神経皮膚症候群におけるアンメットニーズを満たす多診療科連携診療体制の確立

文献情報

文献番号
202011075A
報告書区分
総括
研究課題名
神経皮膚症候群におけるアンメットニーズを満たす多診療科連携診療体制の確立
課題番号
20FC1043
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 朝比奈 昭彦(東京慈恵会医科大学  医学部)
  • 古村 南夫(島根大学医学部皮膚科)
  • 吉田 雄一(鳥取大学医学部感覚運動医学講座皮膚病態学分野)
  • 松尾 宗明(佐賀大学 医学部)
  • 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学 整形外科)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部)
  • 緒方 大(国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科)
  • 原 政人(愛知医科大学 脳神経外科)
  • 藤井 正純(福島県立医科大学 医学部)
  • 水口 雅(東京大学  大学院医学系研究科)
  • 金田 眞理(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 波多野 孝史(東京慈恵会医科大学 医学部 泌尿器科)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部 環境保健医学講座)
  • 森脇 真一(大阪医科大学 医学部)
  • 宮田 理英(東京北医療センター 小児科)
  • 上田 健博(神戸大学医学部附属病院 神経内科)
  • 中野 英司(神戸大学医学部附属病院皮膚科)
  • 中野 創(弘前大学 大学院医学研究科 皮膚科学講座)
  • 大門 真(弘前大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
27,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経皮膚症候群は神経と皮膚に加えて、骨・聴覚器・心臓・腎臓・呼吸器.肝臓を含む多臓器に病変を生ずる遺伝性の難病で、神経線維腫症1(NF1)、神経線維腫症2(NF2)、 結節性硬化症(TSC)、色素性乾皮症(XP)、ポルフィリン症が含まれる。生命の危機だけでなく、機能的・整容上QOLの低下も著しく、患者・家族の治療に対する要望は強い。そこで、各疾患における患者のアンメットニーズを把握して、その解決に向けた検討を行うことを目的とする。そのために、レジストリを確立する。アンメットニーズの把握としては、重症度毎の患者実態を探るとともに、QOL調査を実施し、患者のアンメットニーズを明らかにし、改善策を考案する。診断が遅れにより治療の時期を逸しないように、NF1、XP、ポルフィリン症については研究班が診断の支援を行う。
研究方法
NF1とXPのレジストリについては:R2年7月に班会議を開催し、研究班としての疾患レジストリの進め方を討議した。TSCは既に結節性硬化症学会主導で患者レジストリが進められており、NF2も実施中の医師主導治験との関連で患者レジストリが既に進んでいたころから、NF1とXPを対象疾患として、難病プラットフォームを利用した形での疾患レジストリを行なうこととし、IRBに「神経皮膚症候群のレジストリによる悉皆的調査研究」を申請し、12月に承認された。倫理委員会への申請と並行して、各疾患に適したレジストリ項目を選定し、難病プラットフォームと連携の上、登録システムのカスタマイズを行なった。
アンメットニーズの調査については、NF1は感覚異常に関する、QOL調査、カフェオレ斑に対するレーザー治療の成績に関する調査、骨症状のある患者でのFM-36によるQOL調査、びまん性神経繊維種における治療の事態を出血量に焦点を当てた調査、などを行い、患者の実態を探った。また、重症度とEQ-5Dの相関などについて検討した。
結果と考察
NF1の患者登録システムを立ち上げた。このことにより治験の適応症例の選択に寄与し、日本人NF1患者の特徴を明らかにし、合併症の予測など、医療の向上に寄与する。DNB分類による重症度とEQ-5Dが相関したことから、疾患をまたQOL評価が可能になる可能性が出てきた。

AMEDと連携して、NF2に対するベバシズマブの治験中の患者の聴力プロファイルを観察中である。早期の治療介入の大切さなどの広報活動に努め、ベバシズマブの治験に参加する患者の増加に寄与できた。NF2患者の就労、社会的自立を妨げる要因が脊髄腫瘍であることを明らかにし、必要な支援を提案するなど政策決定に資すると考えられる。

TSCのレジストリを開始し、その登録を促進する。レジストリにより小児期から成人期までシームレスな患者実態を把握でき、臓器、年齢、診療科の枠を超えた診療・研究の体制が強化され、患者の全身を対象とした新しい治療の開発や患者のQOL向上をもたらすと期待される。mTOR阻害薬の適応が拡大されてきているが、安全性と有効性の観点からの合併症に応じた最適な治療薬の使用法を確立していく必要がある。

XPの患者登録システムが他施設から行うことができるようになることで、全国規模で患者の実態が把握でき、治療開発に繋がる。診断の支援体制の維持により患者の確定診断が速やかに行え、症状の進行の予防や早期治療により医療の質の向上に資する。XPは疾患の早期発見による遮光が患者の予後の改善にも重要であるので、今年度も診断の支援を行なった。

ポルフィリン症:診療ガイドラインの策定に向けて、昨年実施した診断全国疫学調査(一次)をもとに、ガイドラインの内容について検討を進めている。患者の実態把握のためにも遺伝子診断が重要であり、今年度も遺伝子解析による確定診断を進めた。診療ガイドラインが完成すれば、その存在により医療従事者の啓発が期待される。遺伝子診断により重篤な合併症を防げ、患者の生命予後の著しい改善が期待され医療の向上に資する。
結論
神経皮膚症候群のアンメットニーズを満たすため、各疾患における最適な治療法について探索し、現状での患者の置かれている状況の把握を目的として、4疾患について、疾患レジストリの準備を整えて、今後の患者調査についての研究基盤が確立した。ポルフィリン症については、診療ガイドラインの策定に向けて作業を進めた。XPとポルフィリン症については診断の確定にも貢献した。NF1やTSCでは近年登場した分子標的薬の全身臓器への有効性が明らかになりつつあるが、罹患臓器による効果の発現にもばらつきがあり、今後、分子標的薬の有効性と安全性の解析と評価を実施し、最適な使用法の検討をする必要性がある。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2021-09-06

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011075Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
35,880,000円
(2)補助金確定額
35,355,000円
差引額 [(1)-(2)]
525,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 13,778,669円
人件費・謝金 6,192,683円
旅費 0円
その他 7,104,412円
間接経費 8,280,000円
合計 35,355,764円

備考

備考
自己資金759円
その他(利息)5円

公開日・更新日

公開日
2022-02-01
更新日
-