新型インフルエンザ等の感染症発生時のリスクマネジメントに資する感染症のリスク評価及び公衆衛生的対策の強化のため研究

文献情報

文献番号
202019027A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザ等の感染症発生時のリスクマネジメントに資する感染症のリスク評価及び公衆衛生的対策の強化のため研究
課題番号
20HA1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 清州(国立病院機構三重病院 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 裕正(独立行政法人国立病院機構 本部 総合研究センター 診療情報分析部)
  • 高橋 琢理(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 髙橋 佳紀(三重大学医学部附属病院 感染制御部)
  • 奥村 貴史(北見工業大学 工学部)
  • 中島 一敏(大東文化大学 スポーツ・健康科学部健康科学科)
  • 安田 貢(独立行政法人 国立病院機構 水戸医療センター 救命救急センター)
  • 井上 紀彦(国立病院機構本部 総合研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
29,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)のパンデミックに際して、現状のCOVID-19に対する対策をあらためて客観的に評価し、短期的に改善出来るところは改善に結びつけ、中期的にもより良い対応の方向性を検討する。これまで準備してきた対策について、基本にしたがってCOVID-19に対応出来るように改変して、現状の対策に貢献することを第二の目的とする。長期的には今後の新興感染症、特にヒト-ヒト感染を起こす感染症のパンデミックに備えた方策を提言したい。
研究方法
 奥村分担研究者は、地域のシステム開発や実務の支援を行いつつ、使用者にインタビューを行い、プログラミングの評価もあわせて行った。研究代表者、堀口分担研究者、井上分担研究者は、NCDAデータの定義と抽出仕様書を作成するとともに、データ管理、解析を継続して行った。二人の研究分担研究者はシステム的な評価に加え、継続的にデータ抽出するプログラムを開発し、また他の医療機関へ横展開するための仕様の評価を行った。安田研究分担者は茨城県の患者の集中治療と患者の入院調整に携わりながら、患者情報を収集管理し、暫定的な解析を行い、発症日と重症度の関連性を示した。
 高橋(琢)研究分担者は、発生動向調査データを解析するとともに、NCDAデータとの整合性を検討した。高橋(佳)研究分担者は、これまでのデータを整理し、あらたなデータを購入準備し、解析方法の再確認を行うとともに、今後の解析の準備を行った。中島研究分担者はWeb-baseでWHO、英国、米国の詳細な枠組みや戦略、実際の優先順位や接種プログラム等を調査し、整理し資料とした。
結果と考察
 日本におけるCOVID-19に対する初期対応状況について評価を行った。HER-SYSとCOCOAはいずれも期待された機能を果たせず、現場の混乱を助長しただけであった。一方、これまでにパンデミックの準備として作成してきたツールはいずれも実効性が評価され、他の枠組みで実用化が進んでいる。地方自治体においては、業務改善のために、また情報共有のために、多くのシステムが開発されていたが、いずれも現場のニーズを反映して作成されたものであった。
 NCDAデータベースは、NHOの67病院が参加、約50,000床、年間実患者数約90万人のデータベースであり、診療日翌日には本部のデータベースに検査値や投薬の情報を含む診療データが届くことになっている。急性肺炎、インフルエンザ、COVID-19の重症度や医療負荷のための指標が算出出来るように、週単位でデータ抽出を行い、COVID-19の新規入院患者数、在院患者数、在院日数、入院症例における死亡退院割合、それぞれの年齢群別分析、投薬内容、重症病床使用状況、外来におけるコロナ様・インフルエンザ様症候群例数(CLI/ILI)とSARS-CoV-2陽性率、インフルエンザ陽性率等などを解析し、流行状況、重症度、および医療負荷を評価することができた。また、定期的なデータ抽出が可能になった時点より、データを厚生労働省に週単位で提供できた。これらのデータ解析を通して、継続的にデータが抽出できる環境構築ができ、他の医療機関への横展開も可能であることがわかった。これらは、感染症法に基づく発生動向調査データとも一致し、茨城県における実際の医療現場でのデータから詳細な解析も可能であった。
 抗ウイルス薬について、これまでに行われてきた解析方法をBrush upし、これまでの5シーズンの解析結果を評価し、今般のCOVID-19とインフルエンザの同時流行の解析のための準備を行った。
 WHOは、SAGEのワーキンググループが、モデリングを用いたワクチン優先順位と効果的なプログラム構築のためのツールを開発提供している。米国及び英国では、予防接種の目的が死亡、重症の予防、基本的公共機能(特に医療公衆衛生)の維持とされていた。日本では、その目的を「死亡者や重症者の発生をできる限り減らし、『結果として新型コロナウイルス感染症のまん延の防止を図る』」としており、優先順位が医療従事者と高齢者のみとする優先順位と目的の後半部分が整合していない。目的と優先順位の整合性は、接種計画の根本であるため、一貫した議論が必要と考えられた。
結論
 今般のCOVID-19パンデミックに際しては、これまでの政府パンデミックプランが利用されることは無く、対策が後手に回り急ごしらえで開発されたシステムはいずれも期待された成果を挙げることはできなかった。結果的に成果を挙げることができたのは、以前から継続的に行ってきたNCDAからのデータ解析であり、一方では以前から準備していたFFHシステムやCIRCLE法はその実効性が確認されたところ、実施されなかったことが残念である。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2022-03-29
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-

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文献番号
202019027Z