効果的な介護予防ケアマネジメント技法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200821009A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な介護予防ケアマネジメント技法の開発に関する研究
課題番号
H18-長寿・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 出江紳一(東北大学 大学院医工学研究科)
  • 小坂 健(東北大学 大学院歯学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
14,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
より効果的で効率的な介護予防サービスを開発するため、介護予防ケアマネジメントの手法と口腔機能向上のあり方について検討した。
研究方法
1) 介護予防サービス利用者における予後予測システムの開発:東北地方の9ヵ所の地域包括支援センターで介護予防ケアプランの作成を受けた者1,117人を対象に、要介護認定度・心身機能・生活機能・介護予防サービスの利用状況などを定期的に調査した。介護予防サービス利用開始時の情報と1年後のアウトカム指標(要介護認定等の状況など)の維持・改善との関連を分析した。
2) 介護予防ケアマネジメントに対するコーチング技法の応用:横浜市の地域包括支援センター保健師との協議を通じて、介護予防ケアマネジメントにコーチングスキルをどう活用するかを検討し、実例やロールプレイ例をもとに会話事例を集積した。
3) 口腔機能向上プログラムと医療との連携:栄養改善と口腔機能の向上の2つを組み合わせた介護予防事業(調理実習と会食、歯磨き・歯ぐきマッサージ・舌の清掃、歯科衛生士の個別指導など)を宮城県岩沼市で実施し、その効果を評価した。
4) 倫理上の配慮:上記の研究全てが所属施設の倫理委員会で承認されている。

結果と考察
1) 介護予防サービス利用者における予後予測システムの開発:脳血管疾患や骨折・転倒の既往がないこと、認知機能レベルが高いこと、認知的活動の頻度が高いこと、ふだんの生活で役割があること、独居、ソーシャルサポートが多いことが、アウトカム指標の維持・改善と有意に関連した。
2) 介護予防ケアマネジメントに対するコーチング技法の応用:信頼関係の構築、目標の共有、ギャップの明確化と目標に向かう行動決定、行動継続の支援、他職種・事業所との連携の各ステップで使われるべきコーチング技法を検討した。30事例の検討をもとに、保健師と利用者本人・家族との会話を再現する形の研修テキストを作成している。
3) 口腔機能向上プログラムと医療との連携:栄養改善と口腔機能の向上を組み合わせた介護予防事業では、参加者の満足度も高く、歯科口腔状態や栄養状態も改善するなど、有益であった。
結論
介護予防サービスの効果が期待できる利用者の特性を絞り込めることが分かった。コーチング技法を介護予防ケアマネジメントに応用することには意義がある。栄養改善と口腔機能の向上を組み合わせたサービスは有益である。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200821009B
報告書区分
総合
研究課題名
効果的な介護予防ケアマネジメント技法の開発に関する研究
課題番号
H18-長寿・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 出江 紳一(東北大学 大学院医工学研究科)
  • 小坂 健(東北大学 大学院歯学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護予防サービスの効果をさらに上げるための技法を開発することを目的に、介護予防ケアマネジメントと口腔機能向上のあり方について検討した。
研究方法
1) 介護予防サービス利用者における予後予測システムの開発:東北地方の9ヵ所の地域包括支援センターで介護予防ケアプランの作成を受けた者1,117人を対象に、要介護認定度・心身機能・生活機能・介護予防サービスの利用状況などを定期的に調査した。介護予防サービス利用開始時の情報と1年後のアウトカム指標(要介護認定等の状況など)の維持・改善との関連を分析した。
2) 介護予防ケアマネジメントに対するコーチング技法の応用:横浜市の地域包括支援センターの全保健師112名を対象にコーチング研修を実施し、その効果を評価した。介護予防ケアマネジメントの事例を集積し、コーチングスキルの活用策を検討した。
3) 口腔機能向上プログラムと医療との連携:地域高齢者に歯科健診と質問紙調査を実施して、基本チェックリストとの相関を検討した。栄養改善と口腔機能の向上の2つを組み合わせた介護予防事業を実施し、その効果を評価した。
4) 倫理上の配慮:上記の研究全てが所属施設の倫理委員会で承認されている。
結果と考察
1) 介護予防サービス利用者における予後予測システムの開発:脳血管疾患や骨折・転倒の既往がないこと、認知機能レベルが高いこと、認知的活動の頻度が高いこと、ふだんの生活で役割があること、独居、ソーシャルサポートが多いことが、アウトカム指標の維持・改善と有意に関連した。
2) 介護予防ケアマネジメントに対するコーチング技法の応用:コーチング研修を受けた保健師でコミュニケーション自己評価が改善した。30事例を集積して、コーチングスキルを活用した介護予防ケアマネジメントを検討した。これをもとに研修テキストを作成している。
3) 口腔機能向上プログラムと医療との連携:チェックリストと口腔内審査の所見は必ずしも相関しなかった。栄養改善と口腔機能の向上を組み合わせた介護予防事業では、参加者の満足度も高く、歯科口腔状態や栄養状態も改善した。
結論
介護予防サービスの効果が期待できる利用者の特性は絞り込める。コーチング技法の導入で、介護予防ケアマネジメントはより効果的かつ円滑になる。栄養改善と口腔機能の向上を組み合わせたサービスは有益である。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200821009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
