歯科医療従事者の働き方と今後の需給等に関する調査研究

文献情報

文献番号
202022019A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科医療従事者の働き方と今後の需給等に関する調査研究
課題番号
19IA1010
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(北海道医療大学 歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 克郎(日本歯科大学東京短期大学)
  • 田野 ルミ(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 則武 加奈子(東京医科歯科大学歯学部附属病院)
  • 福田 英輝(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業の目的は、若年層の歯科医療従事者の就業意向や動向の可視化を図り、歯科衛生士と歯科技工士の今後の人材供給の在り方を検討することである。本年度は、歯科
技工士の今後の働き方に大きく影響を与えるコンピュータ支援設計・製作(CAD/CAM)による仕事量削減効果について調査を行った。また、歯科衛生士のキャリア意識と研修の在り方について分析を進めた。加えて、両職種とも政府統計データを用いた継続就業状況を明らかにした。
研究方法
歯科技工士に対して、郵送法によるCAD/CAMに関する自記式質問紙調査を行った(回収率 78.8%)。各種補綴装置、陶材焼付鋳造冠、ジルコニアクラウンの製作に要する時間について、工程ごとに回答を求めるとともに、CAD の業務状況を調べた。歯科衛生士調査については、昨年度得られた歯科衛生士養成機関およびその卒業年次生を対象とした自記式質問紙調査データの詳細分析を継続して実施し、就労および職業に対する意識や意向に関連する要因について、首尾一貫感覚との関連性を含めて検討した。加えて、厚生労働省が平成29年度より実施している「歯科衛生士に対する復職支援・離職防止事業」を利用した歯科衛生士を取り巻く状況や、勤労観、職業観を分析した。これらの調査に加えて、政府統計を用いた2次分析を行い、歯科技工士と歯科衛生士の就業状況の全国状況と地域偏在について分析した。
結果と考察
CAD導入による日常の歯科技工業務への変化について、時間の効率化や負担軽減につながったと感じている者は約6割であった。わが国でCADなどが普及することにより20歳代の就業率は現状より高まると考えている者は 54.6%であり、制度として CAD はテレワークも行えるようにした方が良いと思っている者は 77.7%であった。5⏋のCAD/CAM 冠の製作に要する時間は 90.8 分であった。歯科衛生士養成機関の卒業年次在籍生への調査においては、希望勤務年数が長いほど学生の就労および職業に関する意識および意向に関して肯定的な回答が高率だった。歯科衛生士学生の SOCと職業観および就労観との関連性が明らかになり、首尾一貫感覚が高い者ほど職業意識が高かった。歯科衛生士研修センター受講修了者に対する調査では免許取得直後、求職中・復職直後の歯科衛生士の研修受講は知識・技術、相談できる仲間・環境、自信の獲得につながっていた。政府統計データ分析の結果、歯科技工士の10年後の継続就業状況について、歯科技工所に就業する男性では高齢層を除き 100%を 上回っていたが、女性では若年層と高齢層で 100%を下回っており、性別による差異がみられた。病院・診療所に就業する歯科技工士は、男女ともに、ほとんどの年齢層で100%を下回っていた。全体的に地域ブロック間における顕著な傾向はみられなかった。一方、歯科衛生士では、20歳代歯科衛生士の継続就業率は100%を下回るものの、30 歳代および40歳代では継続就業率が100%を上回っていた。全国ブロック別にみると、若い世代の継続就業率が比較的高いブロックがみられたが、全国的な傾向はほぼ同様であった。歯科衛生士の地域分布については、歯科診療所や歯科医師に比べると偏在が生じていた。歯科技工士は歯科専門職種のなかで最も大きな偏在を示していた。歯科衛生士数が多い歯科診療所では、う蝕症や慢性歯周炎などの傷病に加え、検査・健康診断その他の保健医療サービスを多く提供していた。
結論
歯科技工業務の一部を、今後テレワークでも対応できるようにする等の制度上の工夫は、今後検討すべきである。歯科衛生士の早期離職を抑制するうえでも歯科衛生士養成機関や卒後研修機関でのさらなる教育支援は必須であり、免許取得直後での仕事のやりがいの体得も知識・スキルの習得以外に重要である。国の統計データの2次分析では、歯科技工士と歯科衛生士ともに継続就業率は年代によって異なるが、20歳代の継続就業率が他年代と比較して低率であったことは両職種に共通した事象であり、早期離職対策をさらに推進する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2021-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202022019B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科医療従事者の働き方と今後の需給等に関する調査研究
課題番号
19IA1010
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(北海道医療大学 歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 克郎(日本歯科大学東京短期大学)
