香料等の遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験法の開発と、その標準的安全性評価法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
202024007A
報告書区分
総括
研究課題名
香料等の遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験法の開発と、その標準的安全性評価法の確立に関する研究
課題番号
H30-食品-一般-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 増村 健一(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 今井 俊夫(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究所 動物実験部門)
  • 戸塚 ゆ加里(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所・がんモデル開発部門)
  • 落合 雅子(静岡県立大学食品環境科学研究院)
  • 三好 規之(静岡県立大学 食品栄養科学部)
  • 筆宝 義隆(千葉県がんセンター研究所 発がん制御研究部)
  • 平田 暁大(国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学 応用生物科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
33,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
I. 本研究では、香料化学物質の安全性をin silico、in vitro、in vivoで階層的に評価する評価系を構築し、食品香料の効率的かつ信頼性の高い安全性評価の推進に資することを目的とする。II. また、マウスオルガノイド系を用いる遺伝毒性・発がん性短中期試験法としての条件設定を行い、多施設で実施可能な標準法の確立を目指す。
研究方法
I. 香料のAmes試験データベースの拡充と堅牢化を進めた。また、機械学習による独自のQSARモデルを開発した。Ames試験陽性である非発がん性化学物質を用いて、TK6アッセイを実施し、トキシコプロテオミクス分析を行った。アクリルアミド(AA)を投与したgpt deltaマウス組織のDNA付加体量と突然変異体頻度の用量相関性を検討した。レポーター遺伝子をホモに持つ新規gpt deltaラットを用いた変異原性試験を評価した。gpt deltaラットを用いたacetamideの一般毒性・遺伝毒性・発がん性短期包括試験法による評価を実施した。3-acetyl-2,5-dimethylfuranの遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験を実施した。
II. gpt deltaマウス由来の肺オルガノイドを用いて、AAによる変異頻度の上昇に対する変異スペクトルの解析を行った。C57BL背景のTrp53ホモ/ヘテロ欠失と野生型マウスの肺および肝臓(胆管)からオルガノイドを調製し、メチルニトロソ尿素(MNU)とアセトアミドの低・高濃度で処置し、ヌードマウス皮下に移植して病理組織学的に評価した。胃については、Trp53欠失、Trp53/Apc二重欠失オルガノイドに対する7,12-ジメチルメンズ[a]アントラセン(DMBA)の影響を解析した。
結果と考察
I.香料に特化したローカルQSARモデル(Star Drop)は他の商業QSARモデルよりも優れたパフォーマンスを示した。TK変異試験は、Ames陽性結果のフォローアップとして一定程度有効であることを示した。AA投与マウスにおいてDNA付加体形成と遺伝子突然変異誘発が異なる用量反応性を示した。新規gpt deltaラットはin vivo遺伝子突然変異試験として有用であることが示唆された。acetamideの包括的評価法は肝発がん性評価に有効であり、染色体異常が肝発がんに寄与していることが示唆された。3-acetyl-2,5-dimethylfuranは、ラット肝臓において変異原性を示し、GST-P陽性細胞巣の増加が認められたことから、肝発がん性を有する可能性が示された。。
II. オルガノイド試験系は、基幹施設でのバンク化と多施設への安定的輸送により普及可能であると考えられた。gpt deltaマウス由来のオルガノイドは、既存のin vitro試験法を補完する発がん性予測試験に適用可能であることが示唆された。発がん性試験法としての条件設定に関して、肝臓(胆管)オルガノイドは、Trp53 ヘテロノックアウトまたは野生型マウスで高感受性であったが、肺オルガノイドについてはマウスの背景系統についての課題が残った。動物モデルで低感受性の胃発がんについては、がん関連遺伝子変異と陽性対照物質の組合せによるオルガノイドの発がん促進を確認し、その有用性が示された。
結論
I. 香料Ames試験データベースを構築し、商業モデルよりも優れた予測性を示す可能性のあるローカルQSARモデルを開発した。プロテオミクス技術とTK6アッセイの統合は、Ames試験のフォローアップにおいて有用と考えられた。AA投与マウスの肝臓におけるDNA付加体と突然変異は異なる用量相関性を示した。レポーター遺伝子回収効率が高い新規gpt deltaラットはin vivo変異原性試験に有用であることを示した。Acetamideの肝発がん性には肝臓選択的に生じる染色体異常が寄与すると考えられ、包括試験により発がん性評価も可能であることを確認した。3-acetyl-2,5-dimethylfuranはラット肝臓において変異原性を示し、肝前がん病変であるGST-P陽性細胞巣の有意な増加が認められたことから、ラット肝発がん性を有する可能性が示唆された。
II. オルガノイドの凍結輸送が安定的であることを確認した。遺伝毒性については、陽性対照物質による変異スペクトルがin vivo試験の結果と矛盾しないことを確認した。発がん性についてはマウス系統差を検討し、肝臓(胆管)オルガノイドでは、陽性対照物質への感受性がTrp53 ヘテロノックアウトまたは野生型マウスで高かった。動物モデルで低感受性の胃発がんについては、がん関連遺伝子変異と陽性対照物質の組合せによるオルガノイドの発がん促進を確認した。

