文献情報
文献番号
202019018A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国の狂犬病予防体制の推進のための研究
課題番号
19HA1008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
前田 健(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究分担者(所属機関)
- 井上 智(国立感染症研究所 獣医科学部)
- 西浦 博(国立大学法人京都大学)
- 西園 晃(大分大学医学部感染分子病態制御講座)
- 伊藤 直人(岐阜大学応用生物科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,510,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
狂犬病については、我が国では60 年以上国内での感染事例がないが、これは昭和25年に施行された狂犬病予防法によるところが大きい。狂犬病予防法は犬の飼い主に所有する犬について以下の3つの義務を課している:①登録の義務、②予防注射の接種義務、③鑑札・注射済票の装着義務。これに基づき、自治体では犬の登録と鑑札・注射済票の交付等の事務を実施している。
本研究においては、現行の狂犬病予防に係る規制を分析し、狂犬病予防体制を推進するための方策を提言することを目標とする。研究担当者は、現行の狂犬病予防法における課題の抽出とその対策について検討する。
本研究においては、現行の狂犬病予防に係る規制を分析し、狂犬病予防体制を推進するための方策を提言することを目標とする。研究担当者は、現行の狂犬病予防法における課題の抽出とその対策について検討する。
研究方法
各分担者が独自に調査研究を進めるとともに、年5回の班会議を開催し、各課題に対して検討した。
結果と考察
1.本年度は14年ぶりに狂犬病患者が国内で発生し、その調査に協力し、ウイルス分離並びにウイルス由来について検討した。、狂犬病予防法で登録抹消をする際、何歳を上限とすべきかを議論した。専門家からの情報提供により25歳を上限とするのが適切であると判断された。海外における、登録・マイクロチップの装着・予防接種の義務・Tagの装着についてまとめ、国内と比較した。更には、ワクチンの接種間隔について議論し、2年は持続することを議論するとともに問題点を抽出した。国内のイヌの飼育頭数は2020年のペットフード協会の調査で8489千頭であり、実際に登録されている6154316頭と大きくかけ離れていることが示された。また、予防接種済票交付数は4390580頭であり、登録頭数の71.3%、ペットフード協会の推定数から51.7%であることが確認された。また、集団ワクチン接種率が高い自治体は、全体のワクチン接種率が高いことが確認された。
2.海外における狂犬病サーベイランス等に係る検査や対応準備及び関連情報の収集体制状況について調査を行って国内の体制整備を強化する方法等ついて検討を行った。
3.すでに狂犬病の制圧に成功したヨーロッパ各国やオーストラリアでは、飼育犬に対する義務的な予防接種が実施されていないことが判明した。一方、アジアでは、日本と同様に、飼育犬に対する予防接種を義務化している国も存在した。さらに、清浄国のイギリスおよびオーストラリアにおいて、狂犬病が発生した際の対策についても調査を行った。その結果、イギリスでは、発生時の動物へのワクチン接種を実施することに、オーストラリアよりも慎重であることが明らかとなった。
4.これまでの狂犬病伝播動態に関するモデル研究、リスク評価研究に関する概要を理解することができた。研究班会議ではこのようなリスク評価の仕組みについて他の研究班員と共有し、これまでに積み重ねられてきた研究で不足している点や検討を要する点について議論を重ねた。最終年度には日本の独自性に着目した狂犬病リスクの定量化を行う。
