新たなバイオテクノロジーを用いて得られた食品の安全性確保とリスクコミュニケーションのための研究

文献情報

文献番号
202024004A
報告書区分
総括
研究課題名
新たなバイオテクノロジーを用いて得られた食品の安全性確保とリスクコミュニケーションのための研究
課題番号
H30-食品-一般-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 望(大阪府立大学生命環境科学研究科)
  • 早川 英介(沖縄科学技術大学院大学 進化神経生物学ユニット)
  • 竹内 一郎(名古屋工業大学 情報工学専攻)
  • 木下 政人(京都大学 農学研究科)
  • 為広 紀正(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 吉場 聡子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
31,915,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゲノム編集技術を利用した作物(ゲノム編集作物)から作られる新たな食品の研究開発が国内外で活発に行なわれている。ゲノム編集食品の届出制度が10月に開始となり食品衛生法上の取扱いも明確化された。安全性確認を科学的なエビデンスをもって行うための手法開発整備も重要な課題である。本研究では、種々の手法による遺伝子改変の影響、ゲノム編集作物の開発状況や規制状況の情報収集を行い施策に反映するとともに、安全性確認で必要な項目や問題点を明らかにする。また、ゲノム編集技術や合成生物学など新たなバイオテクノロジー技術を用いた新開発食品の安全性を確認するために必要な新たな手法の開発検討を行う。ゲノム編集食品に対する国民理解の促進のためにリスクコミュニケーション、パンフレット作製を行う。
研究方法
本研究では、必要な情報収集を行うとともに、ゲノム編集/合成生物学技術を利用した食品等の安全性確認、評価に必要とされる手法の開発整備行い、規制評価など厚生労働行政に役立てることを目的として実施する。
結果と考察
・リスクコミュニケーション:一般モニターのゲノム編集食品に対する意識は概して賛成でも反対でもなく「様子見」という態度が見て取れた。また科学リテラシーとKDS(Knowledge Different Score)の間には明らかな相関はなく科学リテラシーの向上が必ずしもゲノム編集食品の受容につながるとは言えない結果となった。パス解析の結果、ゲノム編集食品の受容に大きな影響を及ぼす因子としてはゲノム編集作物と既存の農作物の間に本質的な違いが無いことの理解が考えられた。
・技術と開発情報収集、アレルゲンの分解性、網羅的解析による潜在的オフターゲット部位解析手法の開発:SITE-seq法を改良した解析環境のGalaxyツール開発を行い、イネの解析に用いた。本方法で検出された意図しない変化をin vivoで確認を行ったところ、現在ある5種のオンライ検索で検出できないオフターゲットの検出に有効であることを明らかにした。
・メタボロームインフォマティクスによる未知化合物推定:LC-MSを用いたノンターゲット分析のデータ解析法として、スペクトル類似度を用い、非常に幅広い化合物クラスに対応し、毒性情報も統合した他に類を見ない未知化合物解析プラットフォームが構築された。
人工知能を用いたアレルゲン性評価のためのアルゴリズム開発 :アレルゲン特異的アミノ酸配列を誤検出なく同定するためのデータベース構築をさまざまなモデルを検討しながら行った。既存の方法と比べても予測性能の高い方法を構築することができた。・ゲノム編集生物作製における解析と規制の進め方:ゲノム編集トラフグ(lepr)にフグ毒(テトロドトキシン)を経口投与し体内分布を検討した結果、骨格筋・皮・精巣では蓄積されなかった。ゲノム編集トラフグ(lepr) に食品学的問題は少ないと考えられた。


結論
リスクコミュニケーションによる国民理解の促進のための意識調査から特別な懸念を持っていないことが伺えた。ゲノム解析、代謝物解析、および、新規アレルゲン性について、意図しない変化を捉える手法の検討行い、新たな手法を開発できた。今後は、一般の人が活用できるように公開していく。

