高齢者呼吸器疾患の発症・制御に関与する遺伝子・蛋白系の解明と治療応用

文献情報

文献番号
200821001A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者呼吸器疾患の発症・制御に関与する遺伝子・蛋白系の解明と治療応用
課題番号
H18-長寿・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
長瀬 隆英(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 萩原 弘一(埼玉医科大学)
  • 栗原 裕基(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 石井 聡(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
11,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
21世紀を迎えた現在、呼吸器領域疾患の社会的重要性は急増しつつある。WHOによれば、2020年の死亡要因の第3位がCOPDと予想され、呼吸器疾患による死亡者数の急増が予見されている。本邦においても、COPDを筆頭とする呼吸器領域疾患への対応は医療行政上、まさに急務である。 COPDは高齢者での罹患率が高く、急速に高齢化社会が進む今日,病態の究明と治療法の開発は焦眉の課題である。当研究事業は、20年度が最終年次であり、以下の研究目標を到達することで,高齢者の主要な呼吸器疾患であるCOPD発症に関連する遺伝子,蛋白質の機能解明および治療法の開発を目指す。
研究方法
1)臨床的研究:COPDは喫煙を主な原因としているが,重喫煙者でも発症しない例,軽喫煙者でも重篤な症状を示す例が認められ,遺伝的素因が発症に大きく関わっているとされる。本年度、本研究では、数十例程度のサンプルから効率的に感受性遺伝子を同定することを可能とする新手法の確立を目指した。2)基礎的研究:新規転写コアクチベーターTAZの遺伝子改変マウスを作成し、各種解析を行うことで,COPDをはじめとする高齢者肺疾患における上記遺伝子の病態における関与の解明を目指した。
結果と考察
1)臨床的研究:遺伝子多型解析に用いるホモ接合指紋法およびホモ接合ハプロタイプ法を確立した(国内・国際特許申請中)。今後、COPDを含む各種疾患において、少数例のサンプルで遺伝子多型解析が可能と考えられる。2)基礎的研究: 新規転写コアクチベーターTAZノックアウトマウスが、新規COPD動物モデルとなりうる可能性が提示された。
結論
従来の方法では,COPDをはじめとする高齢者疾患の分子生物学的解析は困難であったが、画期的な遺伝子解析手法の応用など最新手法の開発・応用などにより,早期に分子標的薬のドラッグデザインに反映されることが期待できる。社会的重要性の高い高齢者炎症性肺疾患に対する治療薬開発は医療福祉・経済的にも多大な貢献をなすものであり、厚生行政に寄与することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-03-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200821001B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者呼吸器疾患の発症・制御に関与する遺伝子・蛋白系の解明と治療応用
課題番号
H18-長寿・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
長瀬 隆英(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 萩原 弘一(埼玉医科大学)
  • 栗原 裕基(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 石井 聡(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
21世紀を迎えた現在、呼吸器領域疾患の社会的重要性は急増しつつある。WHOによれば、2020年の死亡要因の第3位がCOPDと予想され、呼吸器疾患による死亡者数の急増が予見されている。本邦においても、COPDを筆頭とする呼吸器領域疾患への対応は医療行政上、まさに急務である。 COPDは高齢者での罹患率が高く、急速に高齢化社会が進む今日,病態の究明と治療法の開発は焦眉の課題である。当研究事業は、高齢者の主要な呼吸器疾患であるCOPD発症に関連する遺伝子,蛋白質の機能解明および治療法の開発を目指した。
研究方法
1)臨床的研究:COPDは喫煙を主な原因としているが,重喫煙者でも発症しない例,軽喫煙者でも重篤な症状を示す例が認められ,遺伝的素因が発症に大きく関わっているとされる。本研究では、数十例程度のサンプルから効率的に感受性遺伝子を同定することを可能とする新手法の確立を目指した。2)基礎的研究:脂質性メディエ-タ-や新規転写コアクチベーターTAZの遺伝子改変マウスを作成し、各種解析を行うことで,COPDをはじめとする高齢者肺疾患における上記遺伝子の病態における関与を解明する。また、siRNAベクターによる標的分子の発現抑制システムの確立を目指した。
