法医剖検事例の公衆衛生学的時系列分析に基づく高齢者孤独死撲滅のための実証的予防政策立案

文献情報

文献番号
200801010A
報告書区分
総括
研究課題名
法医剖検事例の公衆衛生学的時系列分析に基づく高齢者孤独死撲滅のための実証的予防政策立案
課題番号
H19-政策・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(筑波大学 大学院 人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 健太郎(山形大学 医学部)
  • 宮石 智(岡山大学 大学院 医歯薬総合研究科)
  • 山本 秀樹(岡山大学大 学院 環境学研究科)
  • 松澤 明美(茨城キリスト教大学 看護学部看護学科)
  • 本澤 巳代子(筑波大学 大学院 人文社会科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,224,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者のいわゆる孤独死の実態・要因把握のため、従来系統的に分析されることのなかった法医学関連データを用い、学際的アプローチによって、高齢者孤独死を社会医学的に分析し、実証データに基づく地域における予防的戦略を提起する。
研究方法
1)剖検事例の情報精度の向上のため、一定のフォームを作成し情報収集するシステムを試みた。2)1)の蓄積データも含め、一大学の65歳以上法医剖検全例を疫学分析し、狭義の孤独死ともいえる長期未発見事例における背景要因を記述した。3)山形県・岡山県における検案データを疫学的に分析した。4)山形県警察検案データの実態を把握し、あわせて東京都監察医務院検案データと比較した。5)各自治体で実施されている地域見守り活動等の実態調査から孤独死予防政策のあり方を法学的観点より検討した。
結果と考察
1)フォーム作成により剖検事例の具体的背景を把握でき、剖検データの質の向上に繋がった。2)法医剖検例の分析では、野焼きや灯明が原因である等の高齢者火災の特徴が示唆された。また独居では「通院歴」が少なく、発見まで「1日以上」の例が多い等、世帯構成による違いがみられた。3)山形県5675例、岡山県7092例の分析結果より、死体発見を遅らせる要因として「独居」、「認知症既往の有無」、発見者が「家人親戚および大家近所」が示唆され、また独居とは「屋内死亡」、「非自殺」事例、「解剖実施」の関連がみられた。4)山形県と東京都区部との比較分析では、高齢者検案数に対する独居生活高齢者の割合は東京都区部の方が山形県より2倍以上高く東京都区部の独居老人による孤独死の可能性の高さが示唆された。5)神戸市の見守り推進活動については、県と市の協同により成果をあげつつある実情が覗われ、ガスメーター通報システムや熱センサーシステムの利用による成果が一定上がっている実状も確認された。
結論
本研究は、これまでほとんど未解明であった我が国における高齢者孤独死の実態を学術的に明らかにし、かつ孤独死対策の根拠を実証データから示した。本研究の結果から、世帯構成によって死因の傾向や死亡状況、背景要因が異なることが明らかになったため、それぞれに対する予防と早期発見の双方からのアプローチの必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200801010B
報告書区分
総合
研究課題名
法医剖検事例の公衆衛生学的時系列分析に基づく高齢者孤独死撲滅のための実証的予防政策立案
課題番号
H19-政策・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(筑波大学 大学院 人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 健太郎(山形大学 医学部)
  • 宮石 智(岡山大学 大学院 医歯薬総合研究科)
  • 山本 秀樹(岡山大学 大学院 環境学研究科)
  • 松澤 明美(茨城キリスト教大学 看護学部看護学科)
  • 本澤 巳代子(筑波大学 大学院 人文社会科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者のいわゆる孤独死の実態・要因把握のため、法医学関連データを用い、学際的アプローチによって、高齢者孤独死を社会医学的に分析し、実証データに基づく地域における予防的戦略を提起する。
研究方法
1)法医学関連資料の分析
①法医剖検事例のデータベース化および疫学的分析②検案事例の疫学的分析③地域による比較
2)法医公衆衛生学の方法論
①法医学の視点から②公衆衛生学の視点から
3)政策の評価・提言―法学の視点から実際の自治体による取り組みの検討
結果と考察
1)①法医剖検例による高齢者死亡では世帯別の対策が有用であることが示唆された。さらにICFの視点から事例を分析した結果、ソフト・ハードの両面における環境整備の推進が必要と考えられた。②独居者の病死という狭義の孤独死以外にも高齢者の”孤独な死“かつ環境整備などで予防しうるまたは早期発見できる死”があること、それらの対策は家族・死因などの背景によってパターンがあることが量的に明らかになった。③山形県・東京都区部における検案の実態には独居者の割合など差異がみられ、地域差検討する必要が示唆された。2)①死亡診断および事例情報収集の精度を高める必要が示された。②地域の見守り活動の記録分析により、これらが生存して発見される可能性を高めていることが示唆された。3)実際の自治体による取り組みの検討により、地域見守り活動のネットワークを構築して行く上では地域住民による地域の見守り活動をベースとした上での公的な見守り活動の組み合わせが必要であると示唆された。
結論
まず、孤独死を広くとらえ、高齢者の不慮の死亡全体を把握することで、穏やかな人生の最期と対照にある各種のいわゆる「避けるべき死」の実態を幅広く捉えることができ、狭義の「独居者の死」「長期発見されなかった死」に限らない、検討するべき高齢者の死亡の実態が明らかになった。これらは、家族構成・性別によってパターンが異なることが示され、実態から対策を検討する際には、これらの状況別の把握をした上え、発生予防と死後早期発見の2つの対策に大別して検討する必要性が示された。また、法医学関連情報の公衆衛生学的分析の有用性、さらに剖検率によるバイアスなどの結果解釈上の留意点も明らかにすることができた。一方、死亡事例の対照として、各種行政の試みにより救命しえた事例記録の分析も具体的対策立案・評価に重要であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200801010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
法医学関連情報の公衆衛生学的分析により、高齢者死亡の実態とその対策を量的に明らかにすることができた。実態は、世帯構成・性別・死因等で死亡を類型化することができ、それぞれに対し予防対策・早期発見対策に大別して対策を検討することが有効であると考えられた。
また、法医学の情報を扱う際の基本的方法、結果の解釈の留意点など(死因による剖検率の差など)も明らかになり、今後の法医学情報の効果的活用への基礎を築くことができた。
臨床的観点からの成果
1日以上発見されなかった事例の詳細な分析により、医療機関への通院以外は全く地域と交流のない事例がみられた。通院中止事例を医療機関が把握し、適切な対応をとることでこうした例の孤独死が避けられる可能性があり、かかりつけ医機能の強化などが対応策として有効であることが考えられた。
ガイドライン等の開発
倫理的配慮をした上での、法医学関連データの疫学的分析に必要なプロセスを構築した。
その他行政的観点からの成果
独居者の死亡のみが「孤独な死」ではなく、「避けるべき死」にはいくつかの類型があること、さらに、それぞれに、「予防策」「早期発見対策」を別に考えることが有用であることが明らかになった。
その他のインパクト
平成20年度厚生労働科学研究政策科学推進研究事業公開シンポジウム
「高齢者をとりまく環境」 で成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
厚生労働省成果公開シンポジウム 日本公衆衛生学会・自由集会 「法医公衆衛生学研究会ー絶対的アウトカムである死から学ぶ」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
松澤明美、田宮菜奈子、山本秀樹、山﨑健太郎、本澤巳代子、宮石智
法医剖検例からみた高齢者死亡の実態と背景要因-いわゆる孤独死対策のために
厚生の指標 , 56 (2) , 1-7  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-