公開日・更新日

公開日
2023-04-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-10-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202024007B
報告書区分
総合
研究課題名
香料等の遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験法の開発と、その標準的安全性評価法の確立に関する研究
課題番号
H30-食品-一般-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 増村 健一(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 今井 俊夫(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究所 動物実験部門)
  • 戸塚 ゆ加里(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所・がんモデル開発部門)
  • 落合 雅子(静岡県立大学食品栄養環境科学研究院)
  • 三好 規之(静岡県立大学 食品栄養科学部)
  • 筆宝 義隆(千葉県がんセンター研究所 発がん制御研究部)
  • 平田 暁大(国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学 応用生物科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
I.本研究では、香料化学物質の安全性をin silico、in vitro、in vivoで階層的に評価する評価系を構築し、食品香料の効率的かつ信頼性の高い安全性評価の推進に資することを目的とする。II.また、マウスオルガノイド系を用いる遺伝毒性・発がん性短中期試験法としての条件設定を行い、多施設で実施可能な標準法の確立を目指す。
研究方法
I. 香料のAmes試験データベースの拡充と堅牢化を進めた。また、機械学習による独自のQSARモデルを開発した。突然変異試験で相反する結果を示す物質についてTK6アッセイを実施した。アクリルアミド(AA)を投与したgpt deltaマウス組織のDNA付加体量と突然変異体頻度の用量相関性を検討した。レポーター遺伝子をホモに持つ新規gpt deltaラットの評価を実施した。gpt deltaラットを用いたacetamideの一般毒性・遺伝毒性・発がん性短期包括試験法による評価を実施した。3-acetyl-2,5-dimethylfuranの遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験を実施した。
II. マウス正常組織由来オルガノイドに対するin vitroでの被験物質暴露による遺伝毒性試験および発がん性試験の妥当性検証を行った。肺および肝臓(胆管)オルガノイドを用いて、遺伝毒性発がん物質、非遺伝毒性発がん物質および非発がん物質の検討を行った。オルガノイド培養および被験物質暴露法について標準操作手順書を作成し、多施設で実施可能であることを確認した。マウス胃由来オルガノイドの樹立と化学発がんの解析を行った。
結果と考察
I.香料に特化したローカルQSARモデル(Star Drop)は他の商業QSARモデルよりも優れたパフォーマンスを示した。TK変異試験は、Ames陽性結果のフォローアップとして一定程度有効であることを示した。AA投与マウスにおいてDNA付加体形成と遺伝子突然変異誘発が異なる用量反応性を示した。新規gpt deltaラットはin vivo遺伝子突然変異試験として有用であることが示唆された。acetamideの包括的評価法は肝発がん性評価に有効であり、染色体異常が肝発がんに寄与していることが示唆された。3-acetyl-2,5-dimethylfuranは、ラット肝臓において変異原性を示し、GST-P陽性細胞巣の増加が認められたことから、肝発がん性を有する可能性が示された。。
II. オルガノイド試験系は、基幹施設でのバンク化と多施設への安定的輸送により普及可能であると考えられた。gpt deltaマウス由来のオルガノイドは、既存のin vitro試験法を補完する発がん性予測試験に適用可能であることが示唆された。発がん性試験法としての条件設定に関して、肝臓(胆管)オルガノイドは、Trp53 ヘテロノックアウトまたは野生型マウスで高感受性であったが、肺オルガノイドについてはマウスの背景系統についての課題が残った。動物モデルで低感受性の胃発がんについては、がん関連遺伝子変異と陽性対照物質の組合せによるオルガノイドの発がん促進を確認し、その有用性が示された。
結論
I. 香料Ames試験データベースを構築し、商業モデルよりも優れた予測性を示す可能性のあるローカルQSARモデルを開発した。プロテオミクス技術とTK6アッセイの統合は、Ames試験のフォローアップにおいて有用と考えられた。AA投与マウスの肝臓におけるDNA付加体と突然変異は異なる用量相関性を示した。レポーター遺伝子回収効率が高い新規gpt deltaラットはin vivo変異原性試験に有用であることを示した。Acetamideの肝発がん性には肝臓選択的に生じる染色体異常が寄与すると考えられ、包括試験により発がん性評価も可能であることを確認した。3-acetyl-2,5-dimethylfuranはラット肝臓において変異原性を示し、肝前がん病変であるGST-P陽性細胞巣の有意な増加が認められたことから、ラット肝発がん性を有する可能性が示唆された。
II. オルガノイドの凍結輸送が安定的であることを確認した。遺伝毒性については、陽性対照物質による変異スペクトルがin vivo試験の結果と矛盾しないことを確認した。発がん性についてはマウス系統差を検討し、肝臓(胆管)オルガノイドでは、陽性対照物質への感受性がTrp53 ヘテロノックアウトまたは野生型マウスで高かった。動物モデルで低感受性の胃発がんについては、がん関連遺伝子変異と陽性対照物質の組合せによるオルガノイドの発がん促進を確認した。

