早老症の医療水準やQOL向上を目指す集学的研究

文献情報

文献番号
202011008A
報告書区分
総括
研究課題名
早老症の医療水準やQOL向上を目指す集学的研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
横手 幸太郎(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 竹本 稔(国際医療福祉大学 医学部)
  • 中神 啓徳(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 健康発達医学)
  • 窪田 吉孝(千葉大学大学院医学研究院)
  • 小崎 里華(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部遺伝診療科)
  • 茂木 精一郎(群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学)
  • 谷口 俊文(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 井原 健二(国立大学法人大分大学医学部)
  • 金子 英雄(岐阜県総合医療センター 小児療育内科)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学 未来社会創造機構)
  • 谷口 晃(奈良県立医科大学 医学部)
  • 松尾 宗明(佐賀大学 医学部)
  • 忍足 俊幸(千葉大学大学院医学研究院眼科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
早老症は、全身に老化徴候が早発・進展する疾患の総称である。その代表例としてWerner症候群(以下WSと略)とHutchinson-Gilford Progeria症候群(以下HGPSと略)が知られる。WSは思春期以降に発症し、がんや動脈硬化のため40歳半ばで死亡する早老症であり、国内推定患者数は約2,000名、世界の報告の6割を日本人が占める。平成21~25年度の難治性疾患克服研究事業により25年ぶりの診断基準改訂と治療の標準化や世界初のWS診療ガイドラインが作成され、平成26年度の政策研究事業によりWS重症度分類が作成され、平成26年5月指定難病に指定された。さらに難治性疾患実用化研究として推進されている早老症レジストリー研究と連携し、平成29年度には診療ガイドライン、重症度分類を改訂した。一方、HGPSは1~2歳時に早老徴候が出現し、10歳代でほぼ全例が死亡する重篤な小児疾患である。平成25年度に施行した全国調査により、我が国で6名の患者が新規に同定され、平成29年度には世界初のHGPS診断基準が作成された。これらを真の患者予後改善につなげるためには、研究の継続と新たな発展が必要不可欠である。
本研究はエビデンスに基づく早老症の診断基準、重症度分類、診療ガイドラインの作成・改訂と普及を行い、早老症の医療水準とQOL向上を目的とする。
研究方法
本研究組織は、全国各地域の大学や国立研究センターに在籍する分担研究者と研究協力者によって構成される。これらのメンバーがWSとHGPSに加えて、その他の早老症(Rothmund-Thomson症候群(RTS)、Atypical WS(aWS)など)の症例集積を継続的に実施するとともに、主要なエビデンスを収集、相互に協調しつつ診断基準や診療ガイドラインの作成・改訂や重症度分類の作成、検証を行なう。また、臨床研究中核病院である千葉大学医学部附属病院の臨床試験部に設置された「早老症レジストリー」事務局において症例の登録とフォローアップを継続する。さらに本研究の成果(症例情報)をベースとして新規研究課題が採択された、AMED「再生医療実現拠点ネットワークプログラム(疾患特異的iPS細胞の利活用促進・難病研究加速プログラム)」(課題名:早老症疾患特異的iPS細胞を用いた老化促進メカニズムの解明を目指す研究(研究開発代表者))および「老化メカニズムの解明・制御プロジェクト/個体・臓器老化研究拠点」(課題名:早老症に立脚したヒト老化病態の解明とその制御への応用(研究開発分担者))の研究推進を支援する。併せてHGPSの患者・家族会設立とWSの同会活動支援を継続する。
結果と考察
WS研究:診療ガイドラインのアップデートを行うとともに、1.脂質異常症、脂肪肝 2.サルコペニア 3.糖尿病 4.骨粗鬆症 5.感染症 6.皮膚潰瘍 (皮膚科治療) 7.下肢潰瘍(形成外科治療)8.アキレス腱の石灰化の項目に関して英訳し論文報告を行った。加えて患者と家族にWSの病態、生活上の注意、様々な合併症の詳細と留意点を周知するため患者・家族用リーフレットの作成を行ない、WS遺伝子診断の保険適応化に向けた準備も開始した。
HGPS研究:HGPS患者家族と専門研究者・臨床医を結び付ける国際的NPO法人であるProgeria Research Foundation(PRF)が発行する患者向けハンドブック(The Progeria Handbook 2nd Edition)の日本語訳(プロジェリアハンドブック第2版)を作成し、PRFに提供しホームページに公開された。現在、誰でも自由にダウンロード可能な形で供与されている。またHGPSの診断に不可欠なLMNA遺伝子検査は公益財団法人かずさDNA研究所が受託し保険外検査としての運用が始まった。さらに日本語のホームページを作成し、HGPSに関する情報発信を開始した(分担研究 井原、松尾、小崎)。
その他の早老症:全国調査で明らかとなったRTS 11例を対象に2次調査が行われ、88%に多型皮膚萎縮症、眉毛睫毛の異常を認める一方、RecQL4遺伝子変異は29%のみで陽性など我が国のRTSの特徴が明らかとなった(分担研究 金子)。今後新たな診断基準作成に向けて準備を行った。
結論
早老症の総合的な診療ガイドライン作成の試みは国際的に見ても皆無である。欧米の診療拠点との連携もあり、国際共同研究へと発展させることができる。現在の早老症の実態を明らかにし、本研究を通じて診療の質を向上するものであり、厚生労働省の施策の一つである「難病対策」に貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-07-28

