労働災害防止対策の推進とESG投資の活用に資する調査研究

文献情報

文献番号
202023017A
報告書区分
総括
研究課題名
労働災害防止対策の推進とESG投資の活用に資する調査研究
課題番号
20JA1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
永田 智久(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 金藤 正直(法政大学 人間環境学部)
  • 森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室)
  • 永田 昌子(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,284,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は安全衛生活動に関するESG情報開示のエビデンス・良好事例集, および, 行政の関与方法に関する提言を作成することを目的とする。
研究方法
(1)ESG情報開示制度調査
1. 安全衛生とESG・SDGsに関する法令文献レビュー: Feasibility Study
2. ESG評価会社の労働安全衛生に関する評価項目の情報収集
3. ESGのサプライヤーマネジメントを支援している企業の労働安全衛生面での監査項目等の情報収集
(2)ESG実態調査
4. 健康経営優良法人認定企業(中小規模法人部門)における情報開示の現状
5. 労働者の健康施策の公表に関するアンケート調査(中小企業)
6. CSR関連報告書から見たESG活動と産業保健活動の実態
7. ESG良好事例に関するインタビュー調査
8. 欧米・日本における労働安全衛生活動に関する理論と実践
結果と考察
ESG情報開示制度について, 法令は2021年1月時点ではみつけることができなかった。企業にとっては投資家への説明を目的として開示が進んでおり, ESG評価機関が開示内容について評価を行っている。代表的な評価機関であるFTSE Russell、MSCI、サステナリティクスの評価項目の共通項目は, 「安全衛生方針等によるコミットメント」「管理体制、死亡者数/率」「休業災害発生率」「安全衛生方針が請負業者にも適用されるかどうか」であった。これらの項目のうち, 安全衛生方針と請負業者に対する安全衛生は, サプライチェーンマネジメントの中での監査項目にも含まれていた。
ESGの実態調査では, 中小企業ではホームページにESGの文言で開示している企業は極めて少ない(5社/2217社(0.2%))一方で, SDGsの文言は130社/2217社(5.9%)と少なくなかった。同じ中小企業(健康経営優良法人)に対するアンケート調査では, 取組みの開示状況は, 健康施策・健康経営は84%, 労働災害防止の取組みは33%であった。このため, 取組みの開示は行っている一方で, 労働災害防止の取組みや健康経営をSDGsやESGと結び付けて説明していないことが明らかとなった。大企業(上場企業)では, CSR関連報告書の発行割合は、2012年度調査の38.6%から20.3%と大きく減少していたが, 統合報告書のいずれかを発行している割合は42.4%であり, 非財務情報の公表は拡大していると考えられた。その中でも特に取組みが先進的であると考えられる健康経営銘柄選定企業では, 有価証券報告書の中に労働安全衛生や健康経営の取組みを記載している企業が出始めている。財務報告に加えて非財務報告を行う流れとなっているが, 会計のなかにESGの取組みを組み込む動きも出始めており, 労働安全衛生の開示の在り方について, 更なる検討が必要である。
結論
ESG情報開示について, 労働安全衛生について法令は未整備であった。ESG投資の観点では, ESG評価機関が作成している基準に労働安全衛生の開示項目も含まれており, 上場企業の多くは開示が進んでいる。一方で, 中小企業ではそのような動きは少ないものの, サプライチェーンマネジメントの観点では労働安全衛生も重要な項目となっており, また, 経営者は労働安全衛生や健康経営の開示に前向きな姿勢であることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202023017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,468,000円
(2)補助金確定額
7,505,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,963,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,431,885円
人件費・謝金 838,025円
旅費 0円
その他 3,051,967円
間接経費 2,184,000円
合計 7,505,877円

備考

備考
1000円単位での返却となるため、差異の877円は研究者の自己負担としました。

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-