文献情報
文献番号
200808002A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染を阻害するシュードプロテオグリカン型薬剤の作用メカニズム
課題番号
H18-創薬・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小川 温子(お茶の水女子大学 大学院 人間文化創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 棚元 憲一(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
- 牛島 廣治(藍野大学 藍野健康科学センター)
- 星野 洪郎(群馬大学大学院 医学系研究科)
- 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々が創成したシュードプロテオグリカン(シュードPG)は、天然のプロテオグリカンの分子構造を模倣して、直鎖高分子に複数の多糖鎖を共有結合させた人工複合体分子である。本研究では、シュードPGの構造的特徴と顕著な結合特性に着眼し、細胞膜上プロテオグリカンを必要とするHIV-1の初期感染機構をブロックし、かつHIV-1に対する宿主の抵抗性を回復する効果を併せ持つ感染阻害剤としての利用を目指し、またシュードPGの抗HIV-1メカニズムを解明する。
研究方法
19年度に、単独では活性を示さない材料を用いて調製したシュードPGが、HIV-1感染に対して顕著な抑制効果を発揮することを発見した。その発見を基に、本年度は糖鎖構造、骨格分子構造、およびそれらの鎖長を変えて合成し、マクロファージ指向性およびT細胞指向性のHIV-1、ならびに種々の薬剤耐性ウイルスについて、種々の細胞系を用いて抗HIV活性と構造の関係を調べた。抗HIV活性をもつプローブについて、ウイルスのEnvを介した細胞融合抑制、ならびにウイルスの細胞吸着および侵入阻害実験により感染抑制機序の解明を行なった。
結果と考察
本研究で合成した、活性を持たない材料糖鎖および骨格分子から合成した、新規のシュードPGは、T-およびM-指向性ウイルスならびに硫酸化多糖を始めとする種々の薬剤耐性のウイルス株に対しても顕著な活性が認められた。シュードPG合成後の化学修飾によって活性は失われたことから、活性には遊離の水酸基とアミノ基が重要であることが示唆された。新規化合物は主にウイルスと細胞の両方に作用することで細胞へのウイルス吸着および侵入を阻害することが明らかとなった。さらに、へパリンが結合するウイルスのEnv V3の先端部分以外に結合して作用することが明らかになり、硫酸化多糖とは異なる新規な機構で感染抑制すると考えられた。また、二次元核磁気共鳴により,GAG鎖の硫酸基の位置を含めた微量構造解析方法を樹立した。
結論
本研究で開発した新規化合物は、硫酸化多糖とは異なる新規な機構で感染抑制すると考えられたので特許出願した(特願2008-301811)。本プローブは新規抗HIV活性薬剤への発展が強く期待される。
公開日・更新日
公開日
2011-05-27
更新日
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