「専ら医薬品」たる成分本質の判断のための調査・分析及びその判断基準・範囲の整備に関する研究

文献情報

文献番号
202025005A
報告書区分
総括
研究課題名
「専ら医薬品」たる成分本質の判断のための調査・分析及びその判断基準・範囲の整備に関する研究
課題番号
H30-医薬-指定-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
袴塚 高志(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 合田 幸広(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 丸山 卓郎(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 内山 奈穂子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 大塚 英昭(安田女子大学薬学部)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 辻本 恭(東京農工大学 工学府)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,392,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
無承認無許可医薬品は,医薬品としての承認や許可がないにもかかわらず,医薬品としての目的性を持たせた製品であり,これらの流通により,適正な医療機会の喪失等,様々な健康被害が予想される為,医薬品医療機器等法により,その製造,販売,授与,広告が禁止されている.本研究は,専ら医薬品たる成分本質を適切に判断するための調査・分析を行い,また,量的概念を含む判断基準の社会実装について検討し,同時に,既存の例示リストの見直し・整備を行うことで,無承認無許可医薬品の流通を防止し,国民の健康と安全を確保する目的で行われる.
研究方法
「食薬区分の判断に関する検討」では,1) 名称,他名等,部位等,備考,2) 学名,基原植物和名等,生薬名,英名等,3) 医薬品としての使用実態,4) 毒性データ,5) アルカロイド,毒性タンパク,毒薬劇薬指定成分等の含有,等の調査項目について検討し,「医薬品の成分本質に関するワーキンググループ」(食薬区分WG)に提案した.「健康食品として流通するカスカラサグラダ及びフラングラ皮製品の基原種と成分について」では,カスカラサグラダ及びセイヨウイソノキ標準植物試料及びインターネット販売の健康食品製品について,ITS領域及び葉緑体DNAのtrnH-psbA領域の塩基配列を決定し,また、メタノール抽出液のLC/MS分析を行った.
「ソズクの化学成分に関する研究」では,沖縄県で採集したソクズの地上部をMeOHで抽出し,含有化合物の単離構造決定を行った.
「dimethyldithiodenafil及びdesmethylpiperazinyl propoxysildenafilのLC-PDA-MS分析について」では,両化合物の標準品について,LC-PDA-MSを用いて分析条件の検討を行った.
「トウゲシバエキスおよびHuperzine含有健康食品におけるHuperzine Aの定量分析」では,インターネット販売のトウゲシバエキスまたはHuperzine 含有健康食品についてLC-PDF-MS分析を行った.
「センソウトウ(トウゲシバ)の成分本質(原材料)の分類変更に関する調査」では,センソウトウ(トウゲシバ)の含有成分,医薬品としての使用実態,食経験,安全性,諸外国における評価と規制に関する情報について調査を行った.
結果と考察
我が国の専ら医薬品リストに例示される成分であるかどうか,依頼のあった成分本質について文献調査等を行い,天然物由来の7品目及び化学物質等13品目については,食薬区分WGでの議論が重要と考えられた.
専ら医薬品であるカスカラサグラダ及びフラングラ皮を使用と表示された健康食品について塩基配列解析による種同定とLC/MSによる成分組成解析を行ったところ,それぞれに特徴的なクロマトグラムが得られ,表示通りの原料を含むことが確認された.ソクズの葉部より数種類の青酸配糖体が単離され,これを青汁ジュースとして飲用することは危険であると考察された.
強壮用健康食品への添加が危惧されるED治療薬類縁化合物dimethyldithiodenafil及びdesmethylpiperazinyl propoxysildenafilの流通に備え,各種機器分析データ及びLC-PDA-MS分析法をまとめた.
市販のトウゲシバエキスおよびHuperzine含有と謳う健康食品についてHupenzine Aの定性分析および定量分析を行ったところ,Huperzine Aの一日最大摂取量が中華人民共和国葯典において設定されている上限値を上回るものが1検体存在し,注意が必要であると思われた.
セントウソウについて既報の薬理作用や毒性情報などを調査したところ,多くのアルカロイドが含まれていることを確認し,そのうち4成分は毒薬相当あるいは毒薬相当であり,センソウトウは専医リストに移行することが妥当であると考察された.
結論
新規に「専ら医薬品」であるかどうか判断が求められた品目について,医薬食品局監視指導・麻薬対策課長が招集する食薬区分WGのための調査を遂行した.また、専医成分であるカスカラサグラダ及びフラングラ皮を含む健康食品の流通実態,ソズクを青汁ジュースとして飲用することの危険性,非医成分であるセンソウトウの専医リストへの移行の必要性について指摘した.

