国産新規ウイルスベクターを用いた重症虚血肢に対する 新GCP準拠遺伝子治療臨床研究

文献情報

文献番号
200817001A
報告書区分
総括
研究課題名
国産新規ウイルスベクターを用いた重症虚血肢に対する 新GCP準拠遺伝子治療臨床研究
課題番号
H18-トランス・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
米満 吉和(国立大学法人九州大学大学院医学研究院 消化器・総合外科学・遺伝子治療臨床研究準備室)
研究分担者(所属機関)
  • 中西 洋一(九州大学病院 高度先進医療センター)
  • 伊東 啓行(国立大学法人九州大学大学院医学研究院 消化器・総合外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
54,839,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、全く新しい概念に基づく国産新規ウイルスベクター(組換えセンダイウイルス:SeV)による、慢性動脈閉塞症(重症虚血肢)に対するPhase I・IIa相臨床研究であり、具体的に以下を目的とする。
1.国産ウイルスベクターSeVの臨床上の安全性の確認
2.効果を示すと考えられる用量の確認 
3.新GCP準拠臨床研究による第I・II相臨床データの集積

 本遺伝子治療臨床研究は、12例を対象とし3年で完了を目標とする。その後は後期相治験へ移行し、製剤化を目指す。
研究方法
 臨床研究はオープンラベル、用量漸増式試験であり、第I、IIa相に相当する。4段階の投与量を設定、投与後1ヶ月の経過観察において3人の患者に問題がないことを確認後、第三者委員会の判定によりステージアップする。
結果と考察
本年度は第3ステージの投与が実施され、報告書作成時点(2009.3末日)で6ヶ月の観察期間を終了した。

症例番号304、通算7例目
 本被験者(Fontaine III度)においては、安静時疼痛の消失ならびに歩行距離の延長、趾尖脈波の出現などが観察されている。
 これらの改善項目は、9ヶ月経過した現在も維持されている。

症例番号303、通算8例目
 本被験者(Fontaine III度)は、以前壊疽のため患肢(右下肢)第3・5趾を2002年の切断後、次第に安静時疼痛が増強してきた症例である。本症例においては、安静時疼痛の消失が観察されているが、不全麻痺(陳旧性脳梗塞後遺症)のために歩行機能評価はできていない。その他サーモグラフィ上の温度上昇などが観察されている。
 これらの改善項目は、8ヶ月経過した現在も維持されている。

症例番号305、通算9例目
 本被験者(Fontaine III度)は、安静時疼痛の消失が速やかかつ一過性に観察されたが、投与後3ヶ月後より疼痛が再発した。以後、保存的に経過観察されているが、6ヶ月後の現時点で潰瘍などの新たな病変は見られていない。
結論
 第1-3ステージにおいて、厚生労働省へ報告された重篤な有害事象として、本年度は症例登録番号105(第1ステージ、投与後1年9ヶ月)に骨髄異形成症候群の発生を確認した。第三者委員会による検討の結果、これは偶発症と考えることが医学的・科学的に妥当と判断された。
 その他投与症例全例で、臨床研究薬に直接起因する有害事象は検出されておらず、第3ステージまでのベクター量は耐容量であり、手技的にも安全に施行可能であることが明らかになった。
 一部の効能評価項目で症状の改善が見られていることから、一定の効能が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200817001B
報告書区分
総合
研究課題名
国産新規ウイルスベクターを用いた重症虚血肢に対する 新GCP準拠遺伝子治療臨床研究
課題番号
H18-トランス・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
米満 吉和(国立大学法人九州大学大学院医学研究院 消化器・総合外科学・遺伝子治療臨床研究準備室)
研究分担者(所属機関)
  • 中西 洋一(九州大学病院 高度先進医療センター )
  • 伊東 啓行(国立大学法人九州大学大学院医学研究院 消化器・総合外科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、全く新しい概念に基づく国産新規ウイルスベクター(組換えセンダイウイルス:SeV)による、慢性動脈閉塞症(重症虚血肢)に対するPhase I・IIa相臨床研究であり、具体的に以下を目的とする。
1.国産ウイルスベクターSeVの臨床上の安全性の確認
2.効果を示すと考えられる用量の確認 
3.新GCP準拠臨床研究による第I・II相臨床データの集積

