乳幼児期の玩具使用における健康被害防止に向けた有害性化合物の曝露評価に関する研究

文献情報

文献番号
202024032A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児期の玩具使用における健康被害防止に向けた有害性化合物の曝露評価に関する研究
課題番号
20KA3001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 加奈江(戸次 加奈江)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 江口 哲史(千葉大学 予防医学センター)
  • 高口 倖暉(千葉大学 予防医学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,011,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、子供の成長や健康影響に対する化学物質曝露の影響が着目されている。特に柔軟性や難燃性のある合成樹脂やゴム製品には多くの可塑剤・難燃剤が使用されており、これらを原材料とする乳幼児用玩具は、小児が日常生活を送る上でも接触頻度が非常に高く、乳幼児においては化学物質に対する特異的な曝露機会となるものと考えられる。実際、国内では可塑剤6成分(DBP、BBP、DEHP、DNOP、DINP、DIDP)の使用規制が設けられているが、その一方では、代替成分や未規制化合物の使用も年々増加してきている。そこで本研究では、国内に普及する乳幼児用玩具を対象に、規制及び未規制の可塑剤/難燃剤の含有量を調べることで、玩具を介した乳幼児への化学物質曝露の可能性を調べるための基礎データを得ることとした。
研究方法
フタル酸エステル類は、玩具製品中で規制対象とされる6成分を含む9種類のフタル酸エステル類と7種類の代替成分(DBP、BBP、DEHP、DNOP、DINP、DIDP、DIBP、DMP、DEP、DCHP、DEHA、DINA、ATBC、DINCH、DBSb、TOTM)を対象とし、リン系難燃剤は、生活用品や建材の材料として使用され、環境中で比較的高濃度検出されることが多い14成分(TMP、TEP、TPP、TIBP、TBOEP、TCEP、TEHP、TCEP、TCIPP、TDCIPP、TPHP、TCsP、EHDPhP、CsDPhP)を対象とした。フタル酸エステル類とリン系難燃剤の分析は、いずれも液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)により分析した。このとき、対象とした玩具製品は、それぞれ凍結粉砕により粉砕したものをアセトニトリルで超音波抽出し、抽出液をフィルター処理した後、濃縮し分析に供した。臭素系難燃剤については、粉砕した試料をトルエンで超音波抽出した後、抽出液の一部をヘキサン5 mLに添加し、44%硫酸シリカゲルを2 g添加し振とうした。これを遠心分離し、上清のヘキサン溶液をバイアルに分取し、窒素吹付けにより濃縮した後、四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)で分析した。
結果と考察
フタル酸エステル類は、対象とした成分の殆どがいずれかの玩具から検出され、中でもDBP(80%)とDINCH(67%)の検出率が比較的高い傾向にあった。これらは中国製の製品から多く検出される等、生産国の違いによる影響も見られた。一方で、EU規制に基づくデンマーク製の玩具では、殆どの成分が検出限界以下であったものの、乳幼児用のままごと用品からDEHPが高濃度検出された。リン酸エステル類についても、中国製の玩具から比較的高濃度検出され、以下の4成分(TPHP、EFDPP、TIBP、TEHP)については、検出頻度についても中国製のもので高かった。また、製造年代の違いによっても組成に違いが見られ、検出された一部の成分を除き、殆どの成分が年代の経過と共に含有量が減少する傾向にあった。
結論
本研究結果において、製品ごとに検出された成分の組成や各成分の濃度が異なる背景には、可塑剤・難燃剤に関する各国での規制状況の違いや年代ごとに使用される原材料の使用状況が大きく影響しているものと推測された。このような製品が国内で出回っている実態からも、実際の子供への曝露実態を明らかとし、リスクの低減に向けた今後の見直しが必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-10-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202024032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,011,000円
(2)補助金確定額
3,011,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,909,564円
人件費・謝金 94,815円
旅費 0円
その他 7,260円
間接経費 0円
合計 3,011,639円

備考

備考
物品の購入手数料として639円が補助金確定額を超過した。そのため、639円については自己負担とした。

公開日・更新日

公開日
2022-07-01
更新日
-