  • 田野 ルミ(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 則武 加奈子(東京医科歯科大学歯学部附属病院)
  • 福田 英輝(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業の目的は、若年層の歯科医療従事者の就業意向や動向の可視化を図り、歯科衛生士と歯科技工士の今後の人材供給の在り方を検討することである。令和元年度から令和2 年度にかけて、就業前の歯科衛生士養成機関の卒業年次の学生に対しての就業意識に関する全国調査を行うとともに、厚生労働省事業として開設された歯科衛生士研修センターの修了者に対しても就業意識に関する調査を行い、卒前・卒後の両面より分析を進めた。歯科技工士については、歯科技工士の今後の働き方に大きく影響を与えるコンピュータ支援設計・製作(CAD/CAM)による仕事量削減効果について、令和2年度に調査を行った。また、政府統計等の2 次データ分析により、性別・年齢階級別の歯科技工士就業率、歯科技工士の継続就業率、歯科衛生士の継続就業率、歯科医療従事者数の地域格差等について明らかにした。
研究方法
歯科技工士に対して、郵送法によるCAD/CAMに関する自記式質問紙調査を行った(対象 165名、回収率 78.8%)。各種補綴装置、陶材焼付鋳造冠、ジルコニアクラウンの製作に要する時間について、工程ごとに回答を求めるとともに、CAD の業務状況を調べた。歯科衛生士調査については、歯科衛生士養成機関およびその卒業年次生6,264名から得た就労および職業に対する意識や意向に関する全国調査データを分析し、今後の若年歯科衛生士の就業動向を推測するとともに、首尾一貫感覚を指すsense of coherence(以下、SOC)との関連性を含めて検討した。加えて、厚生労働省が平成29年度より実施している「歯科衛生士に対する復職支援・離職防止事業」を利用した歯科衛生士を取り巻く状況や、勤労観、職業観を分析した。これらの調査に加えて、政府統計等を用いた 2次分析を行い、歯科技工士と歯科衛生士の就業に関する全国状況と地域偏在について分析した。
結果と考察
CAD導入による日常の歯科技工業務への変化について、時間の効率化や負担軽減につながったと感じている者は約6割であった。わが国でCADなどが普及することにより20歳代の就業率は現状より高まると考えている者は54.6%であり、制度として CADはテレワークも行えるようにした方が良いと思っている者は 77.7%であった。5⏋のCAD/CAM冠の製作に要する時間は 90.8分であった。歯科衛生士養成機関の卒業年次在籍生への調査においては、希望勤務年数が長いほど学生の就労および職業に関する意識および意向に関して肯定的な回答が高率だった。歯科衛生士学生のSOCと職業観および就労観との関連性が明らかになり、首尾一貫感覚が高い者ほど職業意識が高かった。歯科衛生士研修センター受講修了者に対する調査では免許取得直後、求職中・復職直後の歯科衛生士の研修受講は知識・技術の獲得、相談できる仲間や環境の獲得、自信の獲得につながっていた。 政府統計等の二次データ分析の結果、歯科技工士の20歳代の就業率は47.9%、30 歳代は29.0%、40 歳代28.2%であった。歯科技工士の10年後の継続就業状況について、歯科技工所に就業する男性では高齢層を除き 100%を上回っていたが、女性では若年層と高齢層で100%を下回っており、性別による差異がみられた。全体的に地域ブロック間における顕著な傾向はみられなかった。一方、歯科衛生士では、20 歳代歯科衛生士の継続就業率は 100%を下回るものの、30 歳代および 40 歳代では継続就業率が 100%を上回っていた。全国ブロック別にみると、若い世代の継続就業率が 比較的高いブロックがみられたが、ほぼ全国的な傾向はほぼ同様であった。歯科衛生士の地域分布については、歯科診療所や歯科医師に比べると偏在が生じていた。歯科技工士は歯科専門職種のなかで最も大きな偏在を示していた。歯科衛生士数が多い歯科診療所では、う蝕症や慢性歯周炎などの傷病に加え、検査・健康診断その他の保健医療サービスを多く提供していた。
結論
20歳代後半で、既に歯科技工士としての未就業者率が半数以上に達し、早期離職対策は喫緊の課題であることが示唆された。歯科技工士の業務における CAD/CAMの拡大は、若手歯科技工士の就業率の向上に役立つことが期待される。歯科技工業務の一部を、今後テレワークでも対応できるようにする等の制度上の工夫は、今後検討すべきである。歯科衛生士の早期離職を抑制するうえでも歯科衛生士養成機関や卒後研修機関でのさらなる教育支援は必須であり、知識・スキルの習得以外に免許取得直後での仕事のやりがいの体得も重要である。国の統計データ等の2次分析では、20歳代の継続就業率が他年代と比較して低率であったことは両職種に共通した事象であり、歯科医療従事者の早期離職対策をさらに推進する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2021-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202022019C

収支報告書

文献番号
202022019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,308,000円
(2)補助金確定額
2,308,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,153,157円
人件費・謝金 296,518円
旅費 164,098円
その他 694,445円
間接経費 0円
合計 2,308,218円

備考

備考
自己資金218円

公開日・更新日

公開日
2021-12-08
更新日
-