高齢者の生活機能低下に対する作業療法の効果に関する研究

文献情報

文献番号
200821034A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の生活機能低下に対する作業療法の効果に関する研究
課題番号
H19-長寿・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
能登 真一(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
研究分担者(所属機関)
  • 上村 隆元(杏林大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,490,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の最大かつ最終的な目的はこれまでエビデンスとして示しきれていない作業療法の効果,とくに高齢者の生活機能低下への介入効果を明らかにすることである.研究2年目からはランダム化比較試験を用いた多施設間での介入研究を実施することで,高齢者に対する作業療法の効果を明らかにする.とくにここではICFを活用したアプローチ分類をすることで,この高齢者のリハビリテーション領域での作業療法の独自性(理学療法との違い)を示し,今後の高齢福祉分野の厚生労働行政に貢献する.
研究方法
研究デザインは多施設で実施するシングルブラインドのランダム化比較試験とし,ADLや環境因子といった生活機能全般に介入する作業療法アプローチと身体機能のみに介入するアプローチ法(プラセボ)の効果を比較検討した.さらにこの際,それぞれの介入方法を交互に提供するクロスオーバー法を用い対象者に不利益が生じないようにも配慮した.アウトカム指標は標準化されているFIMでADLを,健康関連QOLの一つである効用値をHUI3とEQ-5Dで,さらにDementia QOL等で測定した.作業療法の介入方法は平成19年度の調査を基にADLや環境調整といった作業療法独自のアプローチを実施した.
結果と考察
平成21年度半ばまでの介入研究期間の途中ではありながら88名の途中経過データが集まった.作業療法介入群ではFIMで93.1から95.7への向上,HUI3では0.19から0.25,EQ-5Dでは0.63から0.67へとそれぞれ有意な改善を認めた.特に健康関連QOLの中では効用値を表すHUI3とEQ-5Dに加えて,疾病特異尺度であるDmentia QOLでも肯定的感情に2.9から3.1と美的感覚に2.8から3.1への改善が認められた.主観・客観問わずにQOLの向上が認められ,作業療法の効果が機能やADLレベルに加えて質的な向上をもたらしていることが明らかとなった.これらの結果から,作業療法の個別介入では理学療法的な介入よりも要介護高齢者のQOL向上に効果があると示唆された.
結論
要介護高齢者に対するリハビリテーションは,心身機能面への介入ばかりではなく,活動や参加,さらに環境因子への介入が必要であり,とくにそれらは健康関連QOLの向上に役立つと考えられた.

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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