市場性を備えた良質な高齢者住宅の供給とケアサービスの附帯のさせ方に関する研究

文献情報

文献番号
200801035A
報告書区分
総括
研究課題名
市場性を備えた良質な高齢者住宅の供給とケアサービスの附帯のさせ方に関する研究
課題番号
H20-政策・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
井上 由起子(国立保健医療科学院 施設科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 賢一郎(日本社会事業大学 専門職大学院)
  • 生田 京子(名古屋大学 施設計画推進室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,020,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中重度者向けの施設に比べて整備の遅れが著しい高齢者住宅について,低所得者配慮を行いつつ、サービス附帯のあり方を踏まえたうえで、整備を促進するための課題と方策を明らかにすることを目的としている.
研究方法
本年度は以下の4つの調査を実施した.
1)高齢者住宅を必要とする高齢者数の試算推計(都内A区)
2)サービス附帯から見た高齢者住宅の特性に関する考察
3)サービス附帯から見た高齢者住宅の特性と賃貸市場との関連性に関する考察
4)家賃低減の一手法としての転用改修に関する建築法規上の課題に関する考察
結果と考察
1)2030年を推計年とし,高齢者数を居住形態,世帯構成で推計し,ここから施設対応高齢者数を減算し,対象者数を推計した.さらに、所得段階を加味して,家賃補助など公的支援の必要な高齢者住宅と民間市場に委ねる高齢者住宅について検討をした.結果、東京都A区では、介護保険における所得段階4以下の者は何らかの家賃補助がないと良質な高齢者住宅には経済的に入居が困難であることが示唆された.
2)高齢者住宅財団と共同で行った実態調査より,事業者の想定している入居要件,継続居住要件から,入居携帯を「元気型」「中度型」「早期住み替え型」「重度型」の四つに類型した.「介護型」が最も多く,次いで「元気型」「中度型」であった.型によりサービス附帯が異なる傾向にあった.
3)高齢者住宅の整備量は高齢化率,施設整備量,持ち家率などの当該都道府県の実情を反映した傾向は確認できなかった.家賃は同種の市場家賃より高額であるものの,医療福祉系事業者を中心に,市場家賃が存在しない地域で低額でサービス付きの高齢者住宅が供給されていた.
4)既存ストックを転用する場合,加齢対応項目への適合だけでなく,建築基準法,消防法,都市計画法,介護保険法などの法規上の課題が存在していた.従前用途によって課題は異なっていた.
結論
1)市場に連動した家賃設定を分析指標として用いることで,民間で対応可能な所得レベルと公的支援を行うべき所得レベルとの境界が自治体単位で明らかとなる試算方法を提示した。
2)高齢者住宅における利用者像とサービス附帯・建築モデルとの関係性が明らかとなった。高専賃貸家賃は同地域の同じ広さの市場家賃より高額(平均で25000円程度)に設定されていた。住居、サービス附帯、いずれも説明困難な変数も多く、ミクロレベルでのビジネスモデルが確立されている段階ではないことが示唆された。
3)一定の質を担保しつつ、高齢者住宅の建設コストを低減する手法として転用に関する法規的課題が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
-