食品中の放射性物質濃度の基準値に対する放射性核種濃度比の検証とその影響評価に関する研究

文献情報

文献番号
202024012A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質濃度の基準値に対する放射性核種濃度比の検証とその影響評価に関する研究
課題番号
H30-食品-指定-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
明石 真言(茨城県竜ケ崎保健所)
研究分担者(所属機関)
  • 青野 辰雄(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所 福島再生支援本部 環境動態研究チーム)
  • 高橋 知之(京都大学原子炉実験所)
  • 塚田 祥文(福島大学 環境放射能研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
14,464,000円
研究者交替、所属機関変更
・所属機関異動 研究代表者 明石真言 茨城県竜ヶ崎保健所→ 東京医療保健大学(令和2年8月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
東京電力福島第一原子力発電所(FDNPS)事故により食品の摂取による内部被ばくが懸念された。厚生労働省は平成24年4月以降、食品からの内部被ばくを年間1 mSvとして導出された新たな基準値を適用した。内部被ばく線量に対する放射性Csおよびその他の核種の寄与率は、環境モニタリングや、これまでの環境移行パラメータによって推定されており、その評価は十分安全側と考えられるが、実際に食品中濃度を測定した結果に基づくものではない。そこで食品中の放射性物質の基準値に対して、国民が安心・安全を得ることができること、そして国内の食品の安全に関する根拠を示すことを目的に、食品中の放射性物質の基準値の妥当性について検証や食品中に含まれる放射性物質の濃度等に関する科学的知見の集約を行った。
研究方法
福島県内、周辺地域と比較対象地域における玄米中の放射性Cs、Sr-90及びI-129の濃度測定を行い、これまでに求めたデータと比較・検証した。また福島県内に流通する水産物を入手し、これら水産物の放射性物質の濃度測定を行った。福島海域で採取され市場流通する魚介類中の放射性物質濃度を測定し、現行の基準値によって食品中の放射性物質について安全性が十分に確保されているかを確認した。この3年間で得られた農作物中濃度データを用いて、農作物摂取による年間内部被ばくの線量推定を行った。また食品中放射性物質濃度の知見に関する評価検討のための資料について取りまとめを行った。
結果と考察
福島県浜通りで採取した玄米中の放射性Cs濃度は2 Bq/kg-生重量を下回り、基準値を十分に下回っていた。Sr-90濃度は0.1 Bq/kg-生重量を下回り、大気圏核実験由来と考えられる。I-129濃度は0.01 mBq/kg-生重量以下で、Cs-137濃度に比べ6桁以上低い値であった。農作物摂取に起因するCs-137による年間内部被ばく線量推定値は、最も高いもので、福島県浜通りの13-18歳の男子の年間0.0029 mSvであった。本評価では摂取される農作物の半分を当該地域の生産物と仮定しているが、実際にはより広範囲から購入されること、また調理加工に伴う放射性セシウム濃度の減少を考慮していないことなど、安全側の評価を行っており、実際の被ばく線量はより小さいと考えられる。Sr-90による被ばく線量は、性別年齢区分によって異なるが、年間0.0001mSv前後であり、この線量のほとんどが大気圏核実験由来と考えられる。I-129による被ばく線量推定値が最も高かったのは、福島県浜通りの7~12歳女子の年間0.00000077 mSvであった。なお、年間内部被ばく線量推定値のI-129/Cs-137比の最大値は0.00060であり、農作物摂取に起因するI-129による被ばく線量は、放射性Cs による被ばく線量に比べ十分に低いことが示唆された。福島相双海域の市場流通する5種の魚介類可食部中のCs-134は検出下限値以下で、Cs-137濃度(加重平均)範囲は<0.1-0.4 Bq/kg-生重量であった。海産魚類中のCs-137濃度に対するSr-90濃度の割合は、0.2-1%程度であった。さらにPu-239+240濃度は検出下限値以下であった。食品中放射性物質濃度の規制値等に関する資料を整理・解析し、資料にまとめたが、その濃度の基準や規制の設定に関わる詳細な解説は見当たらなかった。
結論
FDNPS事故由来に起因する玄米中放射性Cs濃度は基準値を大きく下回った。また、農作物摂取に年間内部被ばく線量は、Sr-90及びI-129の寄与を考慮しても、年間1 mSvの1/1000程度であり、現行の基準値によって食品中の放射性物質について安全性が十分に確保されていることを確認した。なお、事故に起因するSr-90の寄与は極めて小さく、放射性Cs以外の放射性核種の寄与を安全側に考慮した放射性Csに対する基準値の算定値は妥当であり、I-129による被ばく線量も年間1 mSvに比べて十分に小さく、放射性Csによる被ばく線量に比べても十分低いことが確認された。食品中放射性物質濃度の知見に関する調査において、食品のカテゴリーや消費量に関する情報は食品項目や地域等の要因で差があることから安全側に設定されていたが、汚染食品の割合に関する根拠については明確なものがなかった。

