光線力学的治療に有効な多機能型薬剤内封ナノ運搬体の開発

文献情報

文献番号
200812032A
報告書区分
総括
研究課題名
光線力学的治療に有効な多機能型薬剤内封ナノ運搬体の開発
課題番号
H19-ナノ・若手-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小野 努(国立大学法人 岡山大学 大学院環境学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大河原 賢一(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬総合研究科)
  • 加来田 博貴(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬総合研究科)
  • 阪田 功((株)光ケミカル研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
光線力学的治療(PDT)は,外部から腫瘍組織選択的に印加する光刺激によって局所的な抗がん効果を期待するものであり,光増感物質を腫瘍組織内部へ安定に送達する技術基盤の確立が鍵を握る。そのため,PDTに必要なポルフィリン類を高効率で封入可能なナノ運搬体の調製技術を構築するとともに,腫瘍組織への移行の駆動力となる高い血中濃度が維持可能な血中滞留型ナノ運搬体の創製とPDTへの適用を目指す。また,疎水性薬物を高効率で内封する機能を積極的に活用して,PDTとは作用機序の異なる抗腫瘍性化合物の開発と多剤併用型薬剤へ応用を検討する。
研究方法
光増感物質であるポルフィリンは疎水性が高く,リポソーム,水中油滴型エマルション,ナノ粒子などの様々なナノ運搬体に関する検討を行った結果を踏まえ,ポリ乳酸(PLA)鎖とポリエチレングリコール(PEG)鎖を併せ持つジブロック共重合体(PLE)を用いて機能性ポルフィリン含有PLEナノ粒子の調製を行った。ポルフィリンを高含有率で高効率に内封できる100 nm以下のナノ粒子調製条件を検討し,水溶液中での一重項酸素生成能力を確認した。また,ポルフィリン含有PLEナノ粒子を細胞培養培地中に添加して,光照射を行い,in vitro実験系での殺細胞効果を評価した。
結果と考察
溶媒拡散法によって調製したPLEナノ粒子は,水溶性PLEと油溶性PLEを組み合わせることで約70 nmのナノ粒子調製を簡便に行えることを確立し,さらに機能性ポルフィリンの高い内封効率および含有量を達成できる調製条件を見いだした。また,水溶液中に分散したナノ粒子へ光照射することによって一重項酸素の生成が確認できたことから,ポルフィリンはPLEナノ粒子に保持したまま一重項酸素を放出できることが明らかとなった。また,本ナノ運搬体を用いてcolon26細胞に対するin vitro実験系により,ポルフィリン内封ナノキャリアを含む培養液中への光照射することによって,ポルフィリン濃度が50 nMという極めて低い濃度でも十分な殺細胞効果を有することが明らかとなった。
結論
高効率でポルフィリンを内封した100 nm以下のナノ粒子調製法を確立した。さらにそのナノ粒子を用いて,極めて低濃度でも光照射時に高い殺細胞効果が得られることが明らかとなった。今後はin vivoでの体内動態評価とPDTによる抗腫瘍効果の検討を行って臨床応用を目指す。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-