新規治療法が開発された小児希少難病の疫学調査と長期フォローアップ体制の確立

文献情報

文献番号
200818030A
報告書区分
総括
研究課題名
新規治療法が開発された小児希少難病の疫学調査と長期フォローアップ体制の確立
課題番号
H20-臨床研究・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 虎之(国立成育医療センター 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
40,782,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、酵素補充療法が確立されたムコ多糖症、ポンペ病、ファブリー病に関して、迅速診断法の開発、有効性の検討および患者調査を行い、わが国における実情を把握し、適正な高額医療の実施に資する。
研究方法
1)ファブリー病、ポンペ病において、蛍光基質を用いた酵素反応測定系の原理を利用して血液ろ紙検体を使用して酵素活性を測定した。この方法を用いてファブリー病の新生児マス・スクリーニングパイロット研究を行った。2)ポンペ病患者の酵素補充療法の有効性について、ADLをFunctional Independence Measure(機能的自立度評価表)を用いて評価した。3)ムコ多糖症II型の造血幹細胞移植患者についてアンケートを実施し、造血幹細胞移植の有効性についての検討を行った。4)ムコ多糖症IV型の患者全国調査を行った。
結果と考察
1)西日本において現行の新生児マス・スクリーニングのシステムを利用して、ファブリー病の新生児スクリーニングを開始した。ポンペ病の血液ろ紙を使用した酸性α-グルコシダーゼ活性測定では、正常対照群と患者群で診断が可能であった。2)女性ポンペ病症例におけるFIMスコアは投与前後で73点→82点/126点満点へと上昇し、酵素補充療法におけるQOLの向上を示すことができた。3)造血幹細胞移植により肝脾腫、大関節の拘縮、睡眠時無呼吸、低身長などが著明に回復する。心臓の弁膜異常は進行が停止し、僅かながら改善する例が多い。中枢神経症状は病初期に移植を受けた症例ほど中枢神経機能が保持されていたが、言語発達については改善を認めなかった。頭部MRIでは血管周囲のムコ多糖蓄積の減少、水頭症への進行の回避などの効果が認められた。4)全国の病院施設に対してムコ多糖症IV型の患者調査を実施し、確定診断例21例の報告を受けた。漏斗胸、関節弛緩、頸椎亜脱臼、脊椎側弯・後弯、X脚などを高頻度に認め、ADLの低下も顕著であった。
結論
ファブリー病、ポンペ病のスクリーニング法が確立され、ムコ多糖症II型の造血幹細胞移植の有効性が明らかとなった。これより造血幹細胞移植、酵素補充療法の効果を最大限に引き出すには、病初期または発症前からの治療が望ましいことが明らかとなったため、ライソゾ-ム病新生児スクリーニングの開発研究をすすめ、実用化を図るとともに適切な治療選択のためのガイドライン作成が重要である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-