水道の基盤強化に資する技術の水道システムへの実装に向けた研究

文献情報

文献番号
202027017A
報告書区分
総括
研究課題名
水道の基盤強化に資する技術の水道システムへの実装に向けた研究
課題番号
20LA1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
清塚 雅彦(公益財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鎌田 素之(関東学院大学 工学部 )
  • 三宅 亮(東京大学 工学系研究科)
  • 山村 寛(中央大学 理工学部)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 市川 学((公財)水道技術研究センター 浄水技術部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、水道事業に携わる職員が不足する中、水道システム全体において水質の安全性を確保しつつ、適正な維持管理を行う手法の導入による経営効率化が求められている。そこで、水質変動や異常時における早期発見を目的とするシステム導入を目指し、監視すべき水質指標を特定してそれを経済的に連続監視する技術を開発するとともに、当該技術を組み込んだ水道システムの評価や改良点等をまとめることを目的としている。
研究方法
令和2年度は、(1)水質管理の基盤強化に係る既存・将来技術の調査および課題抽出(アンケート調査及び文献調査)、(2)連続測定が可能な水質指標の特定と測定手法の開発、(3)ビッグデータに基づく水質変動の早期予測手法の検討、(4)水道システム全体を視野に入れた経済的な水質センサー及びデータ活用手法の開発に取り組む。
結果と考察
(1)水質管理の基盤強化に係る既存・将来技術の調査および課題抽出(アンケート調査及び文献調査)
国内32水道事業体に対して、連続測定データの利活用に関する実態把握を目的としたアンケート調査を実施した。濁度、pH、残留塩素濃度は9割以上の事業体で測定されていた一方、データの利活用は事業体間及び項目間で差がみられた。また、自動監視装置の課題としては、費用、測定精度、維持管理などが挙げられた。
また、海外文献調査では、キーワード検索でヒットした文献の要旨等から判断し、当研究の趣旨に該当する13文献について抄録した。その上で、水質測定に関する新技術について、微生物及び溶存有機物の連続測定、オンライン型水質センサー、水質予測手法の4項目に分類し、それぞれの開発動向や課題点を抽出、考察した。
(2)連続測定が可能な水質指標の特定と測定手法の開発
文献調査及び水道事業体並びに企業へのヒアリング調査を行った結果、近年いくつかの事業体で三次元蛍光分析が試行され、注目されていたものの日本では連続測定の実績が少ないことがわかった。海外文献を調査したところ、本分析はすでに給水の有機物濃度の予測や水質汚染事故の早期検出などに使用されていた。そのため今後我が国でも、本分析が水質管理において有用な連続測定項目になりうると考えられた。
(3)ビッグデータに基づく水質変動の早期予測手法の検討
浄水場が保有する残留塩素濃度の時系列データに着目し、長期短期記憶(LSTM)ネットワークモデルにより、給水末端における残留塩素濃度予測モデルの構築を試みた。その結果、予測時間を6時間以下にする必要があるものの、説明変数は残留塩素濃度だけでよく、4か月分の1時間間隔データといった少ないデータ数でも、精度よく予測できることが分かった。
(4)水道システム全体を視野に入れた経済的な水質センサー及びデータ活用手法の開発
経済的な水質センサーの開発に向けて、既開発の湿式水質計については、採取部と分析ユニット部を一体化した構成を提案し、原理評価機の試作を行った。また、新たに、ポリイミド樹脂ベースの簡素な電極センサーを試作し、センサーとしての原理性能を評価・確認した。さらに、センサーにおける測定済データのポスト処理についての品質を確保するため、エッジでの計算処理回路を組み込んだゲートウェイの製作、及び公衆サービスの選定を実施した。
結論
(1)水質管理の基盤強化に係る既存・将来技術の調査および課題抽出
アンケート調査の結果から、連続測定データの利活用の推進及び自動監視装置の更なる開発促進が日本国内の水道事業の基盤強化につながると考えられた。
文献調査では、微生物・ウイルスや、特定の溶存有機物群を対象とした、迅速検出や連続測定を可能とする測定手法の技術開発と適用が進展していることが明らかとなった。オンライン型水質センサーについては、先端化学材料等を用いた新規センサー開発、ならびに、既存の水質センサーを組み合わせた新規対象物質への適用という方向に大別された。深層学習やビックデータを用いた水質予測手法の開発では、水質測定データセットの特性により、特定のモデルにおいて予測精度が低下する場合があった。
(2)連続測定が可能な水質指標の特定と測定手法の開発
新たな連続モニタリング方法としては、GC/MSや三次元蛍光分析による連続測定の可能性が示された。
(3)ビッグデータに基づく水質変動の早期予測手法の検討
時系列の濃度変化の傾向を長短期記憶ネットワーク(LSTM)アルゴリズムにより学習することで、数時間先の残留塩素濃度を推測できる予測モデルを構築した。また、構築した予測モデルの精度向上も取り組んだ。
(4)水道システム全体を視野に入れた経済的な水質センサー及びデータ活用手法の開発
令和3年度から行う実証実験に使用する小型水質計器の基本的な装置構成を設計した。

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202027017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,980,000円
(2)補助金確定額
5,980,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,509,842円
人件費・謝金 462,000円
旅費 409,950円
その他 316,830円
間接経費 1,380,000円
合計 6,078,622円

備考

備考
自己資金 98,610円
その他(利息)12円

公開日・更新日

公開日
2022-02-22
更新日
-