アジア新興国の労働者の安全衛生の取り組み促進の支援に係るニーズ等の把握のための研究

文献情報

文献番号
202023002A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア新興国の労働者の安全衛生の取り組み促進の支援に係るニーズ等の把握のための研究
課題番号
H30-労働-一般-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 石丸 知宏(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジアの新興国に対して、各国の産業構造、人口構造、制度や文化などに伴うニーズに合った労働安全衛生に係る支援を行うために、国ごとに存在する支援ニーズを調査することを目的とした3年間の研究期間の最終年度である。
研究方法
今年度は、調査対象国をベトナムとラオスとした。COVID-19のパンデミックによって現地訪問が困難な状況であったため、現地専門家に調査項目を明示して調査を委託したうえで、Web会議機能を用いて内容の確認および支援ニーズに関する議論を行い、その結果をもとに考察した。
結果と考察
ベトナムでは、労働安全衛生法が2016年に制定されており、労働安全衛生の確保は、国の基本政策をもとに推進が図られている。事業場には安全衛生担当者の選任を含む業種および従業員数に応じた労働安全衛生体制の確立が求められている。職業性疾患は、難聴や呼吸器疾患が多い。また、企業規模による格差やインフォーマルセクターの問題も存在する。現在のベトナムは、法令の整備に比べて、監督や事業場内の専門人材が不足している状態にある。日本が労働安全衛生法制定後に取組みを充実してきた経験を共有するともに、専門人材の養成ニーズの評価およびプログラム開発に対して、貢献の可能性があると考えられる。
ラオスでは、労働安全衛生の国家戦略が策定され、また労働法のもとで労働安全に関する政令が出されている。しかし、労働安全衛生上の課題把握が不十分で、独立した労働安全衛生法の制定に至っていない。また、監督官が大きく不足していること、労働安全衛生の専門家の育成の仕組みが未整備であることなど、様々な課題が存在する。カントリープロファイルの充実や、課題の把握に応じて労働安全衛生法や関係法令の制定といった基盤整備における日本からの貢献の可能性が存在する。また、日本の専門教育機関に中長期の派遣を受入れて専門家育成を図り、それ基盤として教育研修プログラムの開発を支援するなど、人材育成分野において、大きな貢献の可能性があると考えられる。
結論
現地専門家への委託および議論を通して、ベトナムおよびラオス両国の労働安全衛生の実態および支援ニーズの調査を行った。それぞれの国で課題は異なるが、日本の経験の共有およびリーダー育成などの人材養成において、高い支援ニーズが存在すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202023002B
報告書区分
総合
研究課題名
アジア新興国の労働者の安全衛生の取り組み促進の支援に係るニーズ等の把握のための研究
課題番号
H30-労働-一般-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 石丸 知宏(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学研究室)
  • 伊藤 直人(産業医科大学 産業医実務研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジアの新興国に対して、それぞれの国の産業構造、人口構造、制度や文化などに伴うニーズに合った労働安全衛生に係る支援を行うために、国ごとに存在する支援ニーズに関する調査を行い、安全衛生推進に係る支援の手法を検討することを目的とした。
研究方法
アジア新興国に対する労働安全衛生分野の支援ニーズの調査を行った。調査に当たっては、まず、限られた期間で網羅的な情報を収集するために、機関ごとに収集する情報のチェックシートツールを作成した。その上で、インド、インドネシア、フィリピン、カンボジア、ベトナム、ラオスの調査を行った。
結果と考察
インド:社会・医療制度が十分には発達しておらず、労働安全衛生法令についても、体系的な法令の適用を模索中である。また、労働安全衛生を担う人材の不足や同国特有の労働安全衛生上の課題が存在している。日本から、人材養成、過去経験の共有、学術交流等を通した様々な支援ニーズが存在すると考えられた。
インドネシア:近年、経済が急速に発展するなかで、労働安全衛生に関する法体系や各種保健制度が整えられてきた。しかし、労働者の健康課題について、産業が多様化する一方で依然としてアスベストが産業界で利用されていることや、メンタルヘルス疾患や冠動脈疾患といった作業関連疾患については増加傾向にあることなど、多様化している。今後、学術交流および人材養成の支援を通じて、同国の労働安全衛生レベルの向上に貢献できる可能性があると考えられた。