公開日・更新日

公開日
2021-08-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-08-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202025005B
報告書区分
総合
研究課題名
「専ら医薬品」たる成分本質の判断のための調査・分析及びその判断基準・範囲の整備に関する研究
課題番号
H30-医薬-指定-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
袴塚 高志(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 合田 幸広(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 丸山 卓郎(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 内山 奈穂子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 大塚 英昭(安田女子大学薬学部)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 辻本 恭(東京農工大学 工学府)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
無承認無許可医薬品は,医薬品としての承認や許可がないにもかかわらず,医薬品としての目的性を持たせた製品であり,これらの流通により,適正な医療機会の喪失等,様々な健康被害が予想されるため,薬機法により,その製造,販売,授与,広告が禁止されている.本研究は,専ら医薬品たる成分本質を適切に判断するための調査・分析を行い,また,量的概念を含む判断基準の社会実装について検討し,同時に,既存の例示リストの見直し・整備を行うことで,無承認無許可医薬品の流通を防止し,国民の健康と安全を確保する目的で行われる.
研究方法
医薬品該当性の判断が厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課に依頼のあった品目について,「医薬品の成分本質に関するワーキンググループ」(食薬区分WG)における議論の基礎となる調査・検討を行った.また,カツアバ等の食薬区分のグレーゾーンにある品目について成分検索,成分分析,遺伝子解析等を行った.さらに,センナ茎およびハネセンナ含有健康食品についてsennosideの定量分析を行い,トウゲシバエキス含有健康食品についてHupenzine Aの定量分析を行った.さらに,現行の非医リストの内容について見直すため,原材料の基原や使用部位,名称,別名等の項目と共に,含有成分の種類とその毒性,市場流通実態,健康被害情報,食経験等について調査した.
結果と考察
「食薬区分の判断に関する検討」として,専医リストに例示されるべき成分であるかどうか,平成30年度~令和2年度に依頼のあった36品目について文献調査等を行い,パスチャカ,キバナオランダセンニチ等,食薬区分WGでの議論が必要と考えられた品目について,その旨を調査結果と共に報告した.
「グレーゾーンの植物体に関する研究」として,カツアバ製品の成分分画を行い,braylinを単離した.また,組織形態学的手法を用いてコウトウスギ(紅豆杉)商品の使用部位を特定し得ることを明らかにし,イチイにおける各部位のパクリタキセル含量が,樹皮>葉>種子>枝>心材>仮種皮の順であり,「紅豆杉」製品におけるパクリタキセル含量はイチイの心材とほぼ同程度であることを明らかにした.さらに,専医リスト収載のカスカラサグラダ及びフラングラ皮を原料と表記している健康食品について,表示通りの原料を含むことを確認した.また,ハクシュウ及びイヨウイケマの市場品を用いてTLC分析を検討し,両者を判別し得るスポットを見出した.さらに,リュウキュウガキよりカウレン誘導体等を単離し,ソズクの葉部より数種類の青酸配糖体prunasinを単離した.健康食品中からの単離が報告されている新規 ED 治療薬類縁体のうち,dimethyldithiodenafil等の標準品を購入し,各種機器分析データとLC-PDA-MS分析法をまとめた.
「食薬区分の量的規制に関する研究」として,センナ茎含有健康食品においては全てのサンプルからSennosideが検出され,ハネセンナ含有健康食品においては42製品中37製品からSennosideが検出された.また,ハネセンナ含有健康食品のうち4製品について1日あたりのSennoside摂取量が通常医薬品として用いられる用量を超過するものが見られた.トウゲシバエキスあるいはHuperzine A含有と表示した健康食品の中に,中華人民共和国葯典収載の一日摂取量の上限値を上回るものが存在した.
「食薬区分リストの整備に関する研究」として,非医リストの精査を行い,専医リストへの移行の候補としての20品目を挙げ,これらを含む11品目について,食薬区分WGにおける審議資料の整備を行った.非医リストに分類されているセンソウトウは,多くのアルカロイドを含み,中には劇薬相当あるいは毒薬相当のものも存在することを明らかにした.
結論
新規に「専ら医薬品」であるかどうか判断が求められた品目について,食薬区分WGのための調査を遂行するとともに,既存の専医リスト並びに,非医リストの様々な項目について検討を行った.
パクリタキセルの含量分析より,イチイの種子及びコウトウスギの心材を非医リストから専医リストに移行し,植物分類学及び植物形態学上の誤りを修正する食薬区分リスト改正案を作成した.
その青汁がアシタバジュースとして誤って販売されているソズクについて,葉部より青酸配糖体が単離されたことから注意を要することが分かった.
現行の非医リストの内容について見直し,エンベリア,カイコウズ,カンレンボク,クジチョウ,ケイコツソウ,コオウレン,ハナビシソウ,ヒヨドリジョウゴ,ヒルガオ,ビンロウジ,ルリヒエンソウについて,専医リストへの移行を提案する資料等について整備した.
非医リスト収載のセンソウトウ(トウゲシバ)は,専医リストに移行させることが妥当と考察された.

公開日・更新日

公開日
2021-08-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-08-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202025005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成30年度~令和2年度に厚生労働省に医薬品該当性の判断の依頼のあった植物由来16品目及び化学物質20品目の本質について文献調査等を行い,パスチャカ,キバナオランダセンニチ等,医薬品の成分本質ワーキンググループでの議論が重要と考えられた品目について,その旨を調査結果と共に報告した.
臨床的観点からの成果
「紅豆杉」製品について,抗がん剤のパクリタキセル含量を定量し,比較としてイチイの各部位の含量を調査したところ,樹皮>葉>種子>枝>心材>仮種皮の順でパクリタキセル含量が高く、「紅豆杉」製品とイチイの心材の定量値がほぼ同程度であることを明らかにし、これらの結果から,コウトウスギの心材を,非医から専医に移行する改正案を食薬区分WGに提出した。
ガイドライン等の開発
本研究における調査結果は以下の食薬区分WG(平成31年3月15日,令和 元年7月9日, 同9月13日, 同12月9日,令和2年2月18日,同2年6月16日, 同7月14日, 同9月25日,同12月15日,令和3年3月5日)にて審議の参考にされた。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果を基礎に食薬区分WGにて議論された結果、以下の通知において食薬区分の判断が示された。
平成31年3月22日薬生発0322第2号
令和2年7月9日薬生監麻発0709第33号
令和3年5月12日薬生監麻発0512第1号
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
12件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-08-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
202025005Z