文献情報
文献番号
202011089A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の難病に対する医療および移行期医療支援に関する研究
課題番号
20FC1057
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
松永 達雄(独立行政法人 国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター聴覚・平衡覚研究部)
研究分担者(所属機関)
- 加我 君孝(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター)
- 和佐野 浩一郎(国立病院機構 東京医療センター 臨床研究センター 聴覚・平衡覚研究部)
- 南 修司郎(国立病院機構 東京医療センター 聴覚平衡覚研究部)
- 角田 和繁(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 視覚研究部)
- 守本 倫子(国立研究開発法人成育医療研究センター 耳鼻咽喉科)
- 仁科 幸子(蓮江 幸子)(国立成育医療研究センター 感覚器形態外科部 眼科)
- 馬場 信太郎(東京都立小児総合医療センター 耳鼻咽喉科)
- 野田 英一郎(東京都立小児総合医療センター 眼科)
- 中屋 宗雄(東京都立多摩総合医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 大野 明子(田中 明子)(東京都立多摩総合医療センター 眼科)
- 小川 郁(慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科)
- 仲野 敦子(千葉県こども病院 耳鼻咽喉科)
- 有本 友季子(千葉県こども病院 耳鼻いんこう科)
- 齋藤 麻美子(千葉県こども病院眼科)
- 神部 友香(埼玉県立小児医療センター 眼科)
- 高野 賢一(札幌医科大学 医学部 耳鼻咽喉科学講座)
- 日景 史人(札幌医科大学 眼科学講座)
- 江﨑 友子(あいち小児保健医療総合センター 耳鼻いんこう科)
- 都築 欣一(あいち小児保健医療総合センター 眼科)
- 太田 有美(大阪大学 医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 森本 壮(大阪大学 医学系研究科)
- 岡﨑 鈴代(大阪母子医療センター 耳鼻咽喉科)
- 遠藤 高生(大阪母子医療センター 眼科)
- 三代 康雄(大阪市立総合医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 小児耳鼻咽喉科)
- 森 秀夫(大阪市立総合医療センター 眼科)
- 瀬戸 俊之(大阪市立大学 大学院医学研究科 臨床遺伝学)
- 新谷 歩(大阪市立大学 大学院医学研究科 医療統計学教室)
- 勝沼 紗矢香(兵庫県立こども病院 耳鼻咽喉科)
- 野村 耕治(兵庫県立こども病院 診療部眼科)
- 上原 奈津美(神戸大学医学部附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科)
- 中西 裕子(山田 裕子)(神戸大学大学院医学研究科 外科系講座眼科学分野)
- 片岡 祐子(岡山大学病院 耳鼻咽喉科)
- 土橋 奈々(九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科)
- 村上 祐介(国立大学法人九州大学 大学病院眼科)
- 星 祐子(独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 )
- 前田 晃秀(独立行政法人国立病院機構東京医療センター・臨床研究センター 聴覚・平衡覚研究部)
- 高相 道彦(千葉県千葉リハビリテーションセンター 眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
14,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の対象は先天性および若年性(40歳未満で発症)の視覚聴覚二重障害(盲ろう)を呈する難病である。全国の患者数は約2600人と希少であるが、35以上の原因疾病がある。さらに視覚聴覚二重障害の臨床像は単独の視覚障害あるいは聴覚障害の臨床像とは異なる特徴が多く、単独の視覚障害あるいは聴覚障害に対する診療方法が活用できない場合が多い。このような特徴から本難病医療は不十分な状況にある。本研究の目標は、1)本疾病群に対する移行期医療支援モデルの構築、2)既に策定した診療マニュアルの普及・啓発、改訂、3)指定難病、難病プラットフォーム等のデータベース構築への協力であり、これにより本難病医療の向上につなげる。
研究方法
1)移行期医療支援モデル事業
本疾病群の移行期医療は、i.小児診療施設から成人診療施設への移行、ii.小児診療施設から成人診療施設と小児診療施設の併診への移行、iii.同一施設内で小児対応から成人対応への移行の3類型がある。これらの類型を考慮した体制を整備し、移行期医療の概念に即した移行支援ツールとプログラムを作成する。さらにモデル事業を保健所、療育・教育施設、福祉施設等との連携で実施し、その運営プロセスをガイドブックにまとめる。
2)診療マニュアルの普及・啓発、改訂
既に公開された診療マニュアルを各参加診療施設で運用する。医師・患者・家族からの意見を事務局で収集し、診療マニュアルを改訂する。学会・患者団体の連携・承認を得て、医療者、医療関係者、患者団体などへのパンフレット配布、Webサイトからの公開、公開講座などを通じて活用を広げる。
