我が国における分娩にかかる費用等の実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
200805032A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における分娩にかかる費用等の実態把握に関する研究
課題番号
H20-特別・指定-032
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
可世木 成明(社団法人 日本産婦人科医会 医療対策部(1)医療部会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、全国分娩取り扱い施設における分娩に係る費用の総額及びその内訳(医療経費をはじめ、人件費、間接経費など)について調査し、その決定要因を明らかにするために我が国初の大規模な実態調査として企画した。
 現在、崩壊の危機に瀕している周産期医療現場に対する早急な対応を考えること、政府の少子化対策推進の観点から「妊婦が最初から出産費用を負担しなくても済む制度設計の検討」の資料とすること、そして本研究により、分娩費用に及ぼす地域の特異性や施設運営母体による影響を明らかにし、今後の周産期医療の提供体制について適切な対応策を講じるための資料とすることを目的とした。
研究方法
 平成21年1月日本産婦人科医会の全国の分娩取り扱い登録施設(病院・診療所2886施設)に郵送によるアンケート調査を行った。
1.分娩費には必要経費がすべて包含されているか
2.分娩入院費用の現状
3.今後の分娩入院費用引き上げ予定と予定額
4.増額できない理由
5.適正と考えられる分娩入院費用総額
結果と考察
 調査結果から以下の点が明らかになった。本調査は出産育児一時金が35万円と設定されていた時点のものであるが、全国の分娩入院費用は平均423,957円で、正規分布を示すものの、施設間には4倍の格差、都道府県では1.5倍の格差があった。分娩入院費用の内訳では入院料、分娩料が、総額の70%を占め、分娩入院費用の主たる要因になっていた。
 医療機関が母児の安全性を最重点とした分娩管理をするためには、産科・麻酔科・小児科医師・助産看護スタッフの確保、常時緊急事態に備えたダブルセットアップ体制の確保などが不可欠であるが、使用される物品や人件費など分娩に直接関与した費用だけが積算されており、不十分であることが明らかになった。これらの費用を分娩費に反映させるべくコスト換算し、それに基づく適正な分娩費設定が必要と考えられる。今回の調査ではこれらの安全な分娩管理を行う上で適正と考えられる費用は全国平均538,614円との回答であった。
 分娩入院費用を決定する要因としては、施設規模やその機能の差よりも地域毎の公的施設や近隣施設の分娩入院費用によって低い方に誘導されていることが判明した。さらに、都道府県毎の平均分娩入院費用は住民所得と明確な相関性があり、分娩入院費用は地域の経済状況に依存することも明らかになった。
結論
 全国の分娩入院費用は平均423,957円であった。都道府県により1.5倍の格差が認められた。医療機関においては常時緊急事態に備えた安全な分娩管理を行う上で適正と考えられる費用は全国平均538,614円との回答であった。

公開日・更新日

公開日
2009-05-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200805032C