食品による窒息の要因分析-ヒト側の要因と食品のリスク度-

文献情報

文献番号
200805012A
報告書区分
総括
研究課題名
食品による窒息の要因分析-ヒト側の要因と食品のリスク度-
課題番号
H20-特別・指定-017
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
向井 美惠(昭和大学 歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 有賀 徹(昭和大学 医学部)
  • 大越 ひろ(日本女子大学 家政学部)
  • 弘中 祥司(昭和大学 歯学部)
  • 堀口 逸子(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
窒息に関わるヒト側の要因と食品側の要因を複合的に解析し、効果的な予防法やリスクを減らす食べ方などを明らかにし、食品による窒息事故を予防するための具体的な行政的対応の検討に資することを目的とする。
研究方法
以下の4つの研究を同時に進行してお互いの研究を関連させつつ遂行した。1.窒息事故事例の分析、2.窒息リスクの高い食品の分析、3.食品の窒息に関する意識調査、4.ヒト側の要因に関する要因分析
結果と考察
1.窒息事故事例の分析では、日本救急医学会救急科専門医指定施設など433施設を対象に調査し、回答率は43%であった。最近8カ月間に食品による窒息事故で救急診療を受けた小児は26例(平均は3.0歳)で、原因食品はアメ5例、ピーナッツ・豆類3例などで、大きさは記載されていたすべて約1cm径であった。応急処置として、背部叩打が多く行われており、ある程度一般家庭に浸透していると考えられた。また、介護老人福祉施設に入居している高齢者437名を対象にした調査では、過去約3年間の窒息の既往は11.6%であった。窒息事故では約半数が施設で対応しており、施設職員への適切な対処方法の徹底の必要性が示唆された。
2.窒息リスクの高い食品である米飯は、比重(充填量)の増加に伴い、顕著にテクスチャー特性の硬さ、凝集性、付着性が増加した。食パンは45%の水を添加すると付着性が発現し、パンがつまると取り出しにくいことが示唆された。また、グルコマンナンの配合を減量した市販の「こんにゃく入りゼリー」の物性解析からは「一般のゼリー」と明らかに異なる食品物性であることを認識した上での摂取の必要性が示唆された。
3.食品の窒息に関する意識調査として15歳以下の子どもをもつ1015名の母親を対象にWebサイトによる質問紙調査では、窒息はこの1年間に6.2%が経験し、窒息を注意している親は60%以上であった。食品による窒息事故は、日常的におこっており、そのリスクは母親も認識し、注意していると考えられた。
4.窒息を起こしうるヒト側のリスク度として、食物と空気の交差部位である中咽頭腔の成長変化を明らかにでき、窒息リスクの高い形態も分類できた。
若年成人と高齢者の中咽頭の形態の比較から中咽頭下端の形態の差が大きく窒息との関連の研究の必要性が示唆された。
結論
窒息事故の防止には多面的な対応の必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-05-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200805012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.窒息事故事例の分析、2.窒息リスクの高い食品の分析、3.食品の窒息に関する意識調査、4.ヒトの咽頭腔の加齢変化の3次元形態分析によって、窒息に関わるヒト側の要因と食品側の要因のリスクを複合的に解析することができた。また、疫学調査から窒息の頻度や窒息事故への意識、窒息頻度の高い高齢者の危険因子を明らかにすることができた。
臨床的観点からの成果
救急科専門医指定施設における小児(平均3.0歳)の窒息事故原因食品は、菓子が多く、大きさは約1センチ径であった。また、15歳以下の子どもの母親の調査での窒息経験は1年間に6.2%で、両調査とも応急処置は背部叩打が多く行われていた。介護老人福祉施設のコホート調査からは、過去約3年間の窒息の概往は11.6%で原因食品は野菜、果物が多く、危険因子は認知機能の低下、食事自立、臼歯部咬合の喪失であった。これらの調査から窒息の臨床的な実態が明らかになった。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
平成20年5月8日医薬食品局食品安全部基準審査課・企画情報課等からから本研究に先行する「食品による窒息の現状把握と原因分析」研究を基に「食品による窒息事故に関するついて」都道府県等への適切な対応のお願いが発出された。本研究はこれに続く研究として窒息に関わるヒト側の要因と食品側の要因を複合的に解析したもので、4月30日の厚労省のHPに公開されたところである。
その他のインパクト
本研究の遂行中にも新聞数社の取材を受け、窒息事故の予防記事として掲載された。また、NHK総合テレビの「週刊子どもニュース」等でも放映された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
投稿中
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-