5.(1)我々が以前に報告した国内飼育犬のワクチン接種後抗体保有率と持続に関する論文を資料とし、日本国内でのワクチン接種犬のウイルス中和抗体価の持続期間検討のための材料にした。(2)日本渡航医学会トラベルワクチン部会の協力の元に、国内主要トラベルクリニックを対象にした前向き調査を計画した。倫理委員会(大分大学 承認番号1923)の承認を受け開始の予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大のため国際間での渡航制限が発出され、充分な症例数を集めることが困難となった。そのため、2019年までの国内主要トラベルクリニックでのデータを収集した。一部病院のデータにとどまるが、海外で動物からの曝露を受けた患者のほとんどは曝露後発症予防策(ワクチン接種)を受けていた。さらに狂犬病が国内に常在しない日本国内でどの程度ヒト用狂犬病ワクチンが供給され、使用されているのかを把握するために、国内供給メーカー(GSK, KMバイオロジクス)、海外製ワクチン輸入業者大手3社(IMMC, MONZEN, TSUBAME LABO)に紙面インタビューを行い、国内で流通しているヒト用狂犬病ワクチン総数の調査を行った。2019年7月にラビピュール筋注用(GSK)が承認・国内流通が始まったことにより、2019年には80,000ドーズ、2020年以降は年間200,000ドーズの輸入が確保され、今後製造が中止される予定のKMバイオロジクス社(旧化血研)製のワクチンの供給不足を解消できると考えられた。さらにこれまで国内トラベルクリニックで医師による個人輸入で賄われていた国内未承認ワクチンのこれまでの輸入実績と併せると、200,000∼300,000ドーズが国内では流通していると推計された。
2.海外における狂犬病サーベイランス等に係る検査や対応準備及び関連情報の収集体制状況について調査を行って国内の体制整備を強化する方法等ついて検討を行った。
3.すでに狂犬病の制圧に成功したヨーロッパ各国やオーストラリアでは、飼育犬に対する義務的な予防接種が実施されていないことが判明した。一方、アジアでは、日本と同様に、飼育犬に対する予防接種を義務化している国も存在した。さらに、清浄国のイギリスおよびオーストラリアにおいて、狂犬病が発生した際の対策についても調査を行った。その結果、イギリスでは、発生時の動物へのワクチン接種を実施することに、オーストラリアよりも慎重であることが明らかとなった。
4.これまでの狂犬病伝播動態に関するモデル研究、リスク評価研究に関する概要を理解することができた。研究班会議ではこのようなリスク評価の仕組みについて他の研究班員と共有し、これまでに積み重ねられてきた研究で不足している点や検討を要する点について議論を重ねた。最終年度には日本の独自性に着目した狂犬病リスクの定量化を行う。
5.(1)我々が以前に報告した国内飼育犬のワクチン接種後抗体保有率と持続に関する論文を資料とし、日本国内でのワクチン接種犬のウイルス中和抗体価の持続期間検討のための材料にした。(2)日本渡航医学会トラベルワクチン部会の協力の元に、国内主要トラベルクリニックを対象にした前向き調査を計画した。倫理委員会(大分大学 承認番号1923)の承認を受け開始の予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大のため国際間での渡航制限が発出され、充分な症例数を集めることが困難となった。そのため、2019年までの国内主要トラベルクリニックでのデータを収集した。一部病院のデータにとどまるが、海外で動物からの曝露を受けた患者のほとんどは曝露後発症予防策(ワクチン接種)を受けていた。さらに狂犬病が国内に常在しない日本国内でどの程度ヒト用狂犬病ワクチンが供給され、使用されているのかを把握するために、国内供給メーカー(GSK, KMバイオロジクス)、海外製ワクチン輸入業者大手3社(IMMC, MONZEN, TSUBAME LABO)に紙面インタビューを行い、国内で流通しているヒト用狂犬病ワクチン総数の調査を行った。2019年7月にラビピュール筋注用(GSK)が承認・国内流通が始まったことにより、2019年には80,000ドーズ、2020年以降は年間200,000ドーズの輸入が確保され、今後製造が中止される予定のKMバイオロジクス社(旧化血研)製のワクチンの供給不足を解消できると考えられた。さらにこれまで国内トラベルクリニックで医師による個人輸入で賄われていた国内未承認ワクチンのこれまでの輸入実績と併せると、200,000∼300,000ドーズが国内では流通していると推計された。
結論
狂犬病法予防法の関する情報収集を行い、課題を抽出し、一部に関しては解決策を提出した。今後も更なる検討が必要である。
公開日・更新日
公開日
2022-03-29
更新日
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