公開日・更新日

公開日
2021-10-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202024007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
香料化学物質の安全性をin silico、in vitro、in vivoで階層的に評価する評価系の構築を目指し、香料Ames試験データベースを整備するとともにローカルQSARモデルを開発した。一般毒性・遺伝毒性・発がん性の包括試験による評価を実施した。マウスオルガノイド系を用いる遺伝毒性・発がん性短中期試験法としての技術基盤を構築し、多施設で実施可能な標準法の条件設定を行った。
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
食品香料遺伝毒性データベースの作成
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
31件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
6件
学会発表(国内学会)
56件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Honma M, Yamada M, Yasui M, Horibata K et al
In vivo and in vitro mutagenicity of perillaldehyde and cinnamaldehyde.
Genes Environ , 43 (30) , 1-11  (2021)
doi.org/10.1186/s41021-021-00204-3
原著論文2
Kasamatsu T, Kitazawa A, Tajima S et al
Development of a new quantitative structure-activity relationship model for predicting Ames mutagenicity of food flavor chemicals using StarDrop™ auto-Modeller™
Genes Environ , 43 (16) , 1-17  (2021)
doi.org/10.1186/s41021-021-00182-6
原著論文3
Honma M, Yamada M, Yasui M et al
Genotoxicity assessment of food-flavoring chemicals used in Japan
Toxicology Reports , 9 , 2008-2012  (2022)
doi.org/10.1016/j.toxrep.2022.04.026
原著論文4
Grúz P, Yasui M, Ukai A, Horibata K, Honma M, Sugiyama KI.
Potent mutagenicity of an azide, 3-azido-1,2-propanediol, in human TK6 cells.
Mutat Res Genet Toxicol Environ Mutagen  (2022)
10.1016/j.mrgentox.2022.503475.

公開日・更新日

公開日
2021-05-26
更新日
2023-06-20

収支報告書

文献番号
202024007Z