文献情報
文献番号
200801007A
報告書区分
総括
研究課題名
年金制度と引退プロセス・受益者の生活水準の相互関係に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
北村 行伸(一橋大学 経済研究所)
研究分担者(所属機関)
- 高山 憲之(一橋大学 経済研究所)
- 小塩 隆士(神戸大学 大学院経済学研究科)
- 清水谷 諭(世界平和研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,899,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、年金制度と引退プロセス、受益者の生活水準との関係を定量的に明らかにすることである。まず、既存のデータセットを用いて、過去の制度改正をエピソードとして利用しながら、年金資産が労働力率に与える影響や在職老齢年金制度が高齢者の労働供給を阻害する効果を、動学的な枠組みの下で可能な限り定量的に検証し、政策的含意を導いた。次に、国際的に比較可能な「世界標準」の中高年のデータセットを新たに作成することにより、年金制度だけでなく、健康状態や家族関係、社会参加活動への意欲といった多様な要因が労働供給の意思決定に及ぼす影響を解析した。
研究方法
本研究は大きく2つにわかれる。1つ目は長期的なマクロデータ(1970年代から過去40年分)や「高年齢者就業実態調査」のミクロデータ(1983年、86年、89年、95年、2000年、04年の6回分)を用いて、過去の制度改正のエピソードを利用しながら、年金制度が引退行動に及ぼす影響を定量的に解析した。第2年次目に国際的に比較可能な「世界標準」の中高年の引退・健康に関する独自に調査を行い、幅広い変数を収集し解析を行った。日本の中でも沖縄県に注目したのは、沖縄県民の平均的な寿命が国際的にみても高い中で、都市化した地域とそうでない地域が混在し、解析が比較的容易であること、海外の類似の調査プロジェクトでも、沖縄県の経験に関心が集まっていることなどからである。
結果と考察
第一に、高齢者就業は公的年金の給付条件の変化に少なからず影響を受け、特に80年代以後は高齢者就業を有意な形で促進していること、在職老齢年金制度は高齢者就業を阻害している側面がある可能性があることが明らかになった。第二に、年金制度と並んで健康状態が引退プロセスに重要な影響を及ぼす点を明らかにし、年金制度をより効果的なものとするためには、年金制度(現金給付)と医療・介護制度(現物給付)をより効率的に組み合わせていく必要があることを示した。
結論
本研究の一部はすでに学会誌に投稿されているほか、12カ国が参加した国際共同プロジェクトでも発表されて国内外を問わず、科学的知見の向上に貢献したほか、引退プロセスの包括的な研究により、実証分析に基づを問わず、科学的知見の向上に貢献しているほか、いた政策の企画立案の基礎を提供し、受益者の生活水準向上へのインプリケーションを示した。また、こうした科学的な貢献だけでなく、広く政策目的に利用するために、各種審議会での活用を図り、実際の政策立案の基礎を提供するとともに、新聞や雑誌などを通じた普及活動も積極的に進めた。
公開日・更新日
公開日
2009-04-13
更新日
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