文献情報
文献番号
202011012A
報告書区分
総括
研究課題名
強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-014
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
冨田 哲也(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学)
研究分担者(所属機関)
- 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センター公衆衛生学部門)
- 渥美 達也(北海道大学 大学院医学研究院)
- 高木 理彰(山形大学 医学部)
- 門野 夕峰(埼玉医科大学病院)
- 大友 耕太郎(慶應義塾大学 医学部)
- 田村 直人(順天堂大学 大学院医学研究科)
- 岸本 暢将(杏林大学 医学部)
- 松野 博明(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
- 西本 憲弘(東京医科大学 医学総合研究所)
- 大久保 ゆかり(小澤 ゆかり)(東京医科大学 医学部)
- 藤尾 圭志(東京大学 医学部附属病院)
- 亀田 秀人(東邦大学 医学部)
- 森 雅亮(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 森田 明理(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
- 中島 亜矢子(三重大学 医学部附属病院)
- 岡本 奈美(大阪医科大学 医学部)
- 辻 成佳(独立行政法人国立病院機構 大阪南医療センター 臨床研究部 免疫異常疾患研究室)
- 藤本 学(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 松井 聖(兵庫医科大学 医学部 糖尿病内分泌・免疫内科学)
- 山村 昌弘(岡山済生会総合病院 内科)
- 中島 康晴(九州大学 医学研究院)
- 川上 純(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年世界的には体軸性脊椎関節炎は強直性脊椎炎(AS)およびX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎患(nr-axSpA)に分類し、nr-axSpA については仙腸関節X線での構造変化があるか否かの相違のみであり、臨床的症状はASと差がなく、積極的な治療対象となると考えられてきている。我が国でのASおよびnr-axSpAの患者背景、臨床像を明らかにすることを今年度の目的とした。
研究方法
1)厚生労働省より提供された強直性脊椎関節炎臨床個人調査票1906例を対象とし、全国疫学調査と同様、男女の割合・推定発症連齢・家族歴の有無・HLA B-27保有率・臨床症状・レントゲン所見など比較した。
2)脊椎関節炎診療の手引き2020を刊行した。班員全員でのコンセンサスを得、編集委員での査読、関連学会でのパブリックコメントの実施を経た。
3)末梢性脊椎関節炎を含めた脊椎関節炎生物学的製剤使用ガイドラインの策定を日本リウマチ学会、日本脊椎関節炎学会と共同で行った。
4)脊椎関節炎領域における用語統一について統一すべき用語の一覧を作成し、統一を図った。
5)脊椎関節炎診療におけるQ&A集の作成はAS友の会、乾癬患者の会、日本脊椎関節炎学会、Twitterなどを通じ患者さんより、質問を募集し、それに対して班員が答える形で編集作業を行った。
6)掌蹠膿疱症性骨関節炎に関して診断基準・治療ガイドラインについて検討した。診療の手引き編集を開始した。
2)脊椎関節炎診療の手引き2020を刊行した。班員全員でのコンセンサスを得、編集委員での査読、関連学会でのパブリックコメントの実施を経た。
3)末梢性脊椎関節炎を含めた脊椎関節炎生物学的製剤使用ガイドラインの策定を日本リウマチ学会、日本脊椎関節炎学会と共同で行った。
4)脊椎関節炎領域における用語統一について統一すべき用語の一覧を作成し、統一を図った。
5)脊椎関節炎診療におけるQ&A集の作成はAS友の会、乾癬患者の会、日本脊椎関節炎学会、Twitterなどを通じ患者さんより、質問を募集し、それに対して班員が答える形で編集作業を行った。
6)掌蹠膿疱症性骨関節炎に関して診断基準・治療ガイドラインについて検討した。診療の手引き編集を開始した。
結果と考察
1)臨床個人調査票解析
提供された臨床個人調査票は2015年20例、2016年1125例、2017年761例の合計1906例であった(重複分を除く)。男女比は2.4:1であった。男性では20代に発症のピークが認められた。HLA B-27陽性は男性で64.1%、女性では31.3%と女性で低い結果であった。末梢関節炎、付着部炎はいずれも女性に多く認められた。関節外症状は男女差は認められなかった。仙腸関節X線所見は男性で多く認められていた。仙腸関節・脊椎椎体のMRI所見は女性に多い傾向であった。治療に関して生物学的製剤は男女とも50%で施行され、その有効率は共に95%と非常に高い有効性を示した。
考察:
強直性脊椎関節炎臨床個人調査票解析結果より女性患者の特徴が明らかとなった。