フィリピン:経済が急速に発展するなかで、労働安全衛生に関する法体系が整えられてきた。また、産業構造が第三次産業に大きくシフトし、労働者の健康課題についても職業関連筋骨格系疾患や糖尿病等の非感染性疾患が増加しており、作業関連疾患が増加すると予想されている。しかし、その対応を行うための人材が大きく不足しており、安全衛生専門職の育成への支援等、一定の支援ニーズが存在すること考えられる。
カンボジア:労働安全衛生に関する法令は労働法の一部で規定されている。労働者数に応じた医療職の選任義務が規定されているが、その職務は傷病者の応急措置と考えられた。安全衛生の監督する検査官制度は確認できたが、検査件数が限られていた。また、セーフティーオフィサ等の事業場内で労働安全衛生を推進する人材の育成も行われていなかった。今後に向けて、独立した労働安全衛生法の検討が行われているが、制度を浸透させるためには、官民で労働安全衛生を担う人材の育成が不可欠である。人材育成の直接的支援と、育成ノウハウの提供といった間接的支援がもっとも優先順位の高い支援ニーズと考えられる。
ベトナム:労働安全衛生法が2016年に制定されており、労働安全衛生の確保は、国の基本政策をもとに推進が図られている。事業場には安全衛生担当者の選任を含む業種および従業員数に応じた労働安全衛生体制の確立が求められている。職業性疾患は、難聴や呼吸器疾患が多い。また、企業規模による格差やインフォーマルセクターの問題も存在する。現在のベトナムは、法令の整備に比べて、監督や事業場内の専門人材が不足している状態になる。日本が労働安全衛生法制定後に取り組みを充実してきた経験を共有するとともに、専門人材の養成ニーズの評価およびプログラム開発に対して、貢献の可能性があると考えられる。
ラオス:労働安全衛生の国家戦略が策定され、また労働法のもとで労働安全に関する政令が出されている。しかし、労働安全衛生上の課題把握が不十分で、独立した労働安全衛生法の制定に至っていない。また、監督官が大きく不足していること、労働安全衛生の専門家の育成の仕組みが未整備であることなど、様々な課題が存在する。カントリープロファイルの充実や、課題の把握に応じて労働安全衛生法や関係法令の制定といった基盤整備における日本からの貢献の可能性が存在する。また、日本の専門教育機関に中長期の派遣を受入れて専門家育成を図り、それ基盤として教育研修プログラムの開発を支援するなど、人材育成分野において、大きな貢献の可能性があると考えられる。
結論
 今回、調査対象となった国は、異なる経済発展の段階にあり、それと連動して労働安全衛生の推進状況においても大きな差が認められた。労働安全衛生の発展段階に合わせて、現地での体制づくりを一定期間にわたって支援すること、各国のリーダー育成の支援や育成したリーダーを通した教育プログラムを策定したりすることなどが必要であると考えられる。その際、各国は、韓国やタイなどのアジア諸国や欧米諸国からの支援を受けていることもあり、各国の具体的なニーズに対して、日本の強みを生かした支援が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2022-03-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202023002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ベトナムおよびラオスについて、労働安全衛生の法令や人材育成等の体制が明らかになり、課題に対する支援ニーズが明確になった。特にラオスについては、多くの資源が整備されておらず、今後の支援ニーズは高いと考えられる。
臨床的観点からの成果
海外への企業進出の際の安全衛生対策の構築における参考資料となる。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
労働安全衛生コンサルタント会報
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-03-01
更新日
2022-06-09

収支報告書

文献番号
202023002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
2,587,000円
差引額 [(1)-(2)]
413,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,844円
人件費・謝金 1,466,150円
旅費 0円
その他 421,280円
間接経費 690,000円
合計 2,587,274円

備考

備考
千円未満の自己負担分

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-