食品に残留する農薬管理における方法論の国際整合に関する研究

文献情報

文献番号
202024003A
報告書区分
総括
研究課題名
食品に残留する農薬管理における方法論の国際整合に関する研究
課題番号
H30-食品-指定-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 友紀子(農林水産省大臣官房)
  • 登田 美桜(国立医薬品食品衛生研究所  安全情報部第三室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,457,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、わが国における最大残留基準値(MRL)設定の国際整合の強化及び不整合な状態への回帰の防止を目的とし、FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)による最新の評価やその結果及び課題から背景となる科学的考察を明らかにし、その結果に基づいて、開発済みのMRL設定ガイドの更新を検討する。示唆に富んだJMPR評価書を選定し、その翻訳と解析並びに解説を行い、わが国の評価担当者の能力向上に資する文書を開発する。また、MRL設定に必要な評価における検討事項とデータへの要件を明確に示した新たなガイドラインの厚生労働省による策定を支援する。
研究方法
JMPRにより発行された報告書(Report)並びに評価書(Evaluation)やCCPR(Codex残留農薬部会)における議論、及び国内における現在あるいは今後のMRL設定に関する優先度を総合的に勘案し、検討対象とする農薬を決定した。検討対象とした農薬のJMPR評価書を正確に翻訳するとともに、原理・原則に関する留意点等を踏まえた解説を訳注として加えた。また、下記する新たなガイドライン活用の際の参考となるOECDガイドライン等を選定し、科学的観点から誤りのないように忠実に翻訳した。JMPR報告書によって報告されたWHOパネルの検討課題を抽出し、それらの特定の背景や議論の経緯などの周辺情報も含めて調査し、要点をまとめた。開発済みのMRL設定ガイドが参照するFAOマニュアルや、OECDガイドライン等の関連文書を活用し、かつわが国固有の事情も考慮し、厚生労働省が検討した原案に加筆修正等並びに解説を行うことで新たなMRL設定ガイドラインの策定を検討した。
結果と考察
2017年に公開されたオキサミルを対象としたJMPR評価書が検討対象として選定し、正確な翻訳と解説が加えられた。本検討を通じて、作物残留試験においてLODの値しか取得されなかった場合の各種推定値の算出方法に対するJMPRの考え方等の重要事項を具体的に示すことができた。厚生労働省が策定する新たなガイドラインにも関連する文書として、分析法と加工試験に関するOECDガイドライン等を特定し翻訳した。また、MRL設定ガイドの更新検討については、厚生労働省による一元的な活用が期待される新たなMRL設定ガイドライン案が本研究の分担課題の成果として作成されたことも踏まえ、中止が適当と考えられた。
FAOマニュアルにも示されているJMPRの方法論を主な参考にし、それをわが国の制度に整合するように調整するとともに、OECDにおけるデータ要求の文書の関連する内容や、過去の研究における提言、厚生労働省の担当部局からのリモートの相談に答えることより判明した評価における問題点に関する説明を加える等し、厚生労働省が検討した文書を原案として新たなMRL設定のガイドライン案を策定した。
2015年~2019年に発行されたJMPR報告書において提示されたWHOパネルの新規課題から研究対象を選定し直し、毒性評価の観点からのMRL設定への理解を深めるための基礎資料を作成した。作成した基礎資料では、特にJMPRとFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が行う食品中の化学物質のリスク評価のための一般原則及び方法をまとめたモノグラフであるEnvironmental health criteria 240の改訂作業に関連した課題に着目した。
結論
わが国政府の評価担当者が、MRL設定を検討する際に従うべき原理・原則を実地で理解するための文書が、JMPRが発行するオキサミル評価書を素材として開発された。厚生労働省が作成した原案を検討し、提案や説明等を加えることにより、新たなMRL設定ガイドライン案が開発された。本ガイドライン案は今後、厚生労働省によるMRL設定のための新たなガイドラインとして一元的に活用されることが期待される。その他に、MRL設定の原理・原則のより良い理解に役立ち、今後のガイドライン更新等に検討される可能性もあるOECDガイドライン等の日本語訳や基礎資料が開発された。

