難治性循環器疾患を克服する超小型ナノ神経センサー兼刺激治療装置の開発

文献情報

文献番号
200812003A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性循環器疾患を克服する超小型ナノ神経センサー兼刺激治療装置の開発
課題番号
H18-ナノ・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 厚範(国立循環器病センター研究所 循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉町 勝(国立循環器病センター研究所 循環動態機能部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性心不全では、自律神経異常(交感神経増加・迷走神経低下)が病態を増悪させ、この神経治療が生存率を格段に改善することが実証されている。しかし現存の薬物治療ではこれを治療困難であり、一方、電気的神経医療は連続モニター時間が2-3時間に限定され、また神経束内神経線維を選択刺激できないため内臓機能を個別に治療困難な欠点を有する。
そこで本研究は、自律神経を神経線維高選択的にモニターし且つ刺激できる神経装置の開発を目的とする。
研究方法
ヒト心不全の克服を目指して、MEMS(micro electronics machine system)技術を駆使して、微細な針電極(数10本)を集積化した電極アレイによる、超小型神経センサー兼刺激装置を開発する。
結果と考察
平成18・19年度に試作した装置を基に、平成20年度は、長期間使用に耐えるようMEMS加工によって鍼デバイス部を改良し、さらに、身体活動等による神経・装置のズレや損傷を克服するため、保護チューブ内面に2基の針デバイス(針電極アレイ)を互い違いの方向に固着装填させた新しい神経装置を開発した。これにより、動物の体動が大きくても(非拘束)長期間安定に作動するように、神経機械インターフェイスの耐用性と機能性を改善した。動物実験(ウサギ等)において、簡単な外科手術によって装置を神経に装着して体内へ植え込み、適当な電極の組合せから意図する神経線維の自律神経モニターおよび神経刺激に成功した。また本装置を、循環管理治療と融合した自律神経治療システムを試作構築した。さらに、組織生化学的解析等によって神経障害の有無などを検討し、装置の安全性を裏付けるデータを蓄積した。
結論
超小型の、神経センサー兼刺激治療装置を試作できた。今後の展開として、本装置は自律神経だけではなく、神経全般について、神経機能異常を機械で代替するバイオニック医療に発展するよう期待される。末梢神経障害、痒み、慢性疼痛、耳鳴り、めまい等の難治性神経疾患・感覚器疾患は、多数の患者がこれに苦しんでいるにも関わらず、現在の所、十分にな治療が存在しない状況にある。本装置はテクノロジーをもって神経へ介入し、これら疾患を診断治療する新しい医療に発展する可能性を秘める。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200812003B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性循環器疾患を克服する超小型ナノ神経センサー兼刺激治療装置の開発
課題番号
H18-ナノ・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 厚範(国立循環器病センター研究所 循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉町 勝(国立循環器病センター研究所 循環動態機能部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国は約100万人の慢性心不全患者を有し、各種薬物療法の進歩にも関わらず死亡率は非常に高い。慢性心不全では自律神経異常が、その増悪・治癒に最重要である。しかし、現存のヒト神経医療は、臨床応用を阻む多くの問題や限界がある。まず、神経モニターは1時間程度の交感神経モニターに限定され、また、神経刺激は神経束全体刺激のため目的外の神経線維刺激による副作用(求心性線維刺激による嘔吐等)を回避できない。本研究の目的は、テクノロジーでこの問題を克服する、新しい神経装置を開発することである。
研究方法
MEMS技術を駆使して、多数の微小針電極を集積アレイ化した超小型ナノ神経センサー兼刺激装置を開発した。
結果と考察
タングステン線に安全生体材料(パリレン)を薄膜コートし先端先鋭化したW微小針電極を数10本集積化(電極間隔100μm)して、世界最小レベルの電極アレイ神経装置を開発した。身体活動等による神経装置のズレや損傷を克服するため、神経にはめる保護Siチューブと、この内腔に互い違いの方向に2基の針デバイスを固着装填させた構造とし、耐用性と機能性に優れた神経機械インターフェイスを開発した。
この神経装置の特長は、神経線維高選択性である。動物実験(ウサギ等)において、動物の神経に装着して体内へ植込み、無麻酔意識下の状況で、適当な電極の組合せから腓骨脛骨神経から交感神経活動を選択モニターし(安静時活動およびストレス負荷への反応等)、また頚部迷走神経から迷走神経心臓枝の活動の選択モニターおよび選択刺激に成功した。また本装置を利用して、自律神経機能を閉ループ制御(交感神経緊張迷走神経抑制・交感神経抑制迷走神経緊張など)する動物治療実験にも成功した。一方、組織生化学的解析等によって神経組織障害が少ないことを示した。
結論
超小型神経センサー兼刺激装置を開発できた。これは、難治性循環器疾患の自律神経医療に有用であると思われ、今後の研究の発展や、臨床応用が期待される。さらに、本装置は自律神経だけではなく、神経全般について拡張性と汎用性を有する。難治性運動器疾患・神経疾患・感覚器疾患等を対象に、テクノロジーをもって神経へ介入し、神経機能異常を機械で代替するバイオニック医療に発展する可能性を秘める。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200812003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
MEMS技術を駆使して、多数の微小針電極を集積アレイ化した超小型ナノ神経センサー兼刺激装置を開発した。動物の神経に装着して体内へ植込み、無麻酔意識下の状況で、適当な電極の組合せから腓骨脛骨神経から交感神経活動を選択モニターし、また頚部迷走神経から迷走神経心臓枝の活動の選択モニターおよび選択刺激に成功した。
臨床的観点からの成果
慢性心不全では自律神経異常が、その増悪・治癒に最重要である。しかし、現存のヒト神経医療は、臨床応用を阻む多くの問題や限界がある。まず神経モニターは1時間程度の交感神経モニターに限定され、また神経刺激は神経束全体刺激のため目的外の神経線維刺激による副作用(求心性線維刺激による嘔吐等)を回避できない。本研究は、テクノロジーによってこれらを解決し、新しい神経医療を創出することに繋がる。
ガイドライン等の開発
慢性心不全では自律神経異常が、その増悪・治癒に最重要である。しかし、現存のヒト神経医療は、臨床応用を阻む多くの問題や限界がある。まず神経モニターは1時間程度の交感神経モニターに限定され、また神経刺激は神経束全体刺激のため目的外の神経線維刺激による副作用(求心性線維刺激による嘔吐等)を回避できない。本研究は、テクノロジーによってこれらを解決し、新しい神経医療を創出することに繋がる。
その他行政的観点からの成果
わが国は約100万人の慢性心不全患者を有し、各種薬物療法の進歩にも関わらず死亡率は非常に高い。本研究は、テクノロジーによってこれらを解決し、心不全に対する、新しい神経医療を創出することに繋がり、医療行政や社会福祉に資する。
その他のインパクト
下記の、日経ネットのニュースで報道された。
神経刺激で心不全治療・国立循環器病センター研などが装置試作(2007/12/25)
http://health.nikkei.co.jp/news/med/index.cfm?i=2007122400667hb

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
16件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kamiya A, Kawada T, Yamamoto K, et al.
Upright tilt resets dynamic transfer function of baroreflex neural arc to minify the pressure disturbance in total baroreflex control.
J Physiol Sci. , 58 (3) , 189-198  (2008)
原著論文2
Mizuno M, Kamiya A, Kawada T, et al.
Accentuated antagonism in vagal heart rate control mediated through muscarinic potassium channels.
J Physiol Sci. , 58 (6) , 381-388  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2016-01-28