公開日・更新日

公開日
2021-12-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-12-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202024012B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中の放射性物質濃度の基準値に対する放射性核種濃度比の検証とその影響評価に関する研究
課題番号
H30-食品-指定-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
明石 真言(茨城県竜ケ崎保健所)
研究分担者(所属機関)
  • 青野 辰雄(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所 福島再生支援本部 環境動態研究チーム)
  • 高橋 知之(京都大学原子炉実験所)
  • 塚田 祥文(福島大学 環境放射能研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
・所属機関異動 研究代表者 明石真言 茨城県竜ヶ崎保健所→ 東京医療保健大学(令和2年8月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
東京電力福島第一原子力発電所(FDNPS)事故により食品の摂取による内部被ばくが懸念された。厚生労働省は平成24年4月以降、食品からの内部被ばくを年間1 mSvとして導出された新たな基準値を適用した。内部被ばく線量に対する放射性Csおよびその他の核種の寄与率は、環境モニタリングや、これまでの環境移行パラメータによって推定されており、その評価は十分安全側と考えられるが、実際に食品中濃度を測定した結果に基づくものではない。そこで食品中の放射性物質の基準値に対して、国民が安心・安全を得ることができること、そして国内の食品の安全に関する根拠を示すことを目的に、食品中の放射性物質の基準値の妥当性について検証や食品中に含まれる放射性物質の濃度等に関する科学的知見の集約を行った。
研究方法
福島県内、周辺地域と比較対象地域における作物中の放射性Cs、Sr-90及びI-129の濃度測定を行い、これまでに求めたデータと比較・検証した。また福島県内に流通する水産物を入手し、これら水産物の放射性物質の濃度測定を行った。福島海域で採取され市場流通する魚介類中の放射性物質濃度を測定し、現行の基準値によって食品中の放射性物質について安全性が十分に確保されているかを確認した。農作物摂取による年間内部被ばくの線量推定を行った。また食品中放射性物質濃度の知見に関する評価検討のための資料について取りまとめを行った。
結果と考察
作物中放射性Cs濃度は、浜通りと中通りで採取した作物で他地域より若干高い値であったが、基準値を大きく下回る値(最も高い値は浜通りで採取した玄米:2.0 Bq/kg-生重量)であった。福島県内で採取した作物中Sr-90濃度は0.1 Bq/kg-生重量以下であり、福島県以外から採取された作物中濃度と同様であった。浜通りで採取した作物中のI-129濃度は、他地域より高い値であったが、作物中Cs-137濃度より6桁以上低い濃度であった。農作物摂取に起因するCs-137による年間内部被ばく線量推定値は、最も高い福島県浜通りの13-18歳の男子でも年間0.0029 mSvであった。本評価では摂取される農作物の半分を当該地域の生産物と仮定しているが、実際にはより広範囲から購入されること、また調理加工に伴う放射性セシウム濃度の減少を考慮していないことなど、安全側の評価を行っており、実際の被ばく線量はより小さいと考えられる。Sr-90による被ばく線量は、性別年齢区分によって異なるが、年間0.0001mSv前後であり、この線量のほとんどが大気圏核実験由来と考えられる。I-129による被ばく線量推定値が最も高かったのは、福島県浜通りの7~12歳女子の年間0.00000077 mSvであった。なお、年間内部被ばく線量推定値のI-129/Cs-137比の最大値は0.00060であり、農作物摂取に起因するI-129による被ばく線量は、放射性Cs による被ばく線量に比べ十分に低いことが示唆された。福島相双海域の市場流通する5種の魚介類可食部中のCs-137濃度(加重平均)範囲は<0.1-0.4 Bq/kg-生重量であった。魚類アラ部中のSr-90濃度を測定し、魚類(全身)中のSr-90濃度を推定したが、海産魚類(全体)中のCs-137濃度に対するSr-90濃度の割合は、0.2-1%程度であった。さらに魚類ではPuは内臓部に濃縮されやすいため、魚類内臓部中のPu-239+240濃度の測定を行なったが、魚類全身中のPu-239+240濃度に換算すると、検出下限値以下であった。食品中放射性物質濃度の規制値等に関する資料を整理・解析し、資料にまとめたが、その濃度の基準や規制の設定に関わる詳細な解説は見当たらなかった。
結論
 FDNPS事故由来に起因する年間内部被ばく線量は、Sr-90及びI-129の寄与を考慮しても、年間1 mSvの1/1000程度であり、現行の基準値によって食品中の放射性物質については、安全性が十分に確保されていることを確認した。なお、事故に起因するSr-90の寄与は極めて小さく、放射性Cs以外の放射性核種の寄与を安全側に考慮した放射性Csに対する基準値の算定値は妥当であり、I-129による被ばく線量も年間1 mSvに比べて十分に小さく、放射性Csによる被ばく線量に比べても十分低いことが確認された。食品中放射性物質濃度の知見に関する調査において、食品のカテゴリーや消費量に関する情報は食品項目や地域等の要因で差があることから安全側に設定されていたが、汚染食品の割合に関する根拠については明確なものがなかった。

公開日・更新日

公開日
2023-09-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-09-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202024012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
一般の食品の放射性物質濃度モニタリングはほとんどが検出値以下であり、また放射性Cs以外の放射性核種についても情報がほとんどない。食品中の放射性物質の基準値である放射性Cs濃度100Bq/kgに含まれるSr-90、Pu同位体やI-129について、食品中の濃度を示し、その食品を摂取した場合の内部被ばく線量について推計を行った。さらに汚染食品の割合やトリチウムに関する情報を調査した。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
ワークショップやセミナーで12件の講演を行い、国内のみならず国外にも食品中基準値に対する正確な情報の発信に努めた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
28件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
202024012Z