文献情報
文献番号
202020012A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症診療の提供体制の評価及び改善のための研究
課題番号
H30-エイズ-一般-008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 俊夫(順天堂大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 麻衣(順天堂大学 医学部)
- 大塚 文男(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
11,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
専任医のみではなく地域に密着した医師(非専任医)もHIV診療に参加することが効率的であり、かかりつけ医の協力が不可欠である。しかし、総合診療医/プライマリケア医のHIV感染症の知識は不十分であり、現状のままでは実施が難しい。
このため、①総合診療医/プライマリケア医への教育、②総合診療医/プライマリケア医による医療スタッフへの講習会、③アプリケーションソフト(アプリ)やWebシステムを用いた知識普及と問題点の集積、④Web上での総合診療医と専門医との症例相談システムの確立、⑤電子カルテにHIV感染症アラートシステムの導入をし、早期発見・早期治療に繋げる、⑥集められた課題、得られた教育効果の分析・フィードバック・発表、からなる3ヵ年の計画を立案した。
このため、①総合診療医/プライマリケア医への教育、②総合診療医/プライマリケア医による医療スタッフへの講習会、③アプリケーションソフト(アプリ)やWebシステムを用いた知識普及と問題点の集積、④Web上での総合診療医と専門医との症例相談システムの確立、⑤電子カルテにHIV感染症アラートシステムの導入をし、早期発見・早期治療に繋げる、⑥集められた課題、得られた教育効果の分析・フィードバック・発表、からなる3ヵ年の計画を立案した。
研究方法
厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いてデータ解析を実施した。このNDBは電子化されたデータのみで約100億件、特定健診保健指導データは全データの約1億件超を格納している。この中で、2009年から2019年の間に抗HIV薬を内服中の患者が28,089名抽出された。これに本邦で治療実施中であるHIV患者のほぼ全員が登録されている。
性行為感染症や帯状疱疹の既往がある患者にHIVスクリーニング検査の実施を勧めるシステムを導入した。HIV感染症は初診時に見逃される事も多いが、ハイリスク患者を自動的に検出するアラートシステムにより早期発見に寄与することが明らかになった。
ICTツールによる患者医療者間の遠隔服薬支援ネットワークを作成し、12週間の使用を行った。この結果につき、クリニックでの使用と大学病院での使用データを併せて多施設行動研究を行った。結果としてツールを使用したHIV感染者の全員が「医療者に見守られていることに安心感があった」、対面診療ではできなかった質問ができたり、服薬忘れに対応できるなどの利点があった。ICTツールによるHIV感染者の遠隔診療支援は、対面診療を補う重要な役割が認められた。
ICTを用いた教育システムを構築したことにより、今後HIV感染症の早期発見、長期管理に関する教育を総合診療/プライマリケア医に実施することが可能となった。このシステムにより、一方的な教育ではなく、回答者の問題への正誤を分析することにより診療の障壁となっている問題点の抽出が可能となった。
性行為感染症や帯状疱疹の既往がある患者にHIVスクリーニング検査の実施を勧めるシステムを導入した。HIV感染症は初診時に見逃される事も多いが、ハイリスク患者を自動的に検出するアラートシステムにより早期発見に寄与することが明らかになった。
ICTツールによる患者医療者間の遠隔服薬支援ネットワークを作成し、12週間の使用を行った。この結果につき、クリニックでの使用と大学病院での使用データを併せて多施設行動研究を行った。結果としてツールを使用したHIV感染者の全員が「医療者に見守られていることに安心感があった」、対面診療ではできなかった質問ができたり、服薬忘れに対応できるなどの利点があった。ICTツールによるHIV感染者の遠隔診療支援は、対面診療を補う重要な役割が認められた。
ICTを用いた教育システムを構築したことにより、今後HIV感染症の早期発見、長期管理に関する教育を総合診療/プライマリケア医に実施することが可能となった。このシステムにより、一方的な教育ではなく、回答者の問題への正誤を分析することにより診療の障壁となっている問題点の抽出が可能となった。
結果と考察
患者年齢が上がるごとに合併症の数の上昇が認められ、特に糖尿病、高血圧、脂質異常症の3疾患が多かった。AIDS関連悪性腫瘍よりも、非AIDS関連悪性腫瘍を有する患者のほうが多かった。
高齢化するHIV感染者の長期管理において生活習慣病が重要であることが明らかになった。特に高齢HIV感染者では抗HIV薬以外に多剤投与が行われている、Polypharmacyの問題が明確となった。また、本研究から得られた合併悪性腫瘍のデータは、今後のHIV感染者の癌検診での重要な指針になると考えられた。
HIV感染症アラートシステムは現在も継続して運用しており、今後も早期発見と早期治療に成果を出す可能性がある。このシステムは早期発見と治療のみならず、患者にワクチン接種のタイミングを知らせる、大腸ファイバーの受診時期を伝えるなどの面においても応用・発展が可能と思われる。
ICTを利用したコミュニケーションツールをHIV感染者と医師間で用いることにより、多くの感染者の安心感が得られることがわかった。また、対面診療では質問できにくいことも聞けるとの利点もあった。服薬アドヒアランス向上の可能性も示されており、今後は直接評価項目の設定等による評価システムの向上と大規模な実践が期待される。
教育に役立つWebシステムの開発を行い、約1,600名の総合診療医/プライマリケア医に教育する体制の構築をした。質問と感想は、「HIV感染症の基礎知識」「早期発見」「慢性期の管理」「治療」のパートに分かれている。令和元年6月から日本病院総合診療医学会の会員を対象に開始し、受講した医師には総合診療専門医の指導医認定資格の単位を与えている。
高齢化するHIV感染者の長期管理において生活習慣病が重要であることが明らかになった。特に高齢HIV感染者では抗HIV薬以外に多剤投与が行われている、Polypharmacyの問題が明確となった。また、本研究から得られた合併悪性腫瘍のデータは、今後のHIV感染者の癌検診での重要な指針になると考えられた。
HIV感染症アラートシステムは現在も継続して運用しており、今後も早期発見と早期治療に成果を出す可能性がある。このシステムは早期発見と治療のみならず、患者にワクチン接種のタイミングを知らせる、大腸ファイバーの受診時期を伝えるなどの面においても応用・発展が可能と思われる。
ICTを利用したコミュニケーションツールをHIV感染者と医師間で用いることにより、多くの感染者の安心感が得られることがわかった。また、対面診療では質問できにくいことも聞けるとの利点もあった。服薬アドヒアランス向上の可能性も示されており、今後は直接評価項目の設定等による評価システムの向上と大規模な実践が期待される。
教育に役立つWebシステムの開発を行い、約1,600名の総合診療医/プライマリケア医に教育する体制の構築をした。質問と感想は、「HIV感染症の基礎知識」「早期発見」「慢性期の管理」「治療」のパートに分かれている。令和元年6月から日本病院総合診療医学会の会員を対象に開始し、受講した医師には総合診療専門医の指導医認定資格の単位を与えている。
結論
NDBを用いた併存症研究により、HIV感染症診療における総合診療医等の非専任医の重要性が明確となった。HIV感染症の知識を非専任医に定期的に供給すると共に、総合診療医の知識が不足している部分を解析し、総合診療医がHIV診療を敬遠している理由を明らかにした。非専任医がHIV感染症を理解したり、アラートシステムを活用することにより、HIV感染症や梅毒を中心とした性行為感染症の早期発見に繋がることが期待される。早期発見と早期の治療開始により、2次感染の予防と治療費の削減が見込まれる。
公開日・更新日
公開日
2021-07-05
更新日
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