 本遺伝子治療臨床研究は、12例を対象とし3年で完了を目標とする。その後は後期相治験へ移行し、製剤化を目指す。
研究方法
 臨床研究はオープンラベル、用量漸増式試験であり、第I、IIa相に相当する。4段階の投与量を設定、投与後1ヶ月の経過観察において3人の患者に問題がないことを確認後、第三者委員会の判定によりステージアップする。
結果と考察
1.安全性
 試験期間中、死亡症例無し。
 重篤な有害事象は2例3件(共に第1ステージ)に発生し、所轄官庁へ報告された(2件:原疾患の進行、1件:骨髄異形成症候群)。第三者委員会にて、直接的因果関係は否定的と判定。
 その他については、全てグレード1であった。用量が増加すると、白血球・好中球増多を認めた。

2.効能評価
 有効用量と想定しているステージ2以降の投与症例(現時点で6例)において、
・安静時疼痛の改善:6例/6例中(全例)
(1例を除き、5例で観察期間中無痛状態を維持)
・トレッドミル負荷試験での最大歩行距離の改善:4例/5例中
(1例は陳旧性脳梗塞による片麻痺のため評価不能)  
 うち、200m以上(積極的な治療が不要)まで改善したもの2例
(ステージ2:1例、ステージ3:1例)
 不変であったもの:1例(ステージ3:1例)
・Rutherford分類上、改善した症例
 「やや改善」以上の改善(1段階以上)がみられたもの:6例/6例中(全例) 
  経過中、1回でも2段階以上改善したもの:4例/6例中
・趾尖脈波(脚の第1趾で計測する動脈波):  
投与後1回以上投与肢での検出が可能になった症例:3例/4例中
(他2例は投与前より検出可能)
結論
 これまでの経過から、第3ステージまでの用量であれば、本遺伝子治療は安全に施行可能であることが明らかになった。
 またこの用量において、一部の評価項目において効能を示唆する所見を得た。
 今後、第4ステージ(最終ステージ)の実施により、より高い効能と安全性に関する知見が得られると期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200817001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.国産初の高性能ウイルスベクターにおける世界初の臨床的評価(人体への投与)が実現した。
2.本ベクターを基礎研究に活用することにより、血流回復を伴う「機能的血管新生」に必須の内因性血管新生関連分子群を同定した。
3.血流回復を伴う「機能的血管新生」においてp70S6K系の重要性が明らかとなった。
4.虚血臓器を救済するには、血行回復だけでは不十分であり、同時にリンパ管の形成も必須であることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
1.本ベクターの臨床的安全性、即ち最大効能を示すと考えられる投与量においても、生体に対する侵襲は軽微、かつ投与直後に一過性かつ軽度の炎症反応を示すのみであることが明らかとなった。
2.特定の臨床効果(安静時疼痛の消失、最大歩行距離の延長、趾尖脈波の出現、下肢温の上昇など)が確認された。
3.本臨床研究の効能所見は、TASCII(虚血肢国際コンセンサス)でfirst line drugとして推奨されるシロスタゾール(商品名プレタール)の効能を大きく凌駕することが明らかになった。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
2009.1.1.西日本新聞「小児がんに免疫療法:患者の細胞をウイルスで活性化」
2008.3.6.日経産業新聞「21世紀の気鋭」
2007.11.5.西日本新聞「医療・健康:足の閉塞性動脈硬化症」
2007.1.20.朝日新聞九州版「ここまで来た究極の未来医療」

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
27件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-