アレルギー疾患の多様性、生活実態を把握するための疫学研究

文献情報

文献番号
202013008A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患の多様性、生活実態を把握するための疫学研究
課題番号
20FE2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
足立 雄一(富山大学学術研究部医学系小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 幸一(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
  • 福家 辰樹(国立研究開発法人国立成育医療研究センター アレルギーセンター 総合アレルギー科)
  • 福冨 友馬(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 高橋 亨平(独立行政法人国立病院機構相模原病院 小児科)
  • 後藤 穣(日本医大千葉北総病院耳鼻咽喉科)
  • 田中 暁生(広島大学大学院 医系科学研究科 皮膚科学)
  • 手塚 純一郎(福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科)
  • 長尾 みづほ(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
  • 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センター公衆衛生学部門)
  • 松﨑 寛司(国立病院機構福岡病院 小児科)
  • 今野 哲(北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 アレルギー疾患対策基本法では、疫学研究によるアレルギー疾患の長期にわたる推移(自然史)の解明等良質なエビデンスの蓄積とそれに基づく定期的な診療・管理ガイドラインの改訂が必要であると示されており、アレルギー疾患の疫学調査は国の施策として非常に重要である。本研究班では、全国のアレルギー疾患医療拠点病院と連携し、その職員・家族を対象とした全年齢層におけるアレルギー疾患の有病率および個々の合併率を明らかにし、現在の我が国におけるアレルギー疾患の現状を把握すると共に、今後同手法にて経時的に評価することで有病率の推移を評価可能な疫学調査の基盤を構築する。また、40 年前から 10 年毎に行っている西日本小学児童調査を2022 年に実施することで、日本における小児アレルギー疾患の長期的な推移を検討する。
研究方法
 アレルギー疾患拠点病院活用疫学調査は、2020年度に、最終目標である全国のアレルギー疾患対策拠点病院でのアンケート調査を行うためのパイロットスタディーを実施する。そのために、まず各年代におけるアレルギー疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎結膜炎(花粉症)、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー)の有病率を調査するための質問表を作成し、ウェブ上で入力できるフォームの開発を行う。対象はアレルギー疾患拠点病院に勤務する職員(医療従事者ならびに病院事務)と同居する家族とし、調査項目は、各アレルギー疾患の有病率とし、自己判断による病名や医師の診断など、アンケート調査における診断基準を明確する調査項目を検討する。また、食物アレルギーにおいては、アレルゲン表示義務の10品目を中心に摂取可能の有無や未摂取なども調査する。疫学調査方法や統計解析方法については、分担研究者である自治医科大学公衆衛生学講座教授の中村好一の意見を参考に検討する。(倫理面への配慮)調査内容については富山大学倫理委員会の承認を得ている。また、アンケートの回答欄の冒頭で、回答者の承諾を得る形をとった。
 西日本小学児童アレルギー有症率調査では、2022年度の調査に向けて、調査対象となる小学校ならびに調査に協力する医師を選定する。また、調査票の準備を行う。(倫理面への配慮)調査対象、協力医師、調査内容が確定後に倫理委員会へ申請する予定である。
結果と考察
 調査期間は2021年1月18日〜2月14日とし、各施設においてポスターや院内メール等によって事前に調査への協力依頼を行った。各病院の職員数から推定される回収率は21.1%であった。回答率が低かった理由として、1) コロナ禍で業務や心身の負担で回答する余裕がなかった、2) 1−2月は例年病院業務の繁忙期である、3) 多くの職員がアレルギー疾患に興味がない可能性がある、4) 個人の端末での回答に抵抗がある、などが考えらえた。また、質問項目については、以下の問題点が挙げられた。1) 同居家族が同一施設に勤務している際の回答は全員が行うかが不明確だった、2) ユーザー名やパスワードの設定が煩雑、3) アレルギー性鼻炎と花粉症が分かれており、また食物アレルギーと口腔アレルギー症候群が分かれており混乱した、4) 治療の有無は市販薬も含まれるのか不明だったなどが挙げられた。
 全国での大規模調査を行うためのパイロット調査を行った結果、回収率をさらに上げるための工夫、調査の入力方法の改善、調査項目の質問内容などの改善が必要であることが明らかとなった。これらの課題を解決することで、より精度の高い全国調査方法の確立が期待される。また、西日本小学児童アレルギー有症率調査では1982年から10年毎の調査を同一手法で行うことが決まったが、このような長期間の調査から世界的にも貴重なデータが得られるものと期待される。
 西日本小学児童アレルギー有症率調査では、調査対象となる小学校は前回の調査以降に合併や閉校したものがあり、出来るだけ以前と同じ小学校になるように努めて選定した。最近の個人情報に対する意識の変化やウェブ調査の普及などで調査方法を変更することも考えられたが、過去のデータとの比較を行うには出来るだけ調査方法は変更しないほうが良いと考えて、以前と同様の調査内容を紙の質問票を用いることで調査を実施することと決定した。

結論
 人口の約半数が罹患していると言われるアレルギー疾患の実態を調査するためには大規模な疫学調査が必要であり、今回新たな調査方法の開発を目指してパイロット調査を実施したが、回収率などいくつかの課題があり、その対策を立てた上で本調査に臨む必要がある。一方、西日本小学児童アレルギー有症率調査のように40年間同一手法を用いることで経年的な変化を正確に把握することができ、本研究班の成果から今後のアレルギー疾患に関する疫学調査の方向性が見えてくることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2021-07-19

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202013008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
9,161,723円
差引額 [(1)-(2)]
838,277円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,575,541円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 5,286,182円
間接経費 2,300,000円
合計 9,161,723円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
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