食品中の食中毒細菌の制御法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202024001A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の食中毒細菌の制御法の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H30-食品-一般-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 大岡 唯祐(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 感染防御学講座 微生物学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
19,459,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新たな食中毒細菌(流行株などを含む)が流行し、定着する場合があるが、流行前に対策をとり制御することが重要である。近年、国内外でEscherichia albertiiの病原性、特に下痢原性が周知され、海外では食中毒発生リスクが懸念されているが、既に日本では2003年以降に食中毒が発生し、患者数200人以上の事例も報告されている。また、Arcobacter属菌は胃腸炎患者の便からしばしば分離されており、食中毒との関連性が示唆されている。特に、Arcobacter butzleriは、食中毒原因菌としての可能性が示唆されている。これら2菌種に着目し、食品中の食中毒細菌の制御法の確立のための研究を行うこととした。
研究方法
(1)E. albertiiの制御法の確立では、確立したリアルタイムPCR法の食品検体での感度を検討した。また、E. albertiiの特異的検出のために薬剤A・薬剤Bを添加したmEC培地(mEC+AB培地)、薬剤C・薬剤Dを添加したDHL寒天培地(DHL+CD培地)の至適薬剤濃度を検討し、食中毒事例での原因食品調査に応用した。食品や環境検体でのE. albertii汚染実態調査など地方自治体と実施し、菌の挙動についても検討した。(2)E. albertiiの感染性・病原因子の解明では、E. albertiiの病原関連候補遺伝子の発現条件を解析した。また、付着因子インチミン、Tir、TccP の多様性・分布を解析した。H抗原型の多様性を解析した。(3)A. butzleriの制御法の確立では、Arcobacter属菌の汚染源を把握するために野菜と魚介類における汚染を定量法およびPCR法を用いて調査した。
結果と考察
(1)E. albertiiの制御法の確立では、リアルタイムPCR法の検出限界が0.3〜3.4 cfu/PCR tube(=6.8×10〜6.8×102 cfu/mL)であり、鶏肉への接種菌数が1.2~1.4 cfu/25 g以上で検出されたことから感度が優れることが明らかになった。また、mEC+AB培地及びDHL+CD培地での薬剤の至適濃度を決定し、食中毒事例の原因食品調査にてE. albertiiの検出に有効であることが明らかになった。汚染実態調査では、食品709検体のうち1検体からE. albertiiが分離されたが、環境検体、ヒト便検体からはE. albertiiの遺伝子が検出されなかった。挙動解析では、20℃・30℃で食品検体中では増殖し、環境水中では減少し、4℃・10℃では両検体ともに増減はみられなかった。(2)E. albertiiの感染性・病原因子の解明では、E. albertiiの細胞付着および感染細胞内増殖能に関わる遺伝子の発現が上がる条件を明らかにした。大腸菌においてマイナーなタイプのインチミンがE. albertiiに多いこと、TirバリアントタイプがV1、V2(EHECタイプ)の株のほとんどがTccPを保有していることが明らかになった。また、H抗原型の多様性が明らかとなり、fliC遺伝子を標的としたマルチプレックスPCR反応系による疫学ツールを構築することが出来た。(3)A. butzleriの制御法の確立では、水耕栽培野菜、魚介類ともにアルコバクター属菌の汚染率、汚染菌数が高く、もし、アルコバクター属菌が食中毒を引き起こしているとすると、その原因食品となりうる可能性が示唆された。低温条件下での生存および球状化(生きているが培養できない状態の可能性)が認められた。低温での生存、酸性での耐性、高塩濃度での増殖等も明らかになった。
結論
(1)E. albertiiの制御法の確立では、食品での検査法に有用な選択増菌培地、リアルタイムPCR法等を開発し、食中毒事例で原因食品の解明に有効であった。また、食品・環境検体等での本菌の汚染や挙動を明らかにした。また、(2)E. albertiiの感染性・病原因子の解明では、E. albertiiの病原関連候補遺伝子の温度等条件での発現の違い、バリアントの同定、鞭毛抗原(H抗原)の多様性を明らかにし、識別のためのマルチプレックスPCR系を構築した。(3)A. butzleriの制御法の確立では、食品での汚染状況、低温での生存、酸性での耐性、高塩濃度での増殖、VBNC状態で生存の可能性等が判明した。

