文献情報
文献番号
202011019A
報告書区分
総括
研究課題名
Facial onset sensory and motor neuronopathy(FOSMN)に関する全国臨床疫学調査とそれに基づいた診断治療指針の策定と患者レジストリの構築
課題番号
19FC1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 亮(九州大学大学院医学研究院 神経内科学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
1,390,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Facial onset sensory and motor neuronopathy (FOSMN)は40歳代以降に顔面から始まる感覚障害(末梢神経障害症状)、進行性の球麻痺・顔面筋麻痺(進行性核上性球麻痺様症状)、次いで四肢脱力・筋萎縮(筋萎縮性側索硬化症様症状)を呈し、嚥下障害による誤嚥性肺炎や呼吸筋麻痺により数年から数十年で死に至る。ところが、当科だけでも剖検例を含む6例を報告し(Watanabe et al, 2018)、さらに最近、学会症例報告が相次いでいるので、未診断例が全国に存在している可能性が高い。本研究では、FOSMNの暫定的診断基準を策定し、全国臨床疫学調査を行い、有病率や臨床像を明らかとすることにより、診断基準と治療指針の策定を目標とする。この診断基準を満たす症例は難病プラットホームを通して患者レジストリに登録され、推奨される治療を速やかに受けることができるようにすることが望ましい。
研究方法
① 暫定基準案の策定 (山﨑、渡邉、吉良、楠)
FOSMNの暫定診断基準案を策定する。(1)顔面から始まる緩徐進行性の感覚運動障害もしくは(2)球症状に始まる顔面の運動感覚障害を伴い、(3)その他の疾患が除外できるという診断基準項目のうち、(1)もしくは(2)を満たし、かつ(3)を満たすこと(Watanabe et al, Brain and Behavior 2018)を基本に、全国調査でより症例が集積されやすいよう配慮する。
② FOSMN全国臨床疫学調査 (山﨑、渡邉)
1)一次調査用葉書とFOSMN暫定診断基準説明文書、二次調査用質問表、同意説明文書、同意書を作成し九州大学倫理審査委員会にて承認を得る。
2)調査対象施設は、脳神経内科・神経内科を標榜する病院を病床数により階層化し無作為に抽出し所定の割合でランダムに選定するとともに多くの運動ニューロン疾患患者を診療している医療機関を特別階層として加える。
3)調査対象期間は、2019年(令和元年)1月1日から12月31日までの1年間に病院を受診した症例とする。
4)一次調査で患者数を把握し、二次調査で詳細な臨床検査所見を収集する。一次調査票の回収率60%、二次調査の回収率80%以上を目安とする。目標症例数は50例とする。
③ 全国臨床疫学調査結果の解析 (山﨑、渡邉、吉良)
全国調査結果を解析し、FOSMNの患者数と有病率・発症率を推計する。
④ 診断基準と治療・ケア指針の策定 (山﨑、渡邉、吉良、楠)
上記調査結果をもとに暫定診断基準案の見直しを行い、診断基準を策定する。また、診断後の治療方針やケアの指針を策定する。
⑤ 診断基準および治療・ケア指針の公表と周知 (山﨑、渡邉、吉良、楠)
策定した診断基準、治療・ケア指針は、全国調査結果を添えて日本神経学会、日本神経免疫学会、日本末梢神経学会、日本難病医療ネットワーク学会に照会し、学会承認を得るように務める。各学会からのフィードバックを得て、最終案を確定する。最終的な診断基準、治療・ケア指針は、当研究班のホームページや各学会のホームページ等で公表し、各学術集会での一般演題やシンポジウムでの発表を通じて周知する。また調査成績は速やかに英語論文にて学術誌に報告する。調査結果や診断基準、治療・ケア指針の普及のため、シンポジウム・講演会・研修会を開催する。
⑥ 患者レジストリの構築 (山﨑、渡邉、吉良、楠)
難病プラットフォームを活用して患者レジストリを構築し、とりわけデータの正確性、信頼性、標準化への対応に留意する。