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202011008B
報告書区分
総合
研究課題名
早老症の医療水準やQOL向上を目指す集学的研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
横手 幸太郎(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 竹本 稔(国際医療福祉大学 医学部)
  • 中神 啓徳(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 健康発達医学)
  • 窪田 吉孝(千葉大学大学院医学研究院)
  • 小崎 里華(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部遺伝診療科)
  • 茂木 精一郎(群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学)
  • 谷口 俊文(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 井原 健二(国立大学法人大分大学医学部)
  • 金子 英雄(岐阜県総合医療センター 小児療育内科)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学 未来社会創造機構)
  • 谷口 晃(奈良県立医科大学 医学部)
  • 松尾 宗明(佐賀大学 医学部)
  • 忍足 俊幸(千葉大学大学院医学研究院眼科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
早老症は、全身に老化徴候が早発・進展する疾患の総称である。その代表例としてWerner症候群(以下WSと略)とHutchinson-Gilford Progeria症候群(以下HGPSと略)が知られる。WSは思春期以降に発症し、がんや動脈硬化のため40歳半ばで死亡する早老症であり、国内推定患者数は約2,000名、世界の報告の6割を日本人が占める。平成21~25年度の難治性疾患克服研究事業により25年ぶりの診断基準改訂と治療の標準化や世界初のWS診療ガイドラインが作成され、平成26年度の政策研究事業によりWS重症度分類が作成され、平成26年5月指定難病に指定された。さらに難治性疾患実用化研究として推進されている早老症レジストリー研究と連携し、平成29年度には診療ガイドライン、重症度分類を改訂した。一方、HGPSは1~2歳時に早老徴候が出現し、10歳代でほぼ全例が死亡する重篤な小児疾患である。平成25年度に施行した全国調査により、我が国で6名の患者が新規に同定され、平成29年度には世界初のHGPS診断基準が作成された。これらを真の患者予後改善につなげるためには、研究の継続と新たな発展が必要不可欠である。
本研究はエビデンスに基づく早老症の診断基準、重症度分類、診療ガイドラインの作成・改訂と普及を行い、早老症の医療水準とQOL向上を目的とする。
研究方法
本研究組織は、全国各地域の大学や国立研究センターに在籍する分担研究者と研究協力者によって構成される。これらのメンバーがWSとHGPSに加えて、その他の早老症(Rothmund-Thomson症候群(RTS)、Atypical WS(aWS)など)の症例集積を継続的に実施するとともに、主要なエビデンスを収集、相互に協調しつつ診断基準や診療ガイドラインの作成・改訂や重症度分類の作成、検証を行なう。また、臨床研究中核病院である千葉大学医学部附属病院の臨床試験部に設置された「早老症レジストリー」事務局において症例の登録とフォローアップを継続する。さらに本研究の成果(症例情報)をベースとして新規研究課題が採択された、AMED「再生医療実現拠点ネットワークプログラム(疾患特異的iPS細胞の利活用促進・難病研究加速プログラム)」(課題名:早老症疾患特異的iPS細胞を用いた老化促進メカニズムの解明を目指す研究(研究開発代表者))および「老化メカニズムの解明・制御プロジェクト/個体・臓器老化研究拠点」(課題名:早老症に立脚したヒト老化病態の解明とその制御への応用(研究開発分担者))の研究推進を支援する。併せてHGPSの患者・家族会設立とWSの同会活動支援を継続する。
結果と考察
WS研究:診療ガイドラインのアップデートを行うとともに、1.脂質異常症、脂肪肝 2.サルコペニア 3.糖尿病 4.骨粗鬆症 5.感染症 6.皮膚潰瘍 (皮膚科治療) 7.下肢潰瘍(形成外科治療)8.アキレス腱の石灰化の項目に関して英訳し論文報告を行った。加えて患者と家族にWSの病態、生活上の注意、様々な合併症の詳細と留意点を周知するため患者・家族用リーフレットの作成を行ない、WS遺伝子診断の保険適応化に向けた準備も開始した。