公開日・更新日

公開日
2021-10-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202024004B
報告書区分
総合
研究課題名
新たなバイオテクノロジーを用いて得られた食品の安全性確保とリスクコミュニケーションのための研究
課題番号
H30-食品-一般-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 小泉 望(大阪府立大学生命環境科学研究科)
  • 有田 正規(東京大学 大学院理学系研究科)
  • 竹内 一郎(名古屋工業大学 情報工学専攻)
  • 早川 英介(沖縄科学技術大学院大学 進化神経生物学ユニット)
  • 木下 政人(京都大学 農学研究科)
  • 為広 紀正(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第五室)
  • 吉場 聡子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゲノム編集技術を利用した作物(ゲノム編集作物)から作られる新たな食品の研究開発が国内外で活発に行なわれている。ゲノム編集食品の届出制度が10月に開始となり食品衛生法上の取扱いも明確化された。安全性確認を科学的なエビデンスをもって行うための手法開発整備も重要な課題である。本研究では、種々の手法による遺伝子改変の影響、ゲノム編集作物の開発状況や規制状況の情報収集を行い施策に反映するとともに、安全性確認で必要な項目や問題点を明らかにする。また、ゲノム編集技術や合成生物学など新たなバイオテクノロジー技術を用いた新開発食品の安全性を確認するために必要な新たな手法の開発検討を行う。ゲノム編集食品に対する国民理解の促進のためにリスクコミュニケーション、パンフレット作製を行うとともに、消費者の意識調査を行う。
研究方法
リスクコミュニケーションに関する研究では、パンフレット作製、またNBTに関する正しい理解と判断を促すための新たなコンテンツについても検討した。
ゲノム編集技術を用いた動植物の研究開発動向調査およびアレルゲン分解性の検討した。
人工ヌクレアーゼの特異性を調べるin vitroアッセイツールのWeb環境開発を行った。
質量分析インフォマティクスによる化合物同定では、データベースの構築を行いゲノム編集食品に適用して有用性を検討した。
アレルゲンデータベースADFSのアップデート、および、人工知能を用いたアレルゲン性評価のためのアルゴリズム開発では、DB内容の更新、セキュリティー対策を行った。データセット(アレルゲンデータと非アレルゲンデータ)を用いてアレルゲンにのみ出現し、非アレルゲンには一度も出現しないアミノ酸のモチーフ配列を抽出した。このモチーフデータを利用して、アレルゲン性判定・予測システムを検討した。
ゲノム編集生物作製における現象解析と規制の進め方では、ゲノム解析、アレルゲン性、メタボローム解析、ラット短期毒性試験を行って、総合的に解析を実施して、そのデータについて食品安全性の評価法への提言となることを念頭に考察した。
結果と考察
・リスクコミュニケーション:一般モニターのゲノム編集食品に対する意識は概して賛成でも反対でもなく「様子見」という態度が見て取れた。また科学リテラシーとKDS(Knowledge Different Score)の間には明らかな相関はなく科学リテラシーの向上が必ずしもゲノム編集食品の受容につながるとは言えない結果となった。パス解析の結果、ゲノム編集食品の受容に大きな影響を及ぼす因子としてはゲノム編集作物と既存の農作物の間に本質的な違いが無いことの理解が考えられた。
・技術と開発情報収集、アレルゲンの分解性、網羅的解析による潜在的オフターゲット部位解析手法の開発:SITE-seq法を改良した解析環境のGalaxyツール開発を行い、イネの解析に用いた。本方法で検出された意図しない変化をin vivoで確認を行ったところ、現在ある5種のオンライ検索で検出できないオフターゲットの検出に有効であることを明らかにした。
・メタボロームインフォマティクスによる未知化合物推定:LC-MSを用いたノンターゲット分析のデータ解析法として、スペクトル類似度を用い、非常に幅広い化合物クラスに対応し、毒性情報も統合した他に類を見ない未知化合物解析プラットフォームが構築された。
人工知能を用いたアレルゲン性評価のためのアルゴリズム開発 :アレルゲン特異的アミノ酸配列を誤検出なく同定するためのデータベース構築をさまざまなモデルを検討しながら行った。既存の方法と比べても予測性能の高い方法を構築することができた。・ゲノム編集生物作製における解析と規制の進め方:ゲノム編集トラフグ(lepr)にフグ毒(テトロドトキシン)では、ゲノム解析、メタボローム解析などにより意図しない変化が起きていないことを示した。また、毒成分テトロドトキシンを経口投与し体内分布を検討した結果、骨格筋・皮・精巣では蓄積されなかった。ゲノム編集トラフグ(lepr) に食品学的問題は少ないと考えられた。
結論
リスクコミュニケーションによる国民理解の促進のための意識調査から他の農産物と変わらず特別な懸念を持っていないことが伺えた。ゲノム解析、代謝物解析、および、新規アレルゲン性について、意図しない変化を捉える手法の検討行い、それぞれの分野で新たな手法を開発できた。今後は、一般の人が活用できるようにウェブツールとして公開していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-10-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202024004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
遺伝子改変技術で作成された生物の、意図しない変化を検出するための新たなゲノム解析、代謝物解析、アレルゲン性予測手法を開発した。これを一般に広く使用できるようなwebツールへ拡張することで、皆が精度の高い解析が可能になり、安全性の確認の確実性を上げることができる。
臨床的観点からの成果
臨床研究ではないため省略
ガイドライン等の開発
今後作成していく
その他行政的観点からの成果
ゲノム編集技術など新しい技術を、食品の作製に用いた場合の安全性評価のための標準的なツールとして活用することで、データの信頼性が確保できる。その結果、評価が確かなもろとできる可能性がある。
その他のインパクト
ゲノム編集技術など新しい技術を、食品の作製に用いた場合の安全性評価のための標準的なツールとして活用することで、データの信頼性が確保できることは、一般に解析環境が整っていない現状、事業者が必ずしもゲノム解析等に精通しているわけではないことを今日呂して、標準的な解析ツールが存在することは重要である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
202024004Z