OECDプログラムにおいてTGとDAを開発するためのAOPに関する研究

文献情報

文献番号
202026005A
報告書区分
総括
研究課題名
OECDプログラムにおいてTGとDAを開発するためのAOPに関する研究
課題番号
H30-化学-指定-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 豊田 武士(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・病理部)
  • 相場 節也(国立大学法人東北大学大学院医学系研究科)
  • 足利 太可雄(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 尾上 誠良(静岡県立大学 薬学部)
  • 杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所  安全性生物試験研究センター 変異遺伝部)
  • 松下 幸平(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 大森 清美(神奈川県衛生研究所)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 平林 容子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 山田 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
24,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動物実験3Rsの浸透に加えて、実験動物とヒトとの種差等の克服のために、既存の毒性試験法の見直しが世界的に進んでいる。経済協力開発機構(OECD)においても、全身毒性試験の有害性発現経路(AOP)を開発し、動物実験代替法を念頭においた試験法ガイドライン(TG)の公定化やin silico法の確立にAOP情報を活用する一方で、AOPをベースとした“毒性情報を網羅した試験の実施と評価のための戦略的統合方式(IATA)”を開発し、それに基づき、TGと同格の扱いになる確定方式(DA)によるガイドラインによる化学物質の安全性評価を推進している。このような国際的な潮流に乗り、日本が得意とする分野で主導権を握って、AOPやTGを公定化し、さらにはIATAやDAの開発に協力することが本研究班の目的である。
研究方法
化学物質の毒性情報等を集積しながら、免疫毒性、非遺伝毒性発がん性及び光安全性等に関する日本発のAOP開発を進める。その過程を踏まえて我が国におけるAOP作成マニュアルをまとめる。さらに、AOP開発を支援するため、通常の反復投与毒性試験で採取される下垂体、甲状腺などを用いて、各種ホルモンなどの発現量の増減を免疫組織化学染色法によって半定量する評価方法の確立を目指す。また、エピジェネティック変異原性や腎毒性の作用機構の解明も行った。
一方、既存のAOP情報をもとに開発された皮膚感作性試験、免疫毒性試験、発生毒性試験、光安全性試験及び腐食性試験についてのTGを開発する。また、OECDでの非遺伝毒性発がんIATAに、形質転換試験Bhas42法及びラット肝中期発がん性試験などを組み込むことを目指すとともに、光安全性IATA及び皮膚感作性DAの開発に関与することを通じて、IATAやDAの国内での普及に務める。
結果と考察
OECD TGプログラムのナショナル・コーディネーター作業部会(WNT)にて、海外の専門家と日本人の開発したOECD TG、IATA及びDAについて協議を続け、本年度に 3件のTG改定を採択させることができた。非遺伝毒性発がん性のIATA開発に関しては、本活動の検討方針に関する論文化に貢献した。また、皮膚感作性DAの開発に協力し、令和3年採択の目途がたった。さらに、OECDガイダンスとして、in vitro免疫毒性試験のDetailed review paperを作成した。
AOPに関しては、OECDのAOP作成グループ(EAGMST)にて海外の専門家と協議を続け、令和2(2020)年12月に免疫毒性に関するAOPに内諾を得た。この他、免疫毒性、発がん性、光毒性のAOP開発を進めている。一方、ホルムアルデヒドによる鼻腔発がんの機序について、AOPの考え方に沿って網羅的に情報収集し、その包括的考察をreviewとして国際誌に公表した。AOP開発を支援する実験に関しては、AOP開発に将来貢献できると期待されるものの、直接開発しているAOPに寄与することはできなかった。
結論
令和元年度からの継続した活動の中、日本人の開発したTG 3件の改定が令和2(2020)年6月に公表された。
1) AR STTA法 : AR-EcoScreenTM細胞を用いた アンドロゲン受容体恒常発現系転写活性化試験(TG458)
2) 眼刺激性試験 短時間曝露法TG491
3) 皮膚感作性試験代替法 アミノ酸誘導体反応試験(ADRA)(TG442)
AOPに関しては、“Inhibition of Calcineurin Activity Leading to impaired T-Cell Dependent Antibody Response(AOP154)”が日本発のAOPの一つとして、令和2年12月にEAGMSTにおいて内諾となった。また、ホルムアルデヒドによる鼻腔発がんの機序について、AOPの考え方に沿って網羅的に情報収集し、その包括的考察をreviewとして国際誌に公表した。
さらに、非遺伝毒性発がん性のIATA開発に関する専門家会議のサブグループ及び全体会合web会議に参画し、アッセイ系の評価に協力すると共に、本活動の検討方針に関する論文化に貢献した。