HGPS研究:HGPS患者家族と専門研究者・臨床医を結び付ける国際的NPO法人であるProgeria Research Foundation(PRF)が発行する患者向けハンドブック(The Progeria Handbook 2nd Edition)の日本語訳(プロジェリアハンドブック第2版)を作成し、PRFに提供しホームページに公開された。現在、誰でも自由にダウンロード可能な形で供与されている。またHGPSの診断に不可欠なLMNA遺伝子検査は公益財団法人かずさDNA研究所が受託し保険外検査としての運用が始まった。さらに日本語のホームページを作成し、HGPSに関する情報発信を開始した(分担研究 井原、松尾、小崎)。
その他の早老症:全国調査で明らかとなったRTS 11例を対象に2次調査が行われ、88%に多型皮膚萎縮症、眉毛睫毛の異常を認める一方、RecQL4遺伝子変異は29%のみで陽性など我が国のRTSの特徴が明らかとなった(分担研究 金子)。今後新たな診断基準作成に向けて準備を行った。
結論
早老症の総合的な診療ガイドライン作成の試みは国際的に見ても皆無である。欧米の診療拠点との連携もあり、国際共同研究へと発展させることができる。現在の早老症の実態を明らかにし、本研究を通じて診療の質を向上するものであり、厚生労働省の施策の一つである「難病対策」に貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202011008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HGPSの診断基準が作成され、今後の研究推進に有益である。WSは診療ガイドラインの改訂、英語版の作成を行い、Geriatr Gerontol Int誌に掲載された。今後海外での活躍も期待される。AMED難治性疾患実用化研究事業と連携して患者症例登録システムを構築し、症例登録が進行中でありWS患者の疾患プロファイル・自然歴情報の取得が期待できる。加えてRTSの全国調査が行われ、我が国における臨床的特徴が明らかとなった。今後、RTSの診断基準、診療ガイドライン作成が予定されている。
臨床的観点からの成果
国際的NPO法人Progeria Research Foundation(PRF)が発行する患者向けハンドブックの日本語訳(プロジェリアハンドブック第2版)を作成し、PRFホームページに公開された。現在、自由にダウンロード可能である。WSに関しても病態、生活上の注意、様々な合併症と留意点を周知するため患者・家族用リーフレットの作成がなされた。WS遺伝子診断の保険収載の申請を提出した。さらにHGPSとWSの両者を包含する「早老症レジストリー」の構築も進行中である。
ガイドライン等の開発
HGPSは今後、 Mindsガイドラインセンターの「診療ガイドラインの手引き」に基づくの診療ガイドライン作成を予定している。WSは2012年に「診断・診療ガイドライン」が作成され2020年に改訂され日本語、英語ともに発表された。今後、RTSに関しても「診断・診療ガイドライン」作成が予定されている。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
第63回日本老年医学会学術集会 6月11日Web配信
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
シンポジウム1件、雑誌・書籍掲載2件、ホームページ1件、ウェルナー症候群患者・家族の会支援1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ogata H, Akita S, Yokote K et al
Calcification in Werner syndrome associated with lymphatic vessels aging.
Aging (Albany NY) , 13 (24) , 25717-25728  (2021)
10.18632/aging.203789.

公開日・更新日

公開日
2021-07-14
更新日
2022-05-31

収支報告書

文献番号
202011008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,280,000円
(2)補助金確定額
7,121,000円
差引額 [(1)-(2)]
159,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,551,490円
人件費・謝金 471,944円
旅費 0円
その他 1,417,842円
間接経費 1,680,000円
合計 7,121,276円

備考

備考
自己資金276円

公開日・更新日

公開日
2022-01-21
更新日
-