文献情報
文献番号
200801031A
報告書区分
総括
研究課題名
健康水準、医療社会資本、経済的要因の地域格差の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-政策・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
姉川 知史(慶應義塾大学 大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
2,335,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
社会保障の制度設計では医療のアクセスの公平性(equity)と制度の効率性(efficiency)の確保が必要である。健康や疾病,医療費,医療に関する地域格差については広く分析されているが,その長期的動向と原因については必ずしも検討されていない。この研究では健康水準,医療費,医療資本の3者について,1981年-2005年の都道府県単位の各種の長期データを用いて検討し,長期的な地域格差の収斂と分散の現状と原因を分析した。
研究方法
第1に,平均余命,死因別死亡率等のデータを健康指標として使用し,年齢,性別による地域別の相違を調整して地域格差を分析した。第2に,医療施設等の物的資本と,医師・看護師等の人的資本の長期蓄積を分析した。第3に,国民健康保険の都道府県データを用いて,一般,老人,入院,入院外,歯科を区別し,さらに1人当たりの医療費を,1日当たりの医療費,1件当たりの日数,1人当たりの受診率に要因分解して,長期的収斂とその決定要因を推定した。第4に,健康,医療費,医療資本の3者の長期的な関係を表す式を推計して検討した。
結果と考察
第1に,平均余命,年齢調整後死亡率等の健康指標では地域格差の長期的収斂が確認された。他方,疾病構造等の地域格差は依然として大きい。なかでも自殺率は,景気等の経済要因に影響される一方で,特定の都道府県において高いというと地域特異性が長期的に続き,社会的要因の大きさが示された。第2に,人口当たりの一般病床数,医師数,看護師数等の医療資本の指標の地域格差は依然として大きく,長期収斂傾向も見られない。病床数規制や,医師,看護師養成に関する政策的介入が政策目的を実現してはいないことが判明した。第3に,入院サービスの1件当たりの日数は全国平均値に対して収斂しているものの,1人当たりの受診率,1日当たりの医療費は収斂せず,その結果,1人当たり医療費の収斂も見られなかった。しかし,これらの変数が各都道府県はそれぞれ固有の水準に収斂する傾向が認められた。
結論
健康,医療費,医療資本の3者の長期的関係は社会保障制度の設計の前提であるが,医療費,医療資本の格差は依然として大きく,アクセスの不平等が存在する。しかし,健康指標については全国平均への収斂が見られた。クロスセクションの地域格差だけでなく,長期の収斂パターン分析が重要である。
公開日・更新日
公開日
2009-04-13
更新日
-