低所得者の実態と社会保障のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200801019A
報告書区分
総括
研究課題名
低所得者の実態と社会保障のあり方に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-019
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 彩(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊地英明(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 西村幸満(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 山田篤裕(慶応義塾大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,719,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、日本における低所得者を、貧困、相対的剥奪、社会的排除などの新しい概念を含めた定義で捉え、その実態を把握するとともに、彼らの社会保障制度との関わり合いを分析した上で、社会保障制度が低所得者に対する施策をどのように構築するべきかを検討することである。研究においては、必要に応じて独自の低所得者調査を実施し、国内のみならず国際比較も可能なデータを構築する。
研究方法
「2008年度社会生活調査」(層化副次(三段)無作為抽出法によって抽出された全国の成人男女1320人を対象とする留置調査、回収数1021、回収率77.3%)の実施・分析、既存の大規模調査の個票を用いた量的分析、既存文献による質的分析、国際比較などの多様な手法を用いる。
結果と考察
平成20年度の第一の成果は、「2008年度社会生活調査」の調査設計、調査票作成および調査の実施である。本調査の目的は、日本における貧困、相対的剥奪、社会的排除の実態を明らかにしたうえで、それらに繋がる過去の経験や出身階級の影響の度合いを測定することである。
第二に、高齢者や勤労世代の所得分布・貧困の要因分析を行った。高齢期の貧困は、本人の職歴や学歴との関連はもちろんのこと、子世代の雇用状況も影響が大きいことが確認された。
第三に、低所得者に対する公的保険のあり方の研究においては、公的医療保険の保険料の負担が不均一であること、そして、新たな設計をすることによりそれを改善できることがマイクロ・シミュレーションで確認された。
第四に、公的扶助の在り方の研究においては、同じ所得階層であっても、低所得者と被保護者の消費パターンには違いがあること、生活福祉資金貸付制度の活用度が低いこと、住宅と生活の質には密接な関係があることなどが分析された。
結論
高齢期の貧困は、本人の年金のほかにも、次世代の雇用状況にも大きく影響される。その意味でも、貧困の世代間連鎖を食い止めることが早急な課題である。そのためにも、本研究で確認されたような新しい社会保険料の設定を検討することも重要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-02
更新日
-