咽頭冷却による選択的脳冷却法の臨床応用を目的とした研究

文献情報

文献番号
200817008A
報告書区分
総括
研究課題名
咽頭冷却による選択的脳冷却法の臨床応用を目的とした研究
課題番号
H19-トランス・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
武田 吉正(岡山大学 医学部・歯学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 潔(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 小林 武治(大研医器株式会社 商品開発研究所)
  • 橋本 裕志(大研医器株式会社 商品開発研究所)
  • 國部 雅誠(大研医器株式会社 商品開発研究所)
  • 森本 直樹(津山中央病院)
  • 萩岡 信吾(津山中央病院)
  • 内藤 宏道(津山中央病院)
  • 佐々木 俊弘(岡山大学医学部歯学部附属病院)
  • 麓 耕二(釧路工業高等専門学校)
  • 伊達 勲(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 安原 隆雄(岡山大学医学部歯学部附属病院)
  • 氏家 良人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 長野 修(岡山大学医学部歯学部附属病院)
  • 片山 浩(岡山大学医学部歯学部附属病院)
  • 松川 昭博(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
37,630,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳低温療法は心停止蘇生後の神経学的予後改善に対する有効性が確認されている唯一の治療法である。咽頭冷却は選択的脳冷却なので分単位で脳の冷却が可能であり、救急外来等の施設で施行可能である。本研究は、咽頭冷却カフ及び冷却水潅流装置を作成し、解剖学液構造がヒトに近似したニホンザルを用いて実証試験を行い、臨床研究や臨床評価を行うことを目的としている。
研究方法
①咽頭冷却カフの改良:スーパーコンピュータによる熱動態解析を行い熱交換効率を改善した咽頭冷却カフを作成した。
②冷却水潅流装置の改良:平成19年度に作成した冷却水潅流装置に制御プログラムを組み込み、潅流液温、潅流圧の自動制御可能な改良型冷却水潅流装置を作成した。
③動物モデルを用いたシステム検証及び咽頭組織検査:ニホンザルを用いた動物実験で咽頭冷却システムを検証し、脳温、直腸温の変化および、24時間後の咽頭粘膜所見を観察した。
④咽頭冷却カフの臨床研究:全身冷却による脳低温療法が予定されている患者を対象に咽頭冷却を施行した。鼓膜温、膀胱温、循環動態、咽頭粘膜所見を観察した。
⑤臨床研究プロトコル作成:研究運営会議を開催し、多施設臨床研究プロトコルを策定した。

結果と考察
①咽頭冷却カフの改良:冷却水がカフ内で乱流を生成する構造とした。
②冷却水潅流装置の改良:改良型咽頭冷却カフより温度とカフ内圧の情報を受け取り、リアルタイムに制御する。
③動物モデルを用いたシステム検証及び咽頭組織検査:脳温は10分以内に2℃低下したが直腸温の低下は軽微であった。咽頭粘膜に低温障害を示唆する所見は観察されなかった
④咽頭冷却カフの臨床研究:循環動態(心拍数、血圧)や全身温に影響を与えることなく鼓膜温を0.7度低下させる事を確認した。咽頭粘膜に対する障害も認めなかった。
⑤臨床研究プロトコル作成:多施設臨床研究プロトコルを策定し、全国26施設による臨床研究グループを設立した。
結論
本咽頭冷却システムは咽頭に低温障害を及ぼすことなく、脳温を選択的に低下させることが可能であると考えられた。臨床研究で心拍数や血圧に変化を認めなかったことは、咽頭冷却が循環系に対し負荷を与えないことを示している。心肺蘇生中、環動態が不安定な場合でも施行可能であることが示唆された。多施設臨床研究で、脳温が早期に選択的に低下することを明らかにする。咽頭冷却の有用性を世界に示し、早期の実用化を目指す。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-