要介護発生のリスク因子、介護予防サービスの効果評価、介護予防コーチング、歯科口腔と介護予防に関する知見などについて、14編の論文を発表した。論文は、JAMAやInternational Journal of Epidemiologyなどの一流誌に掲載され、国内外で大きな注目を集めている。介護予防サービス利用者における予後予測システムの開発に関する研究では、わが国随一の大規模データセットが構築され、今後さらなる学術的発展性が期待されている。
臨床的観点からの成果
介護予防サービス利用者における予後予測システムの開発では、個人特性に応じた介護予防プログラム(訓練の種類など)選択のエビデンスを示した。介護予防ケアマネジメントに対するコーチング技法の応用では、介護予防ケアマネジメントをより円滑に実施する方法を示した。口腔機能向上プログラムと医療との連携では、新しい種類の介護予防サービスのあり方を示した。これらを現場に普及することにより、一層の介護予防効果が期待される。
ガイドライン等の開発
介護予防ケアマネジメントに対するコーチング技法の応用に関する検討結果をもとに、研修テキストの出版準備を進めている。刊行後は、そのテキストをもとに研修会を受託実施することを計画している。栄養改善と口腔機能の向上の2つを組み合わせた介護予防事業では、各方面からの問い合わせも多いので、事業運営に関するマニュアルを作成した。
その他行政的観点からの成果
介護予防サービス利用者における予後予測システムの開発に関する準備を行っていた段階で、厚生労働省「介護予防継続的評価分析等検討会」が発足した。同検討会は、本研究で開発された調査票を使って、全国の地域包括支援センター83ヵ所で約1万人を対象に調査を実施した。これにより、介護予防サービスには効果(施策導入前に比べて、要介護認定度の悪化率が減少)と費用対効果(施策導入前に比べて、介護保険給付額が減少)が実証された。その結果は、平成21年3月26日の同検討会で報告された。
その他のインパクト
本研究事業の一環として栄養改善と口腔機能の向上の2つを組み合わせた介護予防事業を宮城県岩沼市で実施した際、NHKのニュース番組で報道された。これを契機に同プログラムは多方面から注目を集め、自治体主催の研修会などで紹介を依頼された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野HP (http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kuriyama S, Shimazu T, Tsuji I, et al.
Green tea consumption and mortality due to cardiovascular disease, cancer, and all causes in Japan; the Ohsaki Study.
The Journal of the American Medical Association , 296 , 1255-1265  (2006)
原著論文2
Shimazu T, Kuriyama S, Tsuji I, et al.
Dietary patterns and cardiovascular disease mortality in Japan: prospective cohort study.
International Journal of Epidemiology , 36 (3) , 600-609  (2007)
原著論文3
Kikuchi A, Niu K, Tsuji I, et al.
Association between physical activity and urinary incontinence in a community-based elderly population aged 70 years and over.
European Urology , 52 (3) , 868-874  (2007)
原著論文4
Sone T, Nakaya N, Tsuji I, et al.
Sense of Life Worth Living (ikigai) and Mortality in Japan: The Ohsaki Study (Sense of Life WorthLiving [ikigai] and Mortality).
Psychosomatic Medicine , 70 , 709-715  (2008)
原著論文5
Funada S, Shimazu T, Tsuji I, et al.
Body mass index nd cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki Study.
Preventive Medicine , 47 (1) , 709-715  (2008)
原著論文6
東口みづか,中谷直樹,辻 一郎, 他.
低栄養と介護保険認定・死亡リスクに関するコホート研究:鶴ヶ谷プロジェクト.
日本公衆衛生雑誌 , 55 , 433-439  (2008)
原著論文7
Izumi S, et al.
Effect of coaching on psychological adjustment in patients with spinocerebellar degeneration: A pilot study.
Clinical Rehabilitation , 21 , 987-996  (2007)
原著論文8
Hayashi A, Izumi S, et al.
Analysis of Subjective Evaluations of the Functions of Tele-Coaching Intervention in Patients with Spinocerebellar Degeneration.
NeuroRehabilitation , 23 (2) , 159-169  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
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