文献情報
文献番号
202018010A
報告書区分
総括
研究課題名
地域精神保健医療福祉体制の機能強化を推進する政策研究
課題番号
19GC2003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
- 野口 正行(岡山県精神保健福祉センター)
- 川副 泰成(国保旭中央病院神経精神科)
- 椎名 明大(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
- 瀬戸 秀文(福岡県立精神医療センター太宰府病院)
- 松田 ひろし(全国精神医療審査会連絡協議会)
- 佐竹 直子(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
29,537,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地域精神保健医療福祉制度の充実により精神障害者が地域で安心して自分らしく生活できるようにするため、エビデンスに基づいた効果的な精神保健医療福祉サービスを地域でより効果的に展開するための具体的かつ実現可能な提言を行うことを目的とする。
研究方法
地域精神保健医療福祉体制の機能強化に関連する、1.自治体による精神障害者等支援のあり方、2.精神科外来の機能強化、3.措置入院の適正化、4.権利擁護のあり方、5.精神科医療の国際比較 に関する課題について、以下の分担研究班で課題の検討状況を共有しつつ、調査研究を実施した。
精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に関する研究(野口正行)
精神科外来機能強化に関する研究(川副泰成)
措置入院及び退院後支援のあり方に関する研究(椎名明大)
措置通報及び措置入院の実態に関する研究(瀬戸秀文)
精神医療審査会のあり方に関する研究(松田ひろし)
精神障害者の意思決定及び意思表明支援に関する研究(藤井千代)
精神保健医療福祉制度の国際比較(佐竹直子)
精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に関する研究(野口正行)
精神科外来機能強化に関する研究(川副泰成)
措置入院及び退院後支援のあり方に関する研究(椎名明大)
措置通報及び措置入院の実態に関する研究(瀬戸秀文)
精神医療審査会のあり方に関する研究(松田ひろし)
精神障害者の意思決定及び意思表明支援に関する研究(藤井千代)
精神保健医療福祉制度の国際比較(佐竹直子)
結果と考察
自治体による精神障害者等支援のあり方については、全国の市区町村、精神保健福祉センターを対象に人員配置や業務実態、精神保健業務推進体制に関する課題や機関間の役割分担等について調査を実施した。この調査結果を踏まえて精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの概念整理を行い、厚労省の実施する検討会に調査結果及び自治体の役割の整理等に係る資料を提出した。精神科外来の機能強化については、包括的支援マネジメント(ICM)の実装による効果検証のため前向き調査を継続している。またICM導入基準の適正化のため、ICM導入基準各項目の重みづけを行い、新たなカットオフポイントを定めた。さらに精神科医による往診・訪問診療を積極的に実施している医療機関を対象としてインタビュー、アンケート調査および後ろ向き調査により、現行制度における往診・訪問診療の課題を検討した。医療から福祉への情報提供のあり方を検討するため、地域で精神障害者支援に従事している精神保健福祉士を対象としたインタビューを実施し、福祉関係者が必要としている医療からの情報提供のあり方を示した。措置入院の適正化については措置入院業務に関する警察官への意識調査を実施した。警察官の多くは精神保健福祉法を意識して業務に当たっており、保健所に対しては人員配置の薄さや迅速性に欠けることを、指定医に対しては保護ないし逮捕時の被通報者の状態像が軽視されていることを懸念する声が多かった。警察官にとっては、保健所及び指定医との相互理解を通じた連携の強化が重要である可能性が示唆された。また、精神保健指定医が適正な措置診察を行うために必要とされる知識及び技術を効率的に習得できる修練方法を開発するため、架空事例に基づく措置診察シミュレーションを含むオンライン研修を行った。措置入院者の前向きコホート調査を継続中であり、入院時社会機能をPSPに基づいて潜在クラス分析により分類を行ったところ、社会機能が中等症とされた者が最も措置入院継続期間が長く、PSPがそれより重症または軽症の場合、措置入院継続期間が短くなっていた。今年度は、COVID-19の全国的な拡大を受け、全国の措置入院を扱う医療施設を対象に、COVID-19陽性/疑似例への対応の実態についても調査した。単科病院においてもCOVID-19陽性/疑似例への対応が求められおり、軽症例であれば対応可能であり、今後は単科病院であっても、身体合併症への対応できる体制の充実がさらに重要となることが示唆された。権利擁護のあり方については、精神医療審査会の審査状況に関するモニタリングを行うとともに、これまでに全国の精神医療審査会事務局から本研究班に報告された要検討事例137件の質的分析を行った。その結果、現行の運営マニュアルでは対応困難な課題が多数浮き彫りとなり、マニュアルの改定の必要性が示唆された。また、COVID-19感染拡大下においても入院中の精神障害者の権利擁護のための個別支援を実施するため、オンライン面会のあり方について検討を始めた。精神科医療の国際比較については、イングランドの地域精神保健システムについてその変遷と現在のシステム、特にNew Long Stay防止、サービスの連携、精神疾患予防のあり方について調査した。わが国においても、今後はより幅広い精神疾患を対象とし、身体科やかかりつけ医との連携など広くメンタルヘルスサービスを盛り込んでいく必要があると考えられた。
結論
研究はほぼ計画通り進行しており、精神障害にも対応した地域包括ケアの具現化に貢献できる地域精神保健医療福祉サービス提供のあり方の提言につなげることができると思われる。
公開日・更新日
公開日
2021-09-14
更新日
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