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202024001B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中の食中毒細菌の制御法の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H30-食品-一般-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 大岡 唯祐(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 感染防御学講座 微生物学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新たな食中毒細菌(流行株などを含む)が流行し、定着する場合があるが、流行前に対策をとり制御することが重要である。近年、国内外でEscherichia albertiiの病原性、特に下痢原性が周知され、海外では食中毒発生リスクが懸念されているが、既に日本では2003年以降に食中毒が発生し、患者数200人以上の事例も報告されている。また、Arcobacter属菌は胃腸炎患者の便からしばしば分離されており、食中毒との関連性が示唆されている。特に、Arcobacter butzleriは、食中毒原因菌としての可能性が示唆されている。これら2菌種に着目し、食品中の食中毒細菌の制御法の確立のための研究を行うこととした。
研究方法
(1)E. albertiiの制御法の確立では、特に鶏肉検体を対象として食品からの検出法を検討した。本菌の薬剤耐性や糖分解性状を利用した増菌培養および分離培養法、本菌に特異的な遺伝子配列を解析し、リアルタイムPCR法を検討した。これらの方法をE. albertii食中毒事例での原因食品調査に応用した。また、食品や環境検体でのE. albertii汚染実態調査など地方自治体と実施し、菌の挙動についても検討した。(2)E. albertiiの感染性・病原因子の解明では、遺伝子群の網羅的探索を行い、診断疫学マーカー候補遺伝子を抽出した。また、病原関連候補遺伝子の発現条件、付着因子の多様性・分布を解析した。O抗原・H抗原の多様性解析とそれら遺伝子型タイピングツールを検討した。(3)A. butzleriの制御法の確立では、Arcobacter属菌の汚染源を把握するために野菜と魚介類における汚染を定量法およびPCR法を用いて調査した。
結果と考察
(1)E. albertiiの制御法の確立では、mEC+AB培地及びDHL+CD培地での薬剤の至適濃度を決定し、食中毒事例の原因食品調査にてE. albertiiの検出に有効であることが明らかになった。リアルタイムPCR法の検出限界が0.3〜3.4 cfu/PCR tube(=6.8×10〜6.8×102 cfu/mL)であり、鶏肉への接種菌数が1.2~1.4 cfu/25 g以上で検出されたことから感度が優れることが明らかになった。また、汚染実態調査では、食品709検体のうち1検体からE. albertiiが分離されたが、環境検体、ヒト便検体からはE. albertiiの遺伝子が検出されなかった。挙動解析では、20℃・30℃で食品検体中では増殖し、環境水中では減少し、4℃・10℃では両検体ともに増減はみられなかった。(2)E. albertiiの感染性・病原因子の解明では、細胞付着および感染細胞内増殖能に関わる遺伝子を同定することに成功し、これら病原関連遺伝子の発現条件を明らかにした。EPECやEHECと共通な既知の病原因子について、E. albertiiの種としての特徴も見いだし、本解析で新規TccPバリアント(TccP4)を同定した。O抗原およびH抗原の多様性が明らかとなり、それぞれの違いを利用したマルチプレックスPCRによる疫学ツールを構築することが出来た。(3)A. butzleriの制御法の確立では、アルコバクター属菌は、食中毒細菌C. jejuniよりも重度に鶏肉を汚染し、水耕栽培野菜でも重度に汚染していることが明らかになった。しかし、これら食品で食中毒が発生していないことから、本菌の病原性は非常に弱いと思われ、海外の事例発生を考えると日和見菌の可能性が考えられた。低温条件下での生存および球状化(生きているが培養できない状態の可能性)が認められた。低温での生存、酸性での耐性、高塩濃度での増殖等も明らかになった。
結論
(1)E. albertiiの制御法の確立では、食品での検査法に有用な選択増菌培地、リアルタイムPCR法等を開発し、食中毒事例で原因食品の解明に有効であった。また、食品・環境検体等での本菌の汚染や挙動を明らかにした。(2)E. albertiiの感染性・病原因子の解明では、E. albertiiの病原関連候補遺伝子の温度等条件での発現の違い、バリアントの同定、鞭毛抗原(H抗原)の多様性を明らかにし、識別のためのマルチプレックスPCR系を構築した。(3)A. butzleriの制御法の確立では、Arcobacter属菌は病原性の弱い日和見菌的な存在であることが示唆されたが、他の細菌では死滅してしまうような環境でも、長期間生残できることから、衛生管理には細心の注意を払う必要性が認められた。

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202024001C

収支報告書

文献番号
202024001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,280,000円
(2)補助金確定額
20,280,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,706,528円
人件費・謝金 3,802,798円
旅費 103,366円
その他 846,308円
間接経費 821,000円
合計 20,280,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-06-20
更新日
-