ナノテクノロジーを用いたDDSによる耳鳴の克服

文献情報

文献番号
200812030A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノテクノロジーを用いたDDSによる耳鳴の克服
課題番号
H19-ナノ・若手-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 達則(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 壽一(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 田畑 泰彦(京都大学再生医科学研究所)
  • 中川 隆之(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 平海 晴一(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内耳ドラッグデリバリーシステム(DDS)を用いることによって治療方法のなかった耳鳴に対する新規治療を提供する。リドカインは経鼓膜的に鼓室内投与すると耳鳴に有効だが持続時間が短くめまいが起こることから治療として受け入れがたいが、徐放製剤を蝸牛の正円窓膜上に極細径内視鏡を用いて留置する方法を試みる。またステルス型ナノパーティクルによる難聴治療についても検討した。このDDSは将来的には広く他の内耳疾患に対して応用可能である。
研究方法
昨年度リドカイン徐放パーティクルを作成し、in vitroで徐放すること、in vivoではモルモットの蝸牛にリドカインを運搬できた。本年度は平均直径100µmのパーティクルを用いた。1)コンポジット化して評価した。2)モルモットの正円窓膜上に留置して有害事象評価(聴力変化、眼振の出現、中耳炎、内耳炎)を行った。3)騒音難聴によって耳鳴を誘発したラットである遺伝子の発現量変化を検討した。4)ヒト標本において投与法を検討した。
ステロイド徐放ステルス型ナノパーティクルを用いた騒音難聴の治療について検討した。マウス騒音難聴モデルを用いて5)蛍光色素含有パーティクル静注後の蝸牛への蛍光色素集積、6)ステロイド含有パーティクル静注後の蝸牛内ステロイド濃度、7)ステロイド投与群、生食投与群に対する聴力の改善を比較し、残存有毛細胞数も評価した。
結果と考察
1)ゼラチンスポンジまたはゼラチンハイドロゲルとの混合が操作性が良かった。2)重篤な聴力低下は見られなかった。眼振は出現しなかった。重篤な中耳炎や内耳炎は見られなかった。3)進行中。4)細径中耳内視鏡を用いた正円窓膜上投与で10mgを留置できることを確認した。第1・2相臨床試験のプロトコルを作成中である。
5)投与後蛍光色素は蝸牛に分布した。6)蝸牛内にステロイドが検出できた。7)他の2群に比べて聴力改善が良好で、残存有毛細胞数も多かった。ステロイド含有ステルス型ナノパーティクルは騒音難聴に対する治療効果が単独のステロイドや生食よりも高い。
結論
リドカイン徐放パーティクルの前臨床試験を行った。動物を用いた有効性評価は現在進行中で、ヒトにおける安全性・有効性を確認するための臨床試験プロトコルを作成中である。
ステロイド徐放パーティクルはステロイド投与や生食投与群に比べて騒音難聴後の聴力を有意に改善した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-