結果と考察
1)臨床的研究:遺伝子多型解析に用いるホモ接合指紋法およびホモ接合ハプロタイプ法を確立した(国内・国際特許申請中)。今後、COPDを含む各種疾患において、少数例のサンプルで遺伝子多型解析が可能と考えられる。2)基礎的研究: 新規転写コアクチベーターTAZノックアウトマウスが、新規COPD動物モデルとなりうる可能性が提示された。さらに、siRNAを応用することにより、マウス線維芽細胞においてTgf-beta-1の発現抑制が可能であった。
従来の方法では,COPDをはじめとする高齢者に発症する疾患の分子生物学的解析は困難であったが、ホモ接合指紋法という画期的な遺伝子解析手法の応用、新規COPD動物モデル作成、誘導性siRNAなど分子生物学上の最新手法の開発・応用などにより,成体での遺伝子,たんぱく質の機能解析手法を確立することで,近い将来,分子標的薬のドラッグデザインに反映されることが期待できる。
結論
本研究の成果はCOPDなど高齢者呼吸器疾患の病態を解明し,治療への端緒を与え,高齢罹患者の生活の質の改善に寄与することが期待される。このことは医学および厚生労働行政に多大の貢献をなすものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-03-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200821001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来の方法では,COPDをはじめとする高齢者に発症する疾患の分子生物学的解析は困難であった。今回、ホモ接合指紋法という画期的な遺伝子解析手法の応用、新規COPD動物モデル作成、誘導性siRNAなど分子生物学上の最新手法の開発・応用などにより,成体での遺伝子,たんぱく質の機能解析手法を確立した。このことにより,近い将来,分子標的薬のドラッグデザインに反映されることが期待できる。
臨床的観点からの成果
WHOによれば、2020年の死亡要因の第3位がCOPD、第4位が肺炎、第5位が肺癌と予想されるなど、呼吸器領域疾患による死亡者数の急増が予見されている。本邦においても、COPDを筆頭とする呼吸器領域疾患への対応は急務である。本研究の成果はCOPDなど高齢者呼吸器疾患の病態を解明し,治療への端緒を与え,高齢罹患者の生活の質の改善に寄与することが期待される。このことは医学および厚生労働行政に多大の貢献をなすものと考えられる。
ガイドライン等の開発
新規転写コアクチベーターTAZの遺伝子改変マウスを作成し、各種解析を行うことで,転写コアクチベーターTAZがCOPDの病態・病因に関与する可能性を明らかにした。この成果は、日本呼吸器学会COPDガイドライン(第3版、2009年度発行予定)に記載される予定である。
その他行政的観点からの成果
高齢化社会が急速に進行する今日、COPDは、高齢者の約7人に一人が罹患しており、肺炎死のハイリスク群でもある。本研究の成果の一部は、日本呼吸器学会COPDガイドライン(第3版、2009年度発行予定)に記載される予定となっている。
その他のインパクト
COPDは「肺の生活習慣病」とも称されながら、現代医療の泣き所となっているのが現状である。本研究の成果の一部は、日本老年医学会など各種学会の教育企画・シンポジウムで取り上げられ、COPDに関する知識の啓蒙・普及に貢献した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
50件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
本研究の成果の一部は、日本呼吸器学会COPDガイドライン(第3版、2009年度発行予定)に記載される予定。
その他成果(普及・啓発活動)
2件
日本老年医学会の教育企画で発表。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Makita R, Uchijima Y, Nishiyama K, et al.
Multiple renal cysts with concentration defects and pulmonary emphysema in mice lacking TAZ.
Am J Physiol Renal Physiol , 294 , 542-553  (2008)
原著論文2
Nakajima T, Jo T, Meguro K, et al.
Effect of dexamethasone on voltage-gated Na+ channel in cultured human bronchial smooth muscle cells.
Life Sc , 82 , 1210-1215  (2008)
原著論文3
Kawakami M, Matsuo Y, Yoshiura K, et al.
Sequential and quantitative analysis of a murine model of elastase-induced emphysema.
Biol Pharm Bull , 31 , 1434-1438  (2008)
原著論文4
Kihara Y, Yanagida K, Masago K, et al.