2)脊椎関節炎診療の手引き
関連学会でのパブリックコメントに対する修正を可能な限り実施し、2020年7月に刊行した。
考察:
脊椎関節炎診療の手引き内容をより広く啓蒙・普及させ全国レベルでの診療水準向上が必要であると考えられた。
3)脊椎関節炎生物学的製剤使用ガイドラインの策定
1. PsA・ASに対するTNF阻害薬使用の手引き
2. PsA・ASに対するIL-17阻害薬使用の手引き
3. PsAに対するIL-23p40およびp19阻害薬の手引き
を日本リウマチ学会、日本脊椎関節炎学会と共同で策定した。
4)脊椎関節炎領域用語統一
865用語を検討対象にした。このうち確実と要検討となった25用語については和訳案並びにその定義について検討した。
考察:
関連学会と連携し脊椎関節炎領域用語統一や生物学的製剤使用ガイドラインを策定することは全国的治療水準の向上に大きく貢献するものと考えられる。
5)脊椎関節炎診療におけるQ&A集
AS友の会、乾癬患者の会、日本脊椎関節炎学会、Twitterなどを通じ患者さんより、質問を募集し編集委員が分担しanswerを作成した。
考察:
脊椎関節炎診療の手引きを補完する内容を意図して編集されており、啓蒙・普及活動に有用であると考えられる。
6)掌蹠膿疱症性骨関節炎
掌蹠膿疱症性骨関節炎の診断基準(案)、治療ガイドライン(案)を作成し、これらを反映した診療の手引き作成を行うことを決定した。
考察:
今後本邦における患者実態調査を進める環境が整ってきたと考えられた。
7)疾患レジストリ
難病プラットフォームを利用した疾患レジストリは令和3年1月より登録を開始した。
考察:
疾患レジストリは今後全国の専門医による登録が進めば本邦で特有の診断に有用なバイオマーカー確立につながると考えられる。
8)市民公開講座
2つの患者団体の協力を得て、令和2年9月19日に一般市民向け公開講座をweb開催した。
考察:
引き続き一般市民への疾患啓蒙活動を継続する予定である。
提供された臨床個人調査票は2015年20例、2016年1125例、2017年761例の合計1906例であった(重複分を除く)。男女比は2.4:1であった。男性では20代に発症のピークが認められた。HLA B-27陽性は男性で64.1%、女性では31.3%と女性で低い結果であった。末梢関節炎、付着部炎はいずれも女性に多く認められた。関節外症状は男女差は認められなかった。仙腸関節X線所見は男性で多く認められていた。仙腸関節・脊椎椎体のMRI所見は女性に多い傾向であった。治療に関して生物学的製剤は男女とも50%で施行され、その有効率は共に95%と非常に高い有効性を示した。
考察:
強直性脊椎関節炎臨床個人調査票解析結果より女性患者の特徴が明らかとなった。
2)脊椎関節炎診療の手引き
関連学会でのパブリックコメントに対する修正を可能な限り実施し、2020年7月に刊行した。
考察:
脊椎関節炎診療の手引き内容をより広く啓蒙・普及させ全国レベルでの診療水準向上が必要であると考えられた。
3)脊椎関節炎生物学的製剤使用ガイドラインの策定
1. PsA・ASに対するTNF阻害薬使用の手引き
2. PsA・ASに対するIL-17阻害薬使用の手引き
3. PsAに対するIL-23p40およびp19阻害薬の手引き
を日本リウマチ学会、日本脊椎関節炎学会と共同で策定した。
4)脊椎関節炎領域用語統一
865用語を検討対象にした。このうち確実と要検討となった25用語については和訳案並びにその定義について検討した。
考察:
関連学会と連携し脊椎関節炎領域用語統一や生物学的製剤使用ガイドラインを策定することは全国的治療水準の向上に大きく貢献するものと考えられる。
5)脊椎関節炎診療におけるQ&A集
AS友の会、乾癬患者の会、日本脊椎関節炎学会、Twitterなどを通じ患者さんより、質問を募集し編集委員が分担しanswerを作成した。
考察:
脊椎関節炎診療の手引きを補完する内容を意図して編集されており、啓蒙・普及活動に有用であると考えられる。
6)掌蹠膿疱症性骨関節炎
掌蹠膿疱症性骨関節炎の診断基準(案)、治療ガイドライン(案)を作成し、これらを反映した診療の手引き作成を行うことを決定した。
考察:
今後本邦における患者実態調査を進める環境が整ってきたと考えられた。
7)疾患レジストリ
難病プラットフォームを利用した疾患レジストリは令和3年1月より登録を開始した。
考察:
疾患レジストリは今後全国の専門医による登録が進めば本邦で特有の診断に有用なバイオマーカー確立につながると考えられる。
8)市民公開講座
2つの患者団体の協力を得て、令和2年9月19日に一般市民向け公開講座をweb開催した。
考察:
引き続き一般市民への疾患啓蒙活動を継続する予定である。
結論
指定難病である強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の本邦での実態が解明されてきた。今後も継続して本邦における脊椎関節炎の実態解明を行い、本邦の実情に即した治療指針の修正および研究成果を実臨床で診療を行う医療関係者に教育・啓蒙活動を行うことが重要あり、そのことが全国における脊椎関節炎診療水準の向上に有用であると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2021-07-01
更新日
-