ヒトES細胞を用いたin vitro血管神経細胞分化システムによる「虚血脳再生ホルモン」の探索とホルモン補償による新規認知症治療法の開発

文献情報

文献番号
200821017A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトES細胞を用いたin vitro血管神経細胞分化システムによる「虚血脳再生ホルモン」の探索とホルモン補償による新規認知症治療法の開発
課題番号
H18-長寿・一般-027
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 裕(慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 良輔(京都大学大学院 医学研究科 臨床神経学)
  • 吉政 康直(国立循環器病センター病院内科 動脈硬化・代謝・臨床栄養部門)
  • 山原 研一(国立循環器病センター研究所 再生医療部)
  • 近藤 靖(田辺製薬株式会社 先端医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
13,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 認知症は極めて深刻な医学的問題であるが、これまで根治的治療法は開発されておらず、最先端医学の結集による新規治療法の開発に期待が寄せられている。本研究では、内分泌学, 神経内科学, 再生医学の知識を集学的に結集し、ホルモン補償による認知症の新規治療法開発ならびに、ヒトES細胞から神経, 血管細胞への分化誘導能を指標とした、新規虚血脳再生ホルモンの探索を目指した。
研究方法
 本年度、研究代表者伊藤はミトコンドリア機能不全が認知症発症に関与する可能性を検討した。分担研究者高橋はAMを用いた皮質下血管性認知症の治療法開発に関する研究を行った。分担研究者吉政は血管内皮前駆細胞の病態生理学的意義について検討した。分担研究者山原はAMの内皮細胞における作用を詳細に検討した。分担研究者近藤はES細胞から神経系各細胞への分化誘導法の開発に関する研究を行った。
結果と考察
 研究代表者伊藤は、血管ホルモンがミトコンドリア制御分子であるPGC1alpha, ATP synthase, UCP3, SOD2の発現調節を介して、ミトコンドリアを量的機能的に制御し、脂質燃焼などの細胞代謝を変化させることを見出した。このことが認知症発症進展に関与する可能性も考えられた。分担研究者高橋はAM過剰発現トランスジェニックマウスに、血管性認知症のモデルとなるコイルを用いた両側頸動脈狭窄術(BCAS)を施行すると、大脳局所で早期の血流回復とグリオーシスの有意な抑制を認めることを見出した。このことより、慢性脳低灌流によって生ずる白質病変に対してAMが保護再生効果を発揮する可能性が示された。分担研究者吉政は末梢血中CD34陽性血管前駆細胞の減少が慢性腎臓病増悪に関与する可能性を見出した。分担研究者山原はAMがリンパ管内皮細胞において炎症惹起性細胞接着分子発現を抑制することで抗炎症作用を発揮し、リンパ浮腫を軽減することを見出した。分担研究者近藤はヒトES細胞から神経幹細胞の同定ならびに神経幹細胞増殖継代法の開発、さらには神経系各細胞への分化誘導法の開発に成功し、薬剤の薬効ならびに副作用を簡便かつ短時間でスクリーニングに応用可能なヒトES細胞由来神経細胞分化システムを確立した。
結論
 我々が虚血脳再生ホルモンと位置付けたAMが、血管神経再生作用のみならず多彩な作用を発揮して、虚血脳回復に寄与することを見出した。またヒトES細胞から神経細胞への分化システムの開発に成功し、虚血脳再生ホルモンスクリーニングへの応用ならびに、細胞移植による虚血脳再生治療への応用可能性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2009-04-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200821017B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒトES細胞を用いたin vitro血管神経細胞分化システムによる「虚血脳再生ホルモン」の探索とホルモン補償による新規認知症治療法の開発
課題番号
H18-長寿・一般-027
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 裕(慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 良輔(京都大学大学院 医学研究科 臨床神経学)
  • 吉政 康直(国立循環器病センター病院内科 動脈硬化・代謝・臨床栄養部門)
  • 山原 研一(国立循環器病センター研究所 再生医療部)
  • 近藤 靖(田辺製薬株式会社 先端医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 認知症は極めて深刻な医学的問題であるが、これまで根治的治療法は開発されておらず、最先端医学の結集による新規治療法の開発に期待が寄せられている。そこで本研究では、内分泌学, 神経内科学, 再生医学の知識を集学的に結集し、ホルモン補償による新規認知症治療法の開発、ヒトES細胞から血管,神経細胞への分化誘導法の開発およびその血管,神経細胞分化システムにおける分化誘導能を薬効の指標とした新規虚血脳再生ホルモンの探索、血管神経前駆細胞の心血管系疾患発症ならびに虚血脳再生への関与の解明を目指した研究を推進した。
研究方法
 研究代表者伊藤は、虚血脳再生ホルモンの認知症患者への治療応用に関する研究を行い、AMが虚血脳を再生する機構を多面的に検討した。
 分担研究者高橋は、ヒト血管性認知症を模倣する新規脳虚血モデルの開発を試み、虚血脳再生ホルモン投与による、神経機能, 認知機能改善効果の検証を行った。
 分担研究者吉政は、メタボリックシンドローム患者における認知機能障害の解析と血中血管神経前駆細胞動態の解析を行った。
 分担研究者山原は、血管ホルモン投与による虚血性疾患治療法の開発と血管前駆細胞の治療応用に関する検討を行った。
 分担研究者近藤は、ヒトES細胞由来神経前駆細胞の同定ならびに神経系各系統への誘導法の開発とin vitro血管神経細胞分化誘導系を用いた新規虚血脳再生薬剤の探索、さらには得られた神経前駆細胞のサル大脳局所への移植法の開発を行った。
結果と考察
 我々が虚血脳再生作用を見出した血管ホルモンであるアドレノメデュリンが、血管再生ならびに神経再生を促進する多彩な機構が明らかとなり、また、ヒト血管性認知症を模倣する新規マウスモデルにおいても、アドレノメデュリンが有効であることが示された。ヒトES細胞由来血管前駆細胞の同定ならびにヒトES細胞から神経系各系統への分化誘導法の開発に成功するとともに、神経前駆細胞移植による虚血脳治療の可能性を明らかにした。また、血管前駆細胞の減少が心血管系疾患発症と相関することを見出した。
結論
 AMが虚血脳再生を促進する多彩な機構を明らかにした。ヒト血管性認知症を模倣する新規マウス認知症モデルBCASを開発し、中大脳動脈閉塞による急性梗塞巣のみならず、大脳慢性低還流による白質病変においてもAMが神経保護作用を発揮することを見出した。ヒトES細胞から神経系各系統への分化誘導法の開発に成功するとともに、血管前駆細胞ないしは神経前駆細胞移植による虚血脳治療の可能性を明らかにした。また、血管前駆細胞の減少が心血管系疾患発症と相関することを見出した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200821017C