ホウ素ナノデバイス型中性子捕捉治療

文献情報

文献番号
200812037A
報告書区分
総括
研究課題名
ホウ素ナノデバイス型中性子捕捉治療
課題番号
H20-ナノ・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中村 浩之(学習院大学理学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松村 明(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 李 千萬(大阪大学 医学部付属病院)
  • 鈴木 実(京都大学 原子炉実験所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
39,294,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中性子捕捉療法(BNCT)は、低エネルギーである熱・熱外中性子がホウ素との核反応により生ずる強力な粒子線を用いるものであり、低毒性のホウ素化合物を用いるため化学療法のような重篤な副作用はなく、また放射線療法のような照射場内の正常組織へのダメージも極めて低い治療法で、患者への負担が極めて小さい特徴をもつ。本研究では高濃度ホウ素デリバリーシステムを構築することで、BNCTの適用拡大を指向し、各腫瘍に最適なホウ素ナノデバイスの開発研究を行うことを目的とする。
研究方法
・ホウ素ナノデバイス製剤の開発:ホウ素脂質とPEG化リン脂質、コレステロールの構成比を制御することで、血中滞留性の高い安定なホウ素ナノデバイスに最も適した粒子サイズと脂質の構成成分を決定する。
・ホウ素ナノデバイス製剤中皮腫・肝臓がんへの適応検討: ヒアルロン酸修飾型ホウ素ナノデバイスを作成し、中皮腫細胞に対する取り込み活性を検討する。
・ホウ素ナノデバイス製剤の膀胱がんへの適応検討:トランスフェリン結合型ホウ素ナノデバイスを作成し、薬理動態について検討する。
・ホウ素ナノデバイス製剤の脳腫瘍への適応検討:ホウ素ナノデバイスを用いて血液能関門欠損腫瘍内のホウ素集積性を現在臨床に用いられているBSHの場合と比較する。
結果と考察
・血中滞留性の高いホウ素ナノデバイスを確立した。飽和脂肪酸から誘導されるステアリル酸(DSBL)を効率よく合成する手法を確立した。また、ガドリニウムを内封し、生きたがん移植マウス内のホウ素ナノデバイスの生体内分布をMRIにより追跡した。
・ヒアルロン酸修飾型ホウ素ナノデバイスの中皮腫細胞に対する蛍光ヒアルロン酸を用いた競合実験により、ヒアルロン酸修飾ホウ素ナノデバイスが選択的に中皮腫に取り込まれていることを明らかにした。
・マウス膀胱癌細胞MBT-2が正常な膀胱細胞に比べトランスフェリン受容体がおよそ2倍発現していることを明らかにした。さらに、トランスフェリン修飾ホウ素ナノデバイスの取り込みを抗BSH抗体で検出できる
結論
本年度は生体内で安定なホウ素ナノデバイスの最適化はほぼ確立し、またトランスフェリン修飾型ホウ素ナノデバイスによるアクティブターゲティングの具体的成果も得た。21年度は、京都大原子炉ならびに原研JRR4がいずれも稼働することから、各分担研究者と討議を重ね、動物の中性子照射実験による有効性データの検証と臨床化への道筋を立てたい。
 

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-