3)データベース等の拡充と活用
本研究班で既に確立した一体的診療体制モデル、患者会・学会との連携、遺伝子検査体制を参加施設で活用し、診療を実施する。その結果得られるデータを、指定難病データベース、難病プラットフォームデータベース、臨床ゲノム情報統合データベースに登録する。集積したデータを解析して、診断基準、重症度分類、人工内耳の適応基準などについて検討し、ガイドライン策定、改訂に役立てる。
本疾病群の移行期医療は、i.小児診療施設から成人診療施設への移行、ii.小児診療施設から成人診療施設と小児診療施設の併診への移行、iii.同一施設内で小児対応から成人対応への移行の3類型がある。これらの類型を考慮した体制を整備し、移行期医療の概念に即した移行支援ツールとプログラムを作成する。さらにモデル事業を保健所、療育・教育施設、福祉施設等との連携で実施し、その運営プロセスをガイドブックにまとめる。
2)診療マニュアルの普及・啓発、改訂
既に公開された診療マニュアルを各参加診療施設で運用する。医師・患者・家族からの意見を事務局で収集し、診療マニュアルを改訂する。学会・患者団体の連携・承認を得て、医療者、医療関係者、患者団体などへのパンフレット配布、Webサイトからの公開、公開講座などを通じて活用を広げる。
3)データベース等の拡充と活用
本研究班で既に確立した一体的診療体制モデル、患者会・学会との連携、遺伝子検査体制を参加施設で活用し、診療を実施する。その結果得られるデータを、指定難病データベース、難病プラットフォームデータベース、臨床ゲノム情報統合データベースに登録する。集積したデータを解析して、診断基準、重症度分類、人工内耳の適応基準などについて検討し、ガイドライン策定、改訂に役立てる。
結果と考察
今年度の本研究結果を以下に列記する。a. 移行期医療支援プログラムの作成、b. 診療マニュアルの活用、検証、改訂、および学会講演、公開講座、学術誌、Websiteによる普及、啓発、c. 研究参加施設とその地域における適切な診療提供体制モデルの構築、d. 医療機関、教育機関、患者団体、学会およびAMED研究班との連携体制の構築と、共同作業による成果、e. 医療支援と生活支援を提供する施設の案内窓口と検索システムのモデルの構築、f. 本研究班からRADDAR-Jレジストリへの症例登録、g. 臨床診断に活用できる遺伝子検査体制の整備、h. 患者向け公開講座の開催、i. 海外で先進的な医療を提供している施設との国際研究体制構築と情報やアイデアの交換。
続いて主要な結果に対する考察を記す。
1)視覚聴覚二重障害の難病では個別に専門性の高い医療が必要であり、小児から成人への移行期においては、適切な医療の継続と自然歴・治療・加齢による変化への対応が必要である。本研究によって移行期医療支援プログラムが作成されたことで、移行期医療支援のモデル事業を開始できる。今後、モデル事業を全国的な体制とプログラムの整備につなげることにより、移行期医療支援を向上できると考える。
2)現状では全国的に本疾病群に対する医療水準と患者のQOLは著しく低い。今回、診療マニュアルの質を向上し、普及啓発を進められたことで、本疾病群に対する医療水準と患者のQOLを改善に貢献できた。今後さらに全国への普及啓発を進めていく。
3)本研究に関連する指定難病、難病プラットフォーム、臨床ゲノム情報等のデータベースを拡充できた。これにより原因・病態別の臨床像と診療効果の解明を促進できるとともに、診断基準・重症度分類・診療ガイドラインをより効果的に策定、改訂できる。
続いて主要な結果に対する考察を記す。
1)視覚聴覚二重障害の難病では個別に専門性の高い医療が必要であり、小児から成人への移行期においては、適切な医療の継続と自然歴・治療・加齢による変化への対応が必要である。本研究によって移行期医療支援プログラムが作成されたことで、移行期医療支援のモデル事業を開始できる。今後、モデル事業を全国的な体制とプログラムの整備につなげることにより、移行期医療支援を向上できると考える。
2)現状では全国的に本疾病群に対する医療水準と患者のQOLは著しく低い。今回、診療マニュアルの質を向上し、普及啓発を進められたことで、本疾病群に対する医療水準と患者のQOLを改善に貢献できた。今後さらに全国への普及啓発を進めていく。
3)本研究に関連する指定難病、難病プラットフォーム、臨床ゲノム情報等のデータベースを拡充できた。これにより原因・病態別の臨床像と診療効果の解明を促進できるとともに、診断基準・重症度分類・診療ガイドラインをより効果的に策定、改訂できる。
結論
先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の難病の医療向上に向けて以下の項目の研究を進めて、本難病医療の向上に役立てた。1)移行期医療支援プログラムの作成、2)移行期医療支援モデルの構築、3)移行期医療支援ガイドブックの作成、4)診療マニュアルの活用、検証、改訂、普及、啓発、5)適切な診療提供体制モデルの構築、6)医療機関・教育機関・患者団体・学会およびAMED研究班との連携、7)医療支援と生活支援を提供する施設の案内窓口と検索システムのモデル構築、8)レジストリへの症例登録、9)遺伝子検査体制の整備、10)遺伝子検査の普及状況等の予後調査、11)公開講座の開催、12)先進的な医療施設との国際研究体制の構築。
公開日・更新日
公開日
2021-07-01
更新日
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