公開日・更新日

公開日
2021-09-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202024003B
報告書区分
総合
研究課題名
食品に残留する農薬管理における方法論の国際整合に関する研究
課題番号
H30-食品-指定-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、わが国における最大残留基準値(MRL)設定の国際整合の強化及び不整合な状態への回帰の防止を目的とし、FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)による最新の評価やその結果及び課題から背景となる科学的考察を明らかにし、その結果に基づいて、開発済みのMRL設定ガイドの更新を検討する。示唆に富んだJMPR評価書を選定し、その翻訳と解析並びに解説を行い、わが国の評価担当者の能力向上に資する文書を開発する。また、MRL設定に必要な評価における検討事項とデータへの要件を明確に示した新たなガイドラインの厚生労働省による策定を支援する。
研究方法
JMPR評価書及び報告書、Codex残留農薬部会における議論、また国内における現在あるいは今後のMRL設定に関する優先度を総合的に勘案し、検討対象とする農薬を決定した。検討対象農薬のJMPR評価書を正確に翻訳するとともに、原理・原則に関する留意点等を踏まえた解説を訳注として加えることで国内評価者の能力向上に資する文書を開発した。また、MRL設定において参考とすべきOECDガイドライン等を選定し、忠実に翻訳した。 
MRL設定に係る新規課題をJMPR報告書から抽出し、その背景や議論の経緯等の周辺情報も含めて調査し、要点をまとめた。
FAOマニュアルやOECDガイドライン等を情報源として活用するとともに、JMPRやOECDにおける専門家としての活動の経験等も踏まえて、厚生労働省におけるMRL設定の改善点の指摘と解決策の提言を通じ、厚生労働省によるMRL設定の基本原則の改定に貢献するとともに、作物残留試験の要件を示した。さらに上記のMRL設定の基本原則及びJMPRの方法論を主な参考とし、OECDのガイドラインやガイダンス文書の内容やわが国の状況も反映して、厚生労働省によるMRL設定のための具体的なガイドライン(新たなMRL設定ガイドライン)案を策定した。
結果と考察
本研究により開発されたMRL設定ガイドの更新検討、及び国内評価担当者の能力向上に資する文書開発のために、JMPR評価書を翻訳し解析・解説を行った。シクラニリプロール、2,4-D、オキサミルの3つの農薬のJMPR評価書を研究対象として選定し、翻訳とともに解説を試みた。その結果、JMPRにより示されている様々な評価方法の実践となる評価結果を特定し解説を加えることができた。後述の通り、本研究の成果として、厚生労働省によるMRL設定のために一元的な活用が期待される新たなMRL設定ガイドライン案が策定されたことも踏まえ、既存のMRL設定ガイドの更新検討は中止が適当と考えられた。その他、凍結保存安定性、分析法と加工試験に関するOECDガイドラインが翻訳され、その内の凍結保存安定性を取り扱ったガイドラインについては、翻訳に加えてそこに含まれる原理・原則、及び主要な点が特定された。
厚生労働省におけるMRL設定の改善点の指摘と解決策の提言を通じ、2019年に公開された厚生労働省によるMRL設定の基本原則の改定に貢献した。また、厚生労働省による作物残留試験の要件に含むべき論点を示した。さらに、上記のMRL設定の基本的原則及びJMPRの方法論を主な参考とし、OECDのガイドライン等内容やわが国の状況も反映して、厚生労働省によるMRL設定のための具体的なガイドライン(新たなMRL設定ガイドライン)案を策定した。その他、評価の国際整合化や評価能力向上のための研修を実施し、個別の農薬残留物評価に関する相談に応じた。
2015年から2019年に発行されたJMPR報告書を研究対象として、①マイナー作物のMRL設定に必要な作物残留試験の最低数、②IESTI計算式の見直し、③生涯よりも短期の暴露推定、④Environmental health criteria 240の改訂作業等の新規課題について、それらの特定の背景や議論の経緯などの周辺情報を調査し要点をまとめ、より適正なMRL設定の参考とすべき基礎資料を作成した。
結論
JMPR評価書の翻訳と解析・解説を通じて、わが国政府の評価担当者が、MRL設定を検討する際に従うべき原理・原則を実地に理解するため文書が開発された。厚生労働省が示すMRL設定の基本原則の改定に貢献し、その成果となる文書が2019年に公開された。その後も、厚生労働省が作物残留試験の要件を示すための論点を示し、新たなMRL設定ガイドライン案を策定した。本ガイドライン案は今後、厚生労働省によるMRL設定のための新たなガイドラインとして一元的に活用されることが期待される。その他に、MRL設定の原理・原則のより良い理解に役立ち、今後のガイドライン更新等に検討される可能性もあるOECDガイドライン等の日本語訳や基礎資料が開発された。

公開日・更新日

公開日
2021-09-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202024003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
適正農業規範(GAP)の一部として健康に影響のない残留にしかつながらない、必要最小限の農薬の使用が規定される。規定に沿った農薬の使用を確認するための指標として最大残留基準値(MRL)は設定され、検査が実行される。このMRLの設定と検査の実行に不可欠の国際的に認められた原理・原則をまとめ、我が国の行政施策に反映させるための研究として非常に高い専門性を有する。
臨床的観点からの成果
臨床を取り扱う研究は実施されておらず、よって成果はない。
ガイドライン等の開発
「農産物の検体部位及び基準値適用部位の見直しについて」「国際的整合性を踏まえたMRL設定における食品群及び代表作物について」「食品中の農薬の残留基準値設定の基本原則について」等が薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会を通じて公開された
その他行政的観点からの成果
我が国におけるMRLの設定を含む残留農薬規制に関する国際整合についてはこれまで十分に検討されてこなかった。そのような状況にあって本研究が厚生労働省が示し自らも使用するガイドラインの開発につながったことは、わが国の食品安全行政に直結する大きな成果である。
その他のインパクト
現在のところ、取り上げるべきインパクトを確認していない。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
残留農薬基準値設定のための食品分類の策定、残留基準値適用部位並びに分析部位の国際整合等
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
2024-06-20

収支報告書

文献番号
202024003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,457,000円
(2)補助金確定額
3,457,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 497,047円
人件費・謝金 197,400円
旅費 5,104円
その他 2,757,449円
間接経費 0円
合計 3,457,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-06-20
更新日
-