唾液を指標とした口腔機能向上プログラム作成

文献情報

文献番号
200821038A
報告書区分
総括
研究課題名
唾液を指標とした口腔機能向上プログラム作成
課題番号
H19-長寿・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
柿木 保明(公立大学法人九州歯科大学 生体機能制御学講座・摂食機能リハビリテーション学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 西原 達次(公立大学法人九州歯科大学 健康増進学講座・感染分子生物学分野 )
  • 小関 健由(東北大学大学院歯学研究科・口腔保健発育学予防歯科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,110,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、口腔機能を唾液を応用して客観的に数値化することで、効果的な口腔ケアやリハビリの方法、回数、頻度、介助度などを選択できる口腔機能向上のプログラムを確立し、要介護高齢者や特定高齢者等の口腔環境と口腔機能を改善してQOLを向上させることを目的として3年計画の2年目として実施した。
研究方法
口腔機能と唾液との関連性については13課題について研究を進めた。すなわち、一般高齢者1237名に対して食機能に関する調査を行った。また、RSST検査の保湿の影響度、唾液腺体積と口腔乾燥、口腔乾燥の症状、口腔機能向上プログラム実践の効果、剥離上皮膜の細菌学的解析、高齢者の口腔細菌数、食機能と口腔乾燥度の関連について検討を行った。口腔細菌学的研究では、従来の培養法や遺伝子検出法とは異なる口腔細菌数の測定方法の開発を試みた。唾液と口腔状態の関連性に関する研究では、改良刺激唾液採取法を開発し、一般健康診査・歯科健康診査の結果と唾液流出量の関連を検索した。
結果と考察
一般高齢者の15.6%に咀嚼障害、12.1%に嚥下障害の疑い5.1%では嚥下障害の可能性が認められ、約30%に口腔乾燥の自覚が認められた。RSSTは保湿前の記録が誤嚥性肺炎のリスク評価の観点から重要と思われた。唾液中ヒアルロン酸口腔乾燥患者で多かった。原因不明の口腔乾燥患者の唾液腺体積は小さく、高齢者では口唇の乾燥や目の乾燥感も多く、言語障害や嚥下障害の可能性も高頻度であった。口腔機能向上プログラムは口唇機能や舌の機能を有意に改善した。剥離上皮膜で肺炎起炎菌が62.9%にみられ、要介護高齢者では口腔乾燥度の高い者ほど舌上の細菌数が少なかった。また、口腔乾燥感と舌上および舌下湿潤度が高い相関があった。口腔乾燥の臨床診断基準(柿木)と藤島の摂食レベルとの関連では、丸呑みに近い食事内容の高齢者では口腔乾燥度が高いことが認められた。                                    
口腔細菌学的な研究では、梗塞巣の形成をin vitroの実験系で示すことに成功し、微小流路チップを用いた歯周病細菌由来LPSで活性化したマクロファージの付着性亢進を実証した. 
唾液と口腔状態の関連性に関する研究では、安静時唾液分泌量、及び、刺激唾液分泌量の両方に、年齢、性別、身長、口腔内の健全歯数、現在歯数、血圧であった。
結論
唾液および口腔乾燥における多くの指標が口腔機能や嚥下機能と関連することが認められ、これらの結果からリスク判定基準を作成することで、口腔機能向上プログラム作成に応用できると思われた。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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