文献情報
文献番号
202019003A
報告書区分
総括
研究課題名
環境中における薬剤耐性菌及び抗微生物剤の調査法等の確立のための研究
課題番号
H30-新興行政-一般-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
金森 肇(東北大学大学院医学系研究科 内科病態学講座 総合感染症学分野)
研究分担者(所属機関)
- 黒田 誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター )
- 楠本 正博(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門)
- 渡部 徹(山形大学 農学部)
- 山口 進康(大阪健康安全基盤研究所 衛生化学部 生活環境課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,738,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国内外の河川、下水等の環境中から薬剤耐性菌が検出されており、ワンヘルス(人・動物・環境)の観点から環境の薬剤耐性(AMR)対策が注目されている。環境中における薬剤耐性や抗菌薬の調査法が確立されておらず、本邦の環境中の薬剤耐性菌および抗菌薬の実態は明らかではない。本研究班の研究目的は、次の通りである。1)環境中の薬剤耐性及び抗菌薬の状況を把握するための調査方法の確立、2)本研究班の大都市圏の成果を踏まえ、全国的な環境水のモニタリング調査へ発展、3)ワンヘルスの観点から環境・動物・ヒトにおける特定の薬剤耐性菌や耐性遺伝子の循環についての研究を推進、4)環境(特に下水排水)の薬剤耐性菌の調査及び文献レビューにより、本邦の環境中の薬剤耐性や抗菌薬がヒト及び動物へ与える影響に関するリスク評価。
研究方法
令和2年度においては、研究計画に従い、本邦における環境AMRおよび残留抗菌薬の調査法の確立に向けた研究を実施し、環境水の全国的なサーベイランスおよび地域の実態調査を継続した。また、国内外における環境中の薬剤耐性に関する現状と課題を明らかにするため、環境中の薬剤耐性に関する文献レビューとリスク評価を行った。
結果と考察
本研究班では環境中の薬剤耐性および残留抗菌薬の調査法の確立に向けた研究を行い、各地方衛生研究所の協力を得て全国的な環境水AMR調査を実施した。環境AMRモニタリングに資する作業手順書を作成し、全国展開するための体制が整備された。メタゲノム解析法と培養法による調査法を用いて、下水処理場の放流水、都市下水、河川水、病院排水、養豚場の下水における薬剤耐性菌および耐性遺伝子の検出、さらに下水処理水および病院排水の抗菌薬分析を行うことで、対象地域の環境水の薬剤耐性の実態を明らかにした。本研究班で実施した全国的なサーベイランスにより環境中の薬剤耐性の現状を把握するためのデータが得られた。本研究結果と国内外の文献情報をもとに、環境中の薬剤耐性菌および残留抗菌薬の人・動物に与える影響を評価する方法を確立し、日本における環境中の薬剤耐性および抗菌薬の実態調査を充実させ、薬剤耐性ワンヘルス・アプローチを推進していく必要がある。
結論
環境中の薬剤耐性菌および残留抗菌薬の人・動物に与える影響を評価する手法を確立し、日本における環境中の薬剤耐性および抗菌薬の実態調査を充実させることが重要である。メタゲノム解析によるAMRの環境水中のモニタリングは、薬剤耐性遺伝子の全体像の把握、あるいは他地域との比較による地域特有の耐性遺伝子の検出に有用であると考えられた。培養法は、これまで分離されていない薬剤耐性菌を同定し、詳細に解析することで、地域における薬剤耐性の実態把握に有用と考えられた。全国的なサーベイランスにより環境中の薬剤耐性の現状を把握するためのデータが得られ、日本の環境中の薬剤耐性因子や抗微生物薬がヒトおよび動物へ与える影響についてリスク評価を行うための基盤を作ることができた。
公開日・更新日
公開日
2022-03-29
更新日
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