食品及び食品用容器包装に使用される新規素材の安全性評価に関する研究

文献情報

文献番号
202024044A
報告書区分
総括
研究課題名
食品及び食品用容器包装に使用される新規素材の安全性評価に関する研究
課題番号
20KA1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
16,523,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、食品及び食品用容器包装用途に使用され、経口及び経皮等から暴露されるナノマテリアル等の新規素材について、安全性評価に資するデータの蓄積、評価方法の検討並びにその暴露状況やリスク評価に関する国際動向の把握を目的としている。
研究方法
6週齢雌雄のF344ラットを用い、結晶子径6 nmの100%アナターゼ型ナノサイズ二酸化チタン(テイカ株式会社 AMT-100、純度93%)を被験物質とした。0.2% DSPを分散剤として用い、100 mg/ml AMT-100を投与液として1000、100および10 mg/kg bw/day の用量で強制経口投与による28日間反復投与毒性試験を実施した。また、ナノ酸化チタンの免疫毒性解析のため、被験物質として全て表面未処理の酸化チタンC(アナターゼ型、粒子径6 nm)、酸化チタンE(アナターゼ型、粒子径30 nm)及び酸化チタンF(ルチル型、粒子径30-50 nm)を使用し、抗原タンパク質としては、卵アレルゲンである卵白アルブミン(OVA; Sigma A5503)を用いた。経皮感作時のOVA用量検討、及び経口投与時の小粒子径ナノ酸化チタンの影響の検討では、雌性BALB/cマウスを用い、8週齢時に背面片側を剃毛し(Day 0)、翌日より3日間、OVAのPBS溶液(1 or 2μg/50μL)を剃毛部に貼付して経皮感作を行った(Day 1-3)。抗原液の貼付には、パッチテスター「トリイ」(鳥居薬品株式会社)を2 cm角に切り取ったものを用い、パッド部に50μLの抗原液を浸潤させて貼付した。パッチの上から不織布製のジャケットを装着してパッチを保護した。3日間貼付後にパッチを外し(Day 4)、その後4日間休ませるという操作を1クールとし、4クールの経皮感作を行った。その後、Day 28、30,32,35、37、39、42にOVA 30 mgを経口投与し(3回/週、計7回)、追加免疫を行った。この時、ナノ酸化チタン投与群では、OVA 30mgとTiO2C 1.88mg(OVA:ナノ酸化チタン重量比=16:1)を懸濁させて経口投与した。Day 1, 25, 43には部分採血し、血清中の抗原特異的IgE、 IgG1、及びIgG2a抗体をELISA法により測定した。Day 49にOVA 50mgを経口投与し、アレルギー反応を惹起した。追加免疫及び惹起時の経口投与後1時間は、マウスの直腸温測定、及び下痢症状の観察を行い、下痢症状については基準に従ってスコアリングした。より大きいナノ酸化チタンの影響に関する検討においても、ほぼ同様に検討を行った。さらに、国際動向の把握については、2020年10月Web開催のFDAのワークショップ(FDA’s NanoDay Virtual Research Symposium)、EFSAのネットワーク会議(2020年10月21-22日、Web会議)に関する調査を実施した。
結果と考察
ラットを用いた28日間反復投与試験では、全ての群で死亡はみられず、体重、一般状態、血液学的検査、および臓器重量に毒性学的に有意な変化は見られなかった。血液生化学的検査では、雌の1000 mg/kg bw/day群でトリグリセリドの有意な増加が見られた。今後、肝臓中のチタン濃度定量、および病理組織学的検査による詳細な検討が必要と考えられる。
抗原経口投与時のナノ酸化チタンの共存による影響について検討したところ、酸化チタンC(アナターゼ型、粒子径6 nm)、及び酸化チタンE(アナターゼ型、粒子径30 nm)が、抗原の経口投与による追加免疫を増強することが示された。一方、酸化チタンF(ルチル型、粒子径30-50 nm)ではこのような増強効果は見られなかった。今後、ナノマテリアルの経皮/経口暴露が免疫応答に与える影響について、粒子径、結晶型、あるいは表面修飾状態等の点も含め、さらなる科学的知見の集積が必要と考えられた。
国際動向の調査では、FDAのナノマテリアルの現状とナノテクノロジーの規制政策やナノテクノロジーにおけるレギュラトリーサイエンス研究の概要およびEFSAの新ガイドライン(2018年)を捕捉するテクニカルガイダンス案について最新情報が得られた。
結論
結晶子径6 nmの100%アナターゼ型ナノサイズ二酸化チタンの90日間反復投与毒性試験では、食品添加物の安全性評価における最高用量である1000 mg/kg bw/dayまでの投与は可能と考えられた。また、ナノマテリアルの経皮/経口暴露が免疫応答に与える影響を規定する要因について、さらなる科学的知見を集積することが必要である。さらに、国際動向についても、引き続き情報収集が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202024044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,523,000円
(2)補助金確定額
16,522,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,264,942円
人件費・謝金 5,354,691円
旅費 0円
その他 1,902,644円
間接経費 0円
合計 16,522,277円

備考

備考
必要な消耗品の購入において端数が発生したため、差額が派生しました。

公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
-