FOSMNの暫定診断基準案を策定する。(1)顔面から始まる緩徐進行性の感覚運動障害もしくは(2)球症状に始まる顔面の運動感覚障害を伴い、(3)その他の疾患が除外できるという診断基準項目のうち、(1)もしくは(2)を満たし、かつ(3)を満たすこと(Watanabe et al, Brain and Behavior 2018)を基本に、全国調査でより症例が集積されやすいよう配慮する。
② FOSMN全国臨床疫学調査 (山﨑、渡邉)
1)一次調査用葉書とFOSMN暫定診断基準説明文書、二次調査用質問表、同意説明文書、同意書を作成し九州大学倫理審査委員会にて承認を得る。
2)調査対象施設は、脳神経内科・神経内科を標榜する病院を病床数により階層化し無作為に抽出し所定の割合でランダムに選定するとともに多くの運動ニューロン疾患患者を診療している医療機関を特別階層として加える。
3)調査対象期間は、2019年(令和元年)1月1日から12月31日までの1年間に病院を受診した症例とする。
4)一次調査で患者数を把握し、二次調査で詳細な臨床検査所見を収集する。一次調査票の回収率60%、二次調査の回収率80%以上を目安とする。目標症例数は50例とする。
③ 全国臨床疫学調査結果の解析 (山﨑、渡邉、吉良)
全国調査結果を解析し、FOSMNの患者数と有病率・発症率を推計する。
④ 診断基準と治療・ケア指針の策定 (山﨑、渡邉、吉良、楠)
上記調査結果をもとに暫定診断基準案の見直しを行い、診断基準を策定する。また、診断後の治療方針やケアの指針を策定する。
⑤ 診断基準および治療・ケア指針の公表と周知 (山﨑、渡邉、吉良、楠)
策定した診断基準、治療・ケア指針は、全国調査結果を添えて日本神経学会、日本神経免疫学会、日本末梢神経学会、日本難病医療ネットワーク学会に照会し、学会承認を得るように務める。各学会からのフィードバックを得て、最終案を確定する。最終的な診断基準、治療・ケア指針は、当研究班のホームページや各学会のホームページ等で公表し、各学術集会での一般演題やシンポジウムでの発表を通じて周知する。また調査成績は速やかに英語論文にて学術誌に報告する。調査結果や診断基準、治療・ケア指針の普及のため、シンポジウム・講演会・研修会を開催する。
⑥ 患者レジストリの構築 (山﨑、渡邉、吉良、楠)
難病プラットフォームを活用して患者レジストリを構築し、とりわけデータの正確性、信頼性、標準化への対応に留意する。
結果と考察
a. 一次調査施行
上記B.研究方法②の2)を踏まえて、脳神経内科・神経内科を標榜する病院から無作為に抽出した410施設と特別階層病院804施設の計1214施設に一次調査票を発送した。604施設から回答があり(回収率 49.75%)、15施設から計23例の暫定診断基準に合致する症例の報告があった。この結果をもとに算出された推定患者数は41.4人であった。
b. 二次調査施行
一次調査で暫定診断基準に合致する症例を経験したと回答のあった15施設に対して二次調査票を発送した。12施設から回答があり、残り3施設に回答を打診中である。
(考察)
一次調査の結果、FOSMNの推定患者数が41.4人と算出され、本疾患が極めて希少な疾患であることが示された。今回得られた症例をもとに、FOSMNの疾患概念や臨床像を明らかにし、より感度・特異度の高い診断基準を策定することで、本疾患を周知啓発することが望まれる。
上記B.研究方法②の2)を踏まえて、脳神経内科・神経内科を標榜する病院から無作為に抽出した410施設と特別階層病院804施設の計1214施設に一次調査票を発送した。604施設から回答があり(回収率 49.75%)、15施設から計23例の暫定診断基準に合致する症例の報告があった。この結果をもとに算出された推定患者数は41.4人であった。
b. 二次調査施行
一次調査で暫定診断基準に合致する症例を経験したと回答のあった15施設に対して二次調査票を発送した。12施設から回答があり、残り3施設に回答を打診中である。
(考察)
一次調査の結果、FOSMNの推定患者数が41.4人と算出され、本疾患が極めて希少な疾患であることが示された。今回得られた症例をもとに、FOSMNの疾患概念や臨床像を明らかにし、より感度・特異度の高い診断基準を策定することで、本疾患を周知啓発することが望まれる。
結論
FOSMNの全国臨床疫学調査のデータ収集をおおよそ終えた。令和3年度は収集したデータを解析し、FOSMNの臨床像・疫学の解明、診断基準の策定等を行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2021-05-27
更新日
-