公開日・更新日

公開日
2021-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-08-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202026005B
報告書区分
総合
研究課題名
OECDプログラムにおいてTGとDAを開発するためのAOPに関する研究
課題番号
H30-化学-指定-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 豊田 武士(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・病理部)
  • 相場 節也(国立大学法人東北大学大学院医学系研究科)
  • 足利 太可雄(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 尾上 誠良(静岡県立大学 薬学部)
  • 杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所  安全性生物試験研究センター 変異遺伝部)
  • 松下 幸平(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 大森 清美(神奈川県衛生研究所)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 平林 容子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 山田 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
  • チョウ ヨンマン(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動物実験3Rsの浸透に加えて、実験動物とヒトとの種差等の克服のために、既存の毒性試験法の見直しが世界的に進んでいる。経済協力開発機構(OECD)においても、全身毒性試験の有害性発現経路(AOP)を開発し、動物実験代替法を念頭においた試験法ガイドライン(TG)の公定化やin silico法の確立にAOP情報を活用する一方で、AOPをベースとした“毒性情報を網羅した試験の実施と評価のための戦略的統合方式(IATA)”を開発し、それに基づき、TGと同格の扱いになる確定方式(DA)によるガイドラインを用いた化学物質の安全性評価を推進している。このような国際的な潮流に乗り、日本が得意とする分野で主導権を握って、AOPやTGを公定化し、さらにはIATAやDAの開発に協力することが本研究班の目的である。
研究方法
化学物質の毒性情報等を集積しながら、免疫毒性、非遺伝毒性発がん性及び光安全性等に関する日本発のAOP開発を進める。その過程を踏まえて我が国におけるAOP作成マニュアルをまとめた。さらに、AOP開発を支援するため、通常の反復投与毒性試験で採取される下垂体、甲状腺などを用いて、各種ホルモンなどの発現量の増減を免疫組織化学染色法によって半定量する評価方法の確立を目指した。また、エピジェネティック変異原性や腎毒性の作用機構を解明した。
一方、既存のAOP情報をもとに開発された皮膚感作性試験、免疫毒性試験、発生毒性試験、光毒性試験及び腐食性試験についてのTGを開発した。また、OECDでの非遺伝毒性発がんIATAに、形質転換試験Bhas42法及びラット肝中期発がん性試験などを組み込むことを目指すとともに、皮膚感作性DAの開発に関与することを通じて、IATAやDAの国内での普及に務めた。
結果と考察
OECD TGプログラムのナショナル・コーディネーター作業部会(WNT)にて、海外の専門家と日本人の開発したOECD TG、IATA及びDAについて協議を続け、本年度に 5本(延べ6本)のTGを採択させることができた。これらはOECDから公表されている。非遺伝毒性発がん性のIATA開発に関しては、本活動の検討方針に関する論文化に貢献した。また、皮膚感作性DAの開発に協力し、令和3年4月に採択の目途がたった。さらに、OECDガイダンスとして、in vitro免疫毒性試験のDetailed review paperを作成した。
AOPに関しては、OECDのAOP作成グループEAGMSTにて海外の専門家と協議を続け、令和2年12月に免疫毒性に関する一つのAOPに内諾を得た。この他、免疫毒性、発がん性、光毒性のAOP開発を進めている。一方、ホルムアルデヒドによる鼻腔発がんの機序について、AOPの考え方に沿って網羅的に情報収集し、その包括的考察をreviewとして国際誌に公表した。AOP開発を支援する実験に関しては、AOP開発に将来貢献できると期待されるものの、直接開発しているAOPに寄与することはできなかった。
結論
令和元年度からの継続した活動の中、日本人の開発したTG 5件(延べ6件)が令和2年6月までに公表された。
1)光安全性試験ROS assay、2019年新規TG495
2)LabCyte EPI-MODEL24を用いる腐食性試験代替法、2019年TG431に追加
3)AR STTA法 : AR-EcoScreenTM細胞を用いた アンドロゲン受容体恒常発現系転写活性化試験、2020年改定TG458
4)眼刺激性試験 短時間曝露法2020年改定TG491
5)皮膚感作性試験代替法 アミノ酸誘導体反応試験(ADRA)2019年TG442C中に追加及び2020年改訂

