就労継続支援B型事業所における精神障害者等に対する支援の実態と効果的な支援プログラム開発に関する研究

文献情報

文献番号
202018013A
報告書区分
総括
研究課題名
就労継続支援B型事業所における精神障害者等に対する支援の実態と効果的な支援プログラム開発に関する研究
課題番号
19GC1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
八重田 淳(筑波大学 人間系)
研究分担者(所属機関)
  • 砂見 緩子(帝京大学 医療技術学部 看護学科)
  • 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 小澤 温(筑波大学 人間系)
  • 小澤 昭彦(岩手県立大学 社会福祉学部)
  • 若林 功(常磐大学 人間科学部)
  • 山口 明日香(藤井 明日香)(高松大学 発達科学部)
  • 藤川 真由(慶應義塾大学 医学部)
  • 北上 守俊(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 作業療法学科)
  • 前原 和明(秋田大学 教育文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,560,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害特性等に合わせた適切な支援により、利用者の利用時間・日数の増加、および利用者の工賃向上を実現した実績のある就労継続支援B型事業所(以下、B型事業所とする)における支援内容や工夫等を整理し、効果的な支援プログラムを開発し、その実施マニュアルを作成するものである。
研究方法
本研究は、神奈川県におけるB型事業所を利用する精神障害者への面接調査と、全国で特に精神障害のある利用者を多く持つB型事業所を利用する精神障害者に対する郵送調査を行った。同時に、秋田県、岩手県、茨城県、宮城県、新潟県、中国・四国・九州・沖縄地方における質的・量的研究を実施した。
結果と考察
質的調査の結果、(1)ルーティンをもつことによる通所に対する懸念の軽減と現実的な目標設定、(2)利用者本人にとっての作業の価値や通所の意味づけを見出すことによる通所継続の強化が必要であることが明らかとなった。量的調査の結果、現在の工賃額や総収入に対して満足していないことが明らかになった。回答者の工賃に関して、10,000~15,000円未満(20.8%)の金額帯の割合が最も多く、希望する工賃額として最も多い金額帯は、30,000~45,000円未満であった(22.5%)。すなわち、現実の工賃額と希望の工賃額の差は約20,000円ほどであった。また、工賃に直接関係しない質問項目も含め全体的な回答傾向として、ステップアップや最低賃金を得る活動への関心、経済的支援の必要性など、収入や経済的な問題についての回答割合が高いことが特徴であった。特に働きがいについては、B型事業所における工賃の高低というより、総収入に対する充足感が強く関連していた(B = 0.140, 95%CI = 0.044, 0.236, P = 0.004)。半数以上は工賃月額が少なく経済的な充足感を感じていないことがわかった。この結果からは、利用日数を単純に増加すれば良いというわけではないことが推測される。また、一般企業への就職には半数以上が関心を持っているものの、A型事業所、就労移行支援事業所、一般雇用のステップアップに対しては、3割近くが希望していないという事実も見逃せない。B型事業所と就労移行支援事業所の併用、B型事業所の通所と一般企業での就労の両立、B型事業所に通所しながらステップアップが可能となるシステムの整備も課題となる。
結論
B型事業所の精神障害者の効果的な支援基盤として、出勤時間の柔軟性、休憩スペースの確保、作業と休憩のバランス、家族とキーパーソンの強力、体調に応じた作業調整、コミュニケーションの適宜性、作業同盟、寛容な職場風土作りが挙げられる。利用者の8割以上はB型事業所を働きがいのある場所として認識しているが、今後の研究では、働きがいに対する認識のみではなく、B型事業所の利用が地域での精神障害者の生きがいにどの程度寄与し得るものかを探ることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-09-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202018013B
報告書区分
総合
研究課題名
就労継続支援B型事業所における精神障害者等に対する支援の実態と効果的な支援プログラム開発に関する研究
課題番号
19GC1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
八重田 淳(筑波大学 人間系)
研究分担者(所属機関)
  • 砂見 緩子(帝京大学 医療技術学部 看護学科)
  • 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 小澤 温(筑波大学 人間系)
  • 小澤 昭彦(岩手県立大学 社会福祉学部)
  • 若林 功(常磐大学 人間科学部)
