難病ゲノム医療に対応した遺伝カウンセリングの実態調査と教育システムの構築に資する研究

文献情報

文献番号
202011028A
報告書区分
総括
研究課題名
難病ゲノム医療に対応した遺伝カウンセリングの実態調査と教育システムの構築に資する研究
課題番号
19FC1010
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 秀彦(お茶の水女子大学 基幹研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 小杉 眞司(国立大学法人京都大学大学院 医学研究科)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学 医学部遺伝医学)
  • 川目 裕(東京慈恵会医科大学附属病院 遺伝診療部)
  • 松尾 真理(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
  • 佐々木 元子(お茶の水女子大学大学院基幹研究院自然科学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,960,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゲノム医療の実現において、難病診療における遺伝カウンセリングの実施が要求されるが、実臨床における実装は十分に進んでいるとは言い難い現状がある。さらに、ゲノム医学の進展により、遺伝カウンセリング自体も新たな医療技術に対応する必要が求められるようになってきた。そこで、本研究班では、遺伝カウンセリングの必要性の調査と、ゲノムカウンセリング教育におけるコンピテンシーを作成するための研究を実施することとした。ゲノム医療の実現において、難病診療における遺伝カウンセリングの実施が要求されるが、実臨床における実装は十分に進んでいるとは言い難い現状がある。さらに、ゲノム医学の進展により、遺伝カウンセリング自体も新たな医療技術に対応する必要が求められるようになってきた。そこで、本研究班では、遺伝カウンセリングの必要性の調査と、ゲノムカウンセリング教育におけるコンピテンシーを作成するための研究を実施することとした。
研究方法
【遺伝カウンセリングの必要性の調査】
研究対象は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業における難病研究班とした。101研究班を対象に、疾患個別の質問紙票を718通送付した。質問紙は、研究者のバックグランドと担当疾患における遺伝カウンセリングの必要性を評価する内容とした。
【遺伝カウンセリング教育システム策定】
本研究ではでは、遺伝カウンセリング教育に関与する専門職352名を対象に、質問紙票調査を行い、医療職における、ゲノムカウンセリングと関わる能力の必要度を調査した。また、ゲノムカウンセリング教育が実装されている英国の現状調査の準備を行った。
なお、この2つの調査は、研究代表者所属研究機関の人文社会科学研究の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果と考察
【遺伝カウンセリングの必要性調査】101研究班を対象に、疾患個別の質問紙票を718通送付した。有効な回答は57名(1つの研究班から複数回答あり)、疾患に関しては347疾患、380件の回答があった。疾患に対する質問紙票の回答380件のうち、遺伝性疾患は約半数(198件)を占めた。患者への遺伝学的検査および遺伝カウンセリングの必要性は、疾患への遺伝の関与が高いほど、その必要性が高く、家族への遺伝学的検査および遺伝カウンセリングの必要性は、患者本人に対する必要性よりも低く判断されていた。また、遺伝性疾患においても遺伝カウンセリングの必要性が低いと判断された疾患がある一方で、遺伝性がない/不明である疾患においても遺伝カウンセリングの必要性が認められた。前年度の全国の難病指定医療機関を対象とした質問紙票調査において、難病診療における遺伝医療は、難病指定医療機関の機能によって分業がなされているが、遺伝カウンセリングを担当する職種は一部を除き不足しているという結果が示されている。難病の遺伝医療では、心理社会的課題や血縁者への対応があるが、本調査の結果では、難病医療の研究者における遺伝カウンセリングの必要性に対する評価は、心理社会的課題よりも遺伝学的検査や研究に重点が置かれていた。また、遺伝カウンセリングの必要性に対する認知が十分になされていない可能性も存在していた。したがって、難病診療の連携体制の中での遺伝カウンセリング実施の保証、遺伝カウンセリングの必要性の啓発、医学管理としての遺伝カウンセリングの保険収載、認定遺伝カウンセラーの国家資格化を、現時点での課題解決に向けて提案する。
【新たな遺伝カウンセリング教育システム策定についての検討】遺伝カウンセリングを担当もしくはそれに関与する専門職352名を対象に質問紙票調査を行い、医療職における、ゲノムカウンセリングと関わる能力の必要度を調査し、どのような医療者において、網羅的ゲノム解析の臨床応用と関連した内容について、解析から情報提供についてまで「知っている」ことが求められ、遺伝を専門とする職種では、「行える」から「指導できる」レベルが求められていることが明らかとなった。したがって、広いレベルでゲノムカウンセリングについて学ぶ機会を構築することが必要と考えられた。
結論
今回の遺伝カウンセリングの必要度調査に関する調査から、難病診療における遺伝カウンセリングの課題を抽出し、その解決策を講じることができた。この解決策では、遺伝カウンセリングに対する啓発活動が必須であり、ゲノム医療の幅広い臨床応用のために、医療者に向けた教育体制を構築していくことが、重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2023-02-27

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,148,000円
(2)補助金確定額
2,039,000円
差引額 [(1)-(2)]
3,109,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,404円
人件費・謝金 710,940円
旅費 0円
その他 136,158円
間接経費 1,188,000円
合計 2,039,502円

備考

備考
自己資金502円

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2022-02-14