AOPに関しては、“Inhibition of Calcineurin Activity Leading to impaired T-Cell Dependent Antibody Response”が日本発のAOPの一つとして、令和2年12月にEAGMSTで内諾となった。また、ホルムアルデヒドによる鼻腔発がんの機序について、AOPの考え方に沿って網羅的に情報収集し、その包括的考察をreviewとして国際誌に公表した。
さらに、皮膚感作性DAの令和3年4月の採択に向け、ガイドランの作成に寄与した。非遺伝毒性発がん性のIATA開発に関する専門家会議のサブグループ及び全体会合web会議に参画し、アッセイ系の評価に協力すると共に、本活動の検討方針に関する論文化に貢献した。

公開日・更新日

公開日
2021-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-08-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202026005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
皮膚感作性、免疫毒性、光毒性、癌原性、光毒性及び腐食性に関するそれぞれの毒性分野の国内外の専門家がOECDという国際機関に集い、有害性作用機構を解明する、毒性を検出する方法を公定化するという視点で議論し、最先端の科学的知見を検証した成果物は、極めて学術的な価値が高いと考える。
臨床的観点からの成果
特になし。
ガイドライン等の開発
本研究班にて、眼刺激性試験代替法試験法ガイドライン(TG)491やTG494および皮膚感作性試験代替法のTG442C ADRAの改定に寄与した。これらの改定案はWNTでの採択を受け、令和4年6月までに公表された。また、本研究班で開発された免疫毒性のAOPが、令和3年にOECDで採択された。
その他行政的観点からの成果
他国が開発したTGやAOPは使用するだけでなく、国際協力の中で、我が国で開発された成果物を公定化することにより、毒性評価の真理を究めることができる。この経験を持つ研究者を多数輩出できる本研究班は、行政的な観点での人材育成においても極めて有意義であると考える。
その他のインパクト
OECDで年間に公表されるTGやAOPはそれぞれ10本に満たない。その中で、一国の研究者が開発したTGやAOPが毎年、定期的に複数本ずつ開発されていくという現実は、欧米中心で進んできた標準化グループにとっては衝撃的な事実である。このような経験こそが我が国の科学研究レベルを引き上げ、我が国の国際社会における存在感を高めることにつながると信じている。

発表件数

原著論文(和文)
37件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
37件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishikawa A, Nagano K, Kojima H, Ogawa K
A comprehensive review of mechanistic insights into formaldehyde-induced nasal cavity carcinogenicity
Regul Toxicol Pharmacol. , 123 , 104937-  (2021)
https://doi.org/10.1016/j.yrtph.2021.104937
原著論文2
Jacobs M, Colacci A, Corvi R, et al
Chemical carcinogen safety testing: OECD expert group international consensus on the development of an integrated approach for the testing and assessment of chemical non-genotoxic carcinogens
Arch Toxicol. , 94 , 2899-2923  (2020)
doi: 10.1007/s00204-020-02784-5

公開日・更新日

公開日
2021-08-11
更新日
2023-07-31

収支報告書

文献番号
202026005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,600,000円
(2)補助金確定額
24,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 19,687,258円
人件費・謝金 1,465,386円
旅費 226,848円
その他 3,223,197円
間接経費 0円
合計 24,602,689円

備考

備考
不足分を自己資金で補填

公開日・更新日

公開日
2023-07-28
更新日
-