  • 山口 明日香(藤井 明日香)(高松大学 発達科学部)
  • 藤川 真由(慶應義塾大学 医学部)
  • 北上 守俊(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 作業療法学科)
  • 前原 和明(秋田大学 教育文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、就労継続支援B型事業所(以下、B型事業所とする)における精神障害者に対する支援の実態と効果的なプログラム開発を行うための基礎資料を得ることを目的とした。
研究方法
東京、神奈川、埼玉、鳥取、福島、大阪のB型事業所6箇所のサービス管理責任者に対し面接内容妥当性のためのヒアリングを実施した後、都心型の面接調査対象として都内5箇所、地方型の面接調査対象として8箇所(茨城1、愛媛1、香川1、熊本1、新潟2、秋田2)の計13箇所におけるB型事業所に対する面接調査を実施した。2年目の質的研究では、都市部の4つのB型事業所を利用する精神障害者10名を対象とした面接調査を実施した。1年目の量的研究は、全国のB型事業所を対象に、階層的ランダムサンプリングによる4000箇所を対象とした郵送調査を実施した(1442件の回答;回収率36.1%)。2年目の量的研究は、精神障害のある利用者が比較的多い37箇所のB型事業所における利用者(n=326)を対象とした横断調査を行い、働きがいと工賃や総収入に関する充足感などとの関連を検証した。
結果と考察
精神障害者への効果的な支援内容として、利用者が社会の役に立っていると認識できる作業の提供、利用者が社会参加できる仕組みづくり、利用者への精神的ケア等の即時介入、福利厚生やレクレーションの提供、定期的な動機付け面接による支援、グループ就労の実施、休憩場所の確保、音楽療法、スポーツ療法、認知行動療法等が挙げられた。2年目の質的研究の結果、B型事業所の通所継続を促す要因として、職業生活上のルーティンと現実的な目標設定をもつことと、作業価値と通所の意味づけを見出すことが抽出された。以上から、B型事業所における作業に対する苦手意識の緩和を促す支援、そして体力への不安を考慮した現実的な目標設定により作業達成感が促す支援体制の構築が重要であると考えられる。1年目の量的研究の結果、平均工賃月額の高低に関連する変数は、「精神障害のある登録利用者数」、「精神障害のある利用者のうち、過去3ヶ月の利用で最も少なかった月当たりの利用日数」、「年間事業運営費」、「就労継続A型事業所や就労移行支援事業所、一般雇用につながったケースの有無」であることがわかった。2年目の量的研究の結果、現在の活動日数などに不満を持つことは多くないが、現在の工賃額や総収入に対して満足していないことが明らかになった。回答者の工賃に関して、10,000~15,000円未満(20.8%)の金額帯の割合が最も多く、希望する工賃額として最も多い金額帯は、30,000~45,000円未満であった(22.5%)。すなわち、現実の工賃額と希望の工賃額の差は約20,000円ほどであった。また、工賃に直接関係しない質問項目も含め全体的な回答傾向として、ステップアップや最低賃金を得る活動への関心、経済的支援の必要性など、収入や経済的な問題についての回答割合が高いことが特徴であった。特に働きがいについては、B型事業所における工賃の高低といより、総収入に対する充足感が強く関連していた(B = 0.140, 95%CI = 0.044, 0.236, P = 0.004)。調査結果から、B型事業所と就労移行支援事業所などの併用やB型事業所の通所と一般企業での就労の両立など、B型事業所に通所しながらステップアップが可能なシステムの整備が必要となると示唆された。
結論
今後、B型事業所における工賃と利用率を向上させるためには、利用者への動機付け、体力強化、個別目標の選択、より豊かな地域活動、自然や農業とのふれあい、ステップアップ挑戦への機会など、利用者が豊富なサービスメニューから自身で選択できるようなプログラム体制を構築することが重要となる。作業工賃を含めた総合的な経済支援、農業などの地域特性を生かした事業展開、健全な事業所運営のコンサルテーション、A型事業所・就労移行支援事業所・一般雇用へのステップアップを予測するアセスメントの開発、B型事業所に特化したサービス管理者および支援員への専門研修実施は喫緊の課題である。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202018013C

収支報告書

文献番号
202018013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,828,000円
(2)補助金確定額
7,479,376円
差引額 [(1)-(2)]
2,348,624円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,291,974円
人件費・謝金 279,443円
旅費 14,629円
その他 2,625,330円
間接経費 2,268,000円
合計 7,479,376円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-