脳内での神経細胞の生着を確認した。皮質への遊走は認めたが、
海馬内への神経細胞の移動は殆ど見られなかった。今後は海馬へ神経細胞を移動させ
る必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-22
更新日
-