Platelet-activating factor production in the spinal cord of experimental allergic encephalomyelitis mice via the group IVA cytosolic PLA2-LysoPAFAT axis.
J Immunol , 181 , 5008-5014  (2008)
原著論文5
Kikuchi K, Kohyama T, Yamauchi Y, et al.
C reactive protein modulates human lung fibroblast migration.
Experimental Lung Research , 35 , 48-58  (2009)
原著論文6
Nakajima T, Kubota N, Tsutsumi T, et al.
Eicosapentaenoic acid inhibits voltage-gated sodium channels and invasiveness in prostate cancer cells.
Br J Pharmacol , 156 , 420-431  (2009)
原著論文7
Kobayashi T, Takaku Y, Yokote A, et al.
Interferon-beta augments eosinophil adhesion-inducing activity of endothelial cells.
Eur Respir J , 32 , 1540-1547  (2008)
原著論文8
Koyama N, Zhang J, Huqun, et al.
Identification of IGFBP-6 as an effector of the tumor suppressor activity of SEMA3B.
Oncogene , 27 , 6581-6589  (2008)
原著論文9
Jiang W, Hall SR, Moos MPW, et al.
Endothelial cysteinyl leukotriene 2 receptor (CysLT2R) expression mediates myocardial ischemia-reperfusion injury.
Am J Pathol , 172 , 592-602  (2008)
原著論文10
Hikiji H, Takato T, Shimizu T, et al.
The roles of prostanoids, leukotrienes, and platelet-activating factor in bone metabolism and disease.
Prog Lipid Res , 47 , 107-126  (2008)
原著論文11
Yamaguchi Y, Nagase T, Tomita T, et al.
Beta-defensin overexpression induces progressive muscle degeneration in mice.
Am J Physiol Cell Physiol , 292 , 2141-2149  (2007)
原著論文12
Yamamoto H, Nagase T, Shindo T, et al.
Adrenomedullin insufficiency increases allergen induced airway hyperresponsiveness in mice.
J Appl Physiol , 102 , 2361-2368  (2007)
原著論文13
Aoki-Nagase T, Nagase T, Oh-hashi Y, et al.
Calcitonin gene-related peptide mediates acid-induced lung injury in mice.
Respirology , 12 , 807-813  (2007)
原著論文14
Miyazawa H, Kato M, Awata T, et al.
Homozygosity haplotype allows a genomewide search for the autosomal segments shared among patients.
Am J Hum Genet , 80 , 1090-1102  (2007)
原著論文15
Huqun, Izumi S, Miyazawa H, et al.
Mutations in the SLC34A2 gene are associated with the pulmonary alveolar microlithiasis.
Am J Respir Crit Care Med , 175 , 263-268  (2007)
原著論文16
Shindou H, Hishikawa D, Nakanishi H, et al.
A single enzyme catalyzes both platelet-activating factor production and membrane biogenesis of inflammatory cells. Cloning and characterization of acetyl-CoA:LYSO-PAF acetyltransferase.
J Biol Chem , 282 , 6532-6539  (2007)
原著論文17
Yanagida K, Ishii S, Hamano F, et al.
LPA4/p2y9/GPR23 mediates Rho-dependent morphological changes in a rat neuronal cell line.
J Biol Chem , 282 , 5814-5824  (2007)
原著論文18
Kikuchi I, Kikuchi S, Kobayashi T, et al.
Eosinophil trans-basement membrane migration induced by interleukin-8 and neutrophils.
Am J Respir Cell Mol Biol , 34 , 760-765  (2006)
原著論文19
Sutani A, Nagai Y, Udagawa K, et al.
Gefitinib for non-small-cell lung cancer patients with epidermal growth factor receptor gene mutations screened by peptide nucleic acid-locked nucleic acid PCR clamp.
Br J Cancer , 95 , 1483-1489  (2006)
原著論文20
Doi K, Okamoto K, Negishi K, et al.
Attenuation of folic acid-induced renal inflammatory injury in platelet-activating factor receptor-deficient mice.
Am J Pathol , 168 , 1413-1424  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-