歯周組織再生を基盤とした咀嚼機能改善技術の開発

文献情報

文献番号
200821002A
報告書区分
総括
研究課題名
歯周組織再生を基盤とした咀嚼機能改善技術の開発
課題番号
H18-長寿・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 正寛(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松下健二(国立長寿医療センター研究所)
  • 村上伸也(大阪大学 大学院歯学研究科)
  • 梅澤明弘(国立成育医療センター研究所)
  • 清野 透(国立がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,710,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化社会を迎えた現代社会において、要介護者の増加が深刻な社会問題になりつつある。このような問題に対処するため、介護予防の推進が重要視されている。この介護予防の3本柱として運動器の機能向上、栄養改善、口腔ケアが挙げられており、高齢者の口腔機能の維持が鍵になっていることが伺える。しかし高齢者の口腔機能は、歯周病により著しく低下する。そこで本研究の目的は、生体外増幅したヒト顎骨由来間葉系細胞と、細胞移植製剤の安全性を確立し、広範な骨欠損を伴う歯周病患者に対する新たな細胞治療法を開発することである。
研究方法
インフォームドコンセントを得て、さらに本研究計画の主旨に同意して頂いた患者から提供された、骨芽細胞(Human Alveolar bone derived Osteoblast:HAOB)の骨芽細胞のマーカーをDNAマイクロアレイで解析し、HAOB特異的に発現している遺伝子マーカーの同定を試みた。次にHAOBの生体内における骨再生能力をモニターするため、頭蓋冠欠損モデルを用いてHAOB移植実験を行った。
結果と考察
中高齢者の骨より採取されたHAOBのマーカー分子を同定する目的に、DNAマイクロアレイ法で行った。その結果、STMN2, NEBLおよびMGPがHAOBに高発現してことを見出した。これらの分子は骨芽細胞のマーカー遺伝子であるBSP, OCN, RUNX2, OSXと比較して、高発現していることが確認され、さらに骨肉腫細胞、線維芽細胞ではその発現が確認されないことから、同遺伝子がHAOBのマーカーになることが示された。これらの結果より、同遺伝子群の発現量が、HAOBの骨再生能力判定基準の指標になる可能性が強く示唆された。次に、HAOBの骨再生能力を判定する目的で、HAOBを骨欠損モデルに移植実験を行った。その結果、同部位においてHAOBの骨再生を誘導できることが判明した。
結論
細胞移植による新たな歯周病治療技術は、高齢者の口腔機能に重要な項目である。従って今後増加する要介護の後期高齢数に歯止めをかけ、介護予防を推進するために、必須の予防医療技術になる。ヒト顎骨より骨芽細胞を採取して、歯周病により影響を受けた部位へ移植する系を確立することは、骨再生医療を必要とする移植医療の新たな分野の獲得につながりことが考えられる。以上の理由により、再生医療による咀嚼機能回復は、高齢者の健康維持に貢献することが大きく期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200821002B
報告書区分
総合
研究課題名
歯周組織再生を基盤とした咀嚼機能改善技術の開発
課題番号
H18-長寿・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 正寛(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松下 健二(国立長寿医療センター研究所)
  • 村上 伸也(大阪大学 大学院歯学研究科)
  • 梅澤 明弘(国立成育医療センター研究所)
  • 清野 透(国立がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯周病による歯の喪失は加齢と共に進行し、特に75歳以上の後期高齢者では15本以上の歯を失っていることが「平成17年度歯科疾患実態調査報告」厚生生労働省医政局歯科保健課)より報告されている。また80歳以上の高齢者においては1人平均現在歯数が4.6歯となっており、さらには約半数の人がすべての歯を喪失している。したがって歯周病への対処ならびに咀嚼機能の維持、回復のための新しい治療技術の開発は、健全な咀嚼能力を維持し、健やかで楽しい生活を過ごそうという介護予防の一層の推進を図るものである。そこで本研究の目的は、広範な骨欠損を伴う高齢者の歯周病患者に対して、新たな細胞治療法を開発することである。
研究方法
高齢者に有効な細胞製剤を開発するため、50歳から66歳までインフォームドコンセントを得て、さらに本研究計画の主旨に同意して頂いた患者から提供された、骨片から骨芽細胞(Human Alveolar bone derived Osteoblast:HAOB)の開発を試みた。得られたHAOBの骨形成能力を解析すると共に染色体診断にて同細胞製剤の安全性を調べた。またHAOBマーカー分子を同定し、同細胞採取の判定基準を確立した。さらにHAOB移植治療の臨床プロトコールを作成するため、イヌによる動物モデルで自家移植実験を行い、歯周組織再生能力を判定した。
結果と考察
独自に開発したHAOB細胞培養システムを用いて50歳以上のヒト顎骨より骨芽細胞を採取することに成功した。同細胞はrhBMP-2処理で骨芽細胞へ分化誘導可能であるばかりでなく、生体内への移植実験により高い骨形成能力を有する細胞集団が含まれていることが確認された。また同細胞製剤の染色体は正常であり、安全性が確認され、またSTMN2,MGPおよびNEBLの高発現が同細胞製剤採取の指標になるうる事が判明した。さらに自家移植モデル実験にて、本技術で採取された骨芽細胞製剤は明らかに骨再生能力を有していることが判明した。本研究成果より、HAOBは高齢者の歯周病治療に有効な細胞製剤であることが証明された。今後本製剤を用いて臨床応用するためには、患者由来の血清を用いて同様の効果が有るかを調べる必要性が考えられた。
結論
 本研究成果より、HAOB生体外増幅ならびに臨床プロトコールの確立に成功した。今後HAOBを、歯周病治療に利用する新たな戦略を現実化するステップとして、米食品医薬品局(FDA)基準を指標とする細胞提供システムの確立、ならびにその安全性と倫理性を確立したうえで、「歯周組織再生を基盤とした咀嚼機能改善技術の開発」